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第2章

第116話 エンピアル己の死を悟る(エンピアル回)

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 エンピアル回

 複数の岩が落ちてくるのを見て、エンピアルは咄嗟に呪文を発動した。
 詠唱をせず、「ホール!」と呪文だけを唱えた為、細かい制御はできない。
 シャルルとアイリーンの足元に穴を開け、その土をアウィン、みっちゃん本体と岩の間に盛る形で出した。

 アイリーンとシャルルの悲鳴が聞こえたが、エンピアルは目の前に迫った岩を見て己の最後を悟った。

 これが走馬灯なのね?と思うが、レオンが己に優しく接し、皆に指示を出している場面がフラッシュバックしていた。

 もう一度あの方に触れたい!そう思うも、もう一度土魔法を放つ時間がない。
 無駄だと分かってはいるが手を顔の前にやり、せめて顔は綺麗なまま逝きたいとの女の性というか意地だ。

 しかし突然胸に何かが当たり、浮遊感があった。段々上昇しているのが分かる。

「そうなのね。私はあの岩に押しつぶされて男を知らぬまま逝ったのね。レオン様に抱かれたかった。こうやって天に登るのね・・・」

 胸が熱い。いや、暖かく違和感がある。おかしい。何かがおかしい。自分の胸元を見ると、そこには黒い毛が生えている人の頭ほどの何かがある。
 つい撫でる。すると胸にもごもごとした感触が伝わってきた。どうやら人の頭だ。
 すると胸の圧迫感が薄れ、その頭?が離れていくのが分かる。

「間に合ったな。怪我はないか?」

 レオン様だ!あれっ?私生きてる?死ななかったの?そうなのね、どうやらレオン様に抱き抱えられ、飛翔で難を逃れたのね。と思っていたらスーッと地面に降りたわ。
 残念。もう少しレオン様に私の胸を堪能して頂きたかったわ。でも、胸を頭でぐりぐりされて恥ずかしいわ。

「エンピアル、アイリーン達を助けてくれたのは有り難いが、君が死んだら意味が無いぞ!自分の命を最優先にするんだ。君が死んだら俺は悲しいぞ!」

「私・・・生きているのですね!人として救われ、今度は文字通り命を救われたのですわね。レオン様、2人を穴に放り込んでいます。咄嗟の事で無詠唱で無理に発動しましたから、勿論制御は出来なかったので、思ったよりも深い穴になったかもです。死にはしないと思いますが、足を挫くか骨折位はあるかもです」

「分かった。エンピアルは皆の援護を頼む。俺は上の奴らを倒す。その後穴に嵌っている者を救おう!」

 やっぱり凄い方だわ。
 またシュワッチ!と言ってから飛んで行ったわ。飛翔に必要な呪文かしら?勇ましいわ。素敵!

 取り敢えずアイリーン達を落とした穴の方に行き、援護しなきゃ。少しでもお役に立てる所を見てもらわなきゃよね!

 そうして腕を無駄に色っぽく振りながら、掘った穴のところに行く。あれ?馬車がない。馬は逃げていったのかしら?

 因みに走り方は奴隷商で女穂魅力を醸し出す為の走り方や歩き方を仕込まれており、簡単には本来の所作には戻れなかったりする。
 今は無意識にセクシーさを出しているのだ。

 賊が反対方向から来たわ。向こうはニーナさんが抑えているから、こちらの方をなんとかしなければならないのね。

 レオン様!エンピアルは皆を守ります!どうかご武運を!

 2人、いや3人ね。アウィンさんが1人に斬り掛かったわね。私も1人位は倒さないと。

「我が望みは、我と我の仲間を我等に仇なす悪しき者から護る事!森羅万象の奇跡をここに。アースショット」

 エンピアルの腕に魔法陣が発生し、腕の前に3個の土で出来た長さ10cmほどで、円錐形をした塊を生成すると、完成した途端に賊へと投げた。

 1つは躱されたが、1つは腹を突き破り背中を貫通した。即死ではないが、致命傷だ。
 不思議と人を殺す忌避感はなかった。魔物を殺す事はこの世界の者はなんとも思わないが、人は別だ。

 もう1人はみっちゃんの方に行ったけど、みっちゃんはスキルの確かテレポート?あれで賊の背後に回り、ナイフを投げて悶絶させているわね。
 スキルって凄いわね。

 落とした武器を拾ったけど、あっ!斬り掛かったわね!って剣の腹で頭を叩いて気絶させたのかしら?

 ニーナさんも護衛の者達と戻って来たわね。あちらも終わったのね。さて、アイリーンさんとシャルルさんを穴から出さないといけないわね!

 そうしていると、アイリーンさんとシャルルさん、レオン様以外が1箇所に集まったけど、急に意識が遠のく感じがして私は意識を手放したの。なぜ?
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