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第1章 入学編

第13話 試験

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 彼女に続いてフォルクスとべソンも試験会場に案内されたが、少し待つように言われた。丁度授業が始まるような時間、つまり普通の者の活動時間に入ったようで、次から次へと受験申込み者が来ていたからだ。

 ある程度の人数が集まってから、数人で一緒に試験をするといわれた。そして7人集まった段階で試験をすると説明され、何やら杖を渡されていく。並んだ順番で試験を行う。

 杖に魔力を込め、魔力弾を放ちなさいと言われた。放てと念じれば飛び出すから、その時に的の中心をイメージするようにと説明を受る。

 最初はツンデレキャラの彼女で、模範で講師が放つ必要があるか?と聞かれ、不要と言い、他の者はよく見ておくように言われる。バレーボール位の大きさの魔力弾が放たれ的に当てたのだが、周りからどよめきが起こり、凄いといった感じの反応があった。

 続いてべソンだった。べソンはテニスボール大位の魔力弾を放ち、難なく的に当たり終わった。可もなく不可もなくといった感じだ。

 そしてフォルクスである。魔力弾を放出しようとした瞬間、試験管に肩を掴まれ止められた

「もう少し小さいのにしなさい。そうねぇ、最初の子と同じ位の強さに抑えて欲しいわ。さもないと壁が壊れてしまいますから。それにしても君は凄い魔力を持っているのね。貴方なら出来るわよね?」

 そんなふうに言われてしまった。ツンデレちゃんは自分を比較対象とされた為かきょとんとしていた。とりあえず分かりましたと返事をしておいた。

 彼女が大体どれ位の魔力を込めていたのかが何となく分かっていたので、フォルクスは彼女のより少し大きい程度にして発射した。概ね一回り大きいといった感じだが、更に大きなどよめきが起こった。

 その後の者に関してはべソンと同じか少し小さい大きさのを放っていたが、最後の一人はゴルフボール大のを出したが、的に当たる前に消えていった。

「一次試験はこれで終わります。最後の一人を除き2次試験に来るように。明日の朝開始ですから、遅れないように来なさい。」

 受付にて2次試験の案内文をわたされ、魔法学校を後にした。2人はこの後特に予定も無い為、街でも見るかとなったのだが、学校を後にした途端に先程絡んできた彼女が追ってきた。

「ちょっとあんた達待ちなさいよ」

 声を掛けられた2人が面倒臭そうに振り向くと、ずんずんずんずんとフォルクスの方に近付いて来て、体が当たりそうな所で止まった。背伸びをし、フォルクスに顔を突き出した。頭一つ分背が違うので、見上げる形になる。フォルクスの好みの顔の為、顔には出なかったが、ドキリとした。

「ちょっとあんた一体何者なのよ?これから少し私に付き合いなさいよ」

 フォルクスが嫌そうな顔をすると

「ちょっと何よ。折角あんた達のような唐変木を美少女の私が誘っているんだから付き合いなさいよ。それとも何?あんた達は急ぎの用事でもあるの?」

「そういう訳じゃないけど」

「そう。なら良いわね。ちょっと早いけどお昼にするわよ」

 フォルクスの手首を掴み、彼女は強引にズンズンと歩き出す。べソンは仕方がないなあというような素振りを見せ、後ろをついて行く。

 暫く進むと宿に近い所にある、飲食店が多く立ち並ぶエリアの一角に来ていた。彼女は迷う事なく少し小洒落たお店に入って行く。

 そのまま強引にテーブルに引っ張って行き、予約席にも関わらず当たり前のように二人の対面側の席に座ると、ガバッとメニューを開け、フォルクス達に突き出した

「その、これは?」

「見て分からないの?メニューよ。何か頼みなさいよ」

 そう言ってくるのでフォルクスもべソンも困っていた。フォルクスは辛うじて文字は読めるが、この文字は英語で言う