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第8話 脱獄
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健斗は森を抜け、ようやく人と出会えたと思い喜んだのも束の間、森を出タ途端に攻撃され、頭を打って気絶した。気が付けば鎖に繋がれており、空腹で力が尽きていた時に振り解こうと試みたものの解けず、今もなお鎖に繋がれたままだった。
一度試して無理だったため、再度振りほどこうとする発想がなく、どうしたものかと考え込んでいた。枷が手首に食い込み、冷たい鉄の錆びた感触が不快で痛みに苛立ちを覚えていた。
「あのユニムとかいう騎士は、俺に何をさせたいのかよく分からないな。何かがあり警戒しているところに俺が現れたのか? 確かにフル装備の兵士を率いていたし、彼らが警戒している何かと間違えられたのか? 色々考えるもそうとしか思えないよな」
独り言を発しており、もしも見ている者がいたら、こいつ大丈夫か?と思ったことだろう。
意識を取り戻した時は恐らく夜中。誰もおらず、このままだとやってもいないことを自白させられ、悪くすれば殺され兼ねない。ならばどうするか?逃げるか?でもどうやって?この忌々しい鎖なんて外れる訳・・・
健斗は腕を思いっきり引いた。
『あれ?あっさり壊れたぞ』
無理だと思いつつ力任せに鎖を引いたところ、手枷は取れなかったものの、枷と壁の間をつなぐ鎖が壁から引き抜け、金属が砕ける音が静寂を破った。
健斗は驚きと共に呟いた。さすがに何処かに見張りがいるだろうから、大声を上げれば見付かるかもだと警戒する。
先に右手の鎖が外れ、左腕を強く引くと、やはり壁から鎖を繋ぐアンカーの根元が抜けてきた。ジャラジャラと鎖の音がこだまするが、目覚めて無駄な足掻きをしているくらいにしか思われなかったらしく、誰かが様子を見に来る気配がない。
『後はラケットとボールがあればな?某アニメのように念じたら飛んできたりしたりな!?来い!』
健斗は自嘲気味に厨二病的な発言をし、ラケットとボールを思い浮かべて来いと念じた瞬間、ビューン!と凄い勢いでラケットが飛んできた。驚いた健斗はラケットに頬ずりし、小躍りしてガッツポーズをした。
冷静になると、健斗はラケットで檻を壊そうとしたが壊れそうにないので、ラケットを振りボールを打ち出すと、岩を砕く力を持つボールが地面をえぐり牢を難なく脱出する。
かなりの音がしたが、健斗は逃げることに決め、入口を目指した。
中扉的な格子があったが、ラケットを使って格子を吹き飛ばし、牢獄を壊しながら進む。
『なんだ。ここボロくなってたんだな。力任せにいけたのかよ!』
健斗は呟きながら先を進むと、扉が半ば壊れた状態で開いているところがあり、中を覗くと官吏などの詰め所と思われるところがあった。
一部の物が地面に散乱しているが、机の上には健斗の荷物が並べてあったので迷わず中に入る。落ちているのは、先程ラケットとボールが飛んでくる時に落ちたのだと思われた。
リュックに詰めて全て回収し、持ち出されていなくて良かったと胸をなでおろす。
そうしていると、音を聞きつけた兵士がやってきた。
『さすが音がしたわな』
健斗はいざというときまで兵士相手にボールを打つのを封印し、ラケットで戦うことに決めた。床を抉り、岩も砕く一撃は確実に命を奪うだろうから、あのユニムというやつは別にして、殺すほどの恨みはない。
しかし破壊不能なだけで、ただのラケットである。単に重さ相応の鈍器でしかなく、つまるところ棍棒の代わりにしかならない。数名の兵士が来たので相手をするしかなくなった。剣や槍をラケットで受け止めたり受け流すと、体勢を崩した兵士をラケットで殴って昏倒させた。
「うおっ!危ないじゃねぇか!それ刺さったら死ねるやろ!とりあえずお前は寝とけ!」
正面から相対していれば動きが見え、スローモーションのように感じられており、簡単に受け流してラケットで殴り倒していた。
「うぎゃー」とか「ぐえぇぇ」などと唸りながら戦線離脱する兵士たち。「貴様」とか「抵抗するな」「死にやがれ!」など、罵倒や降伏勧告を発するも、途中からは「ば、化け物!」と唸りながら逃げ出した。
床に昏倒したり、のたうつ兵士は骨折位はしたかもだが、死者はいない。ちゃらんとお金の落ちる音がしたので、「悪いな」と言いつつ、そいつが落とした財布などを拾うと健斗は懐にしまう。
あくまでも敵から金品を奪うだけなので、罪悪感はない。
逃げる兵士を追いつつ建物の外に出ると、黒い外套もあって夜陰に紛れて町の中を目立つことなく駆けて行った。
やがて袋小路に入ってしまい、目の前には高さが少なくとも3mほどあろうかという壁が立ち塞がっていた。追っ手が気になり、『どうすっかな?』と数秒ほど考えながら周りを見渡す。
すると、ちょうど建物の裏手に当たる壁に梯子が立て掛けてあった。その梯子を目の前の壁に立て掛けると、迷うことなく登っていった。壁の上に登りきると、次に梯子を引っ張り上げ、登った時と反対の外側、つまり町の外なる地面に梯子を降ろすと、梯子を下り始めた。
地面に降り立った健斗は、梯子を壁の中に放り投げた。そうすることにより、ここから外に出て逃げたと判り難くなるかも?と咄嗟に判断した。そうやって壁の外に出た健斗は、急いで町から離れるべく、足早に歩き始めたのだった。
一度試して無理だったため、再度振りほどこうとする発想がなく、どうしたものかと考え込んでいた。枷が手首に食い込み、冷たい鉄の錆びた感触が不快で痛みに苛立ちを覚えていた。
「あのユニムとかいう騎士は、俺に何をさせたいのかよく分からないな。何かがあり警戒しているところに俺が現れたのか? 確かにフル装備の兵士を率いていたし、彼らが警戒している何かと間違えられたのか? 色々考えるもそうとしか思えないよな」
独り言を発しており、もしも見ている者がいたら、こいつ大丈夫か?と思ったことだろう。
意識を取り戻した時は恐らく夜中。誰もおらず、このままだとやってもいないことを自白させられ、悪くすれば殺され兼ねない。ならばどうするか?逃げるか?でもどうやって?この忌々しい鎖なんて外れる訳・・・
健斗は腕を思いっきり引いた。
『あれ?あっさり壊れたぞ』
無理だと思いつつ力任せに鎖を引いたところ、手枷は取れなかったものの、枷と壁の間をつなぐ鎖が壁から引き抜け、金属が砕ける音が静寂を破った。
健斗は驚きと共に呟いた。さすがに何処かに見張りがいるだろうから、大声を上げれば見付かるかもだと警戒する。
先に右手の鎖が外れ、左腕を強く引くと、やはり壁から鎖を繋ぐアンカーの根元が抜けてきた。ジャラジャラと鎖の音がこだまするが、目覚めて無駄な足掻きをしているくらいにしか思われなかったらしく、誰かが様子を見に来る気配がない。
『後はラケットとボールがあればな?某アニメのように念じたら飛んできたりしたりな!?来い!』
健斗は自嘲気味に厨二病的な発言をし、ラケットとボールを思い浮かべて来いと念じた瞬間、ビューン!と凄い勢いでラケットが飛んできた。驚いた健斗はラケットに頬ずりし、小躍りしてガッツポーズをした。
冷静になると、健斗はラケットで檻を壊そうとしたが壊れそうにないので、ラケットを振りボールを打ち出すと、岩を砕く力を持つボールが地面をえぐり牢を難なく脱出する。
かなりの音がしたが、健斗は逃げることに決め、入口を目指した。
中扉的な格子があったが、ラケットを使って格子を吹き飛ばし、牢獄を壊しながら進む。
『なんだ。ここボロくなってたんだな。力任せにいけたのかよ!』
健斗は呟きながら先を進むと、扉が半ば壊れた状態で開いているところがあり、中を覗くと官吏などの詰め所と思われるところがあった。
一部の物が地面に散乱しているが、机の上には健斗の荷物が並べてあったので迷わず中に入る。落ちているのは、先程ラケットとボールが飛んでくる時に落ちたのだと思われた。
リュックに詰めて全て回収し、持ち出されていなくて良かったと胸をなでおろす。
そうしていると、音を聞きつけた兵士がやってきた。
『さすが音がしたわな』
健斗はいざというときまで兵士相手にボールを打つのを封印し、ラケットで戦うことに決めた。床を抉り、岩も砕く一撃は確実に命を奪うだろうから、あのユニムというやつは別にして、殺すほどの恨みはない。
しかし破壊不能なだけで、ただのラケットである。単に重さ相応の鈍器でしかなく、つまるところ棍棒の代わりにしかならない。数名の兵士が来たので相手をするしかなくなった。剣や槍をラケットで受け止めたり受け流すと、体勢を崩した兵士をラケットで殴って昏倒させた。
「うおっ!危ないじゃねぇか!それ刺さったら死ねるやろ!とりあえずお前は寝とけ!」
正面から相対していれば動きが見え、スローモーションのように感じられており、簡単に受け流してラケットで殴り倒していた。
「うぎゃー」とか「ぐえぇぇ」などと唸りながら戦線離脱する兵士たち。「貴様」とか「抵抗するな」「死にやがれ!」など、罵倒や降伏勧告を発するも、途中からは「ば、化け物!」と唸りながら逃げ出した。
床に昏倒したり、のたうつ兵士は骨折位はしたかもだが、死者はいない。ちゃらんとお金の落ちる音がしたので、「悪いな」と言いつつ、そいつが落とした財布などを拾うと健斗は懐にしまう。
あくまでも敵から金品を奪うだけなので、罪悪感はない。
逃げる兵士を追いつつ建物の外に出ると、黒い外套もあって夜陰に紛れて町の中を目立つことなく駆けて行った。
やがて袋小路に入ってしまい、目の前には高さが少なくとも3mほどあろうかという壁が立ち塞がっていた。追っ手が気になり、『どうすっかな?』と数秒ほど考えながら周りを見渡す。
すると、ちょうど建物の裏手に当たる壁に梯子が立て掛けてあった。その梯子を目の前の壁に立て掛けると、迷うことなく登っていった。壁の上に登りきると、次に梯子を引っ張り上げ、登った時と反対の外側、つまり町の外なる地面に梯子を降ろすと、梯子を下り始めた。
地面に降り立った健斗は、梯子を壁の中に放り投げた。そうすることにより、ここから外に出て逃げたと判り難くなるかも?と咄嗟に判断した。そうやって壁の外に出た健斗は、急いで町から離れるべく、足早に歩き始めたのだった。
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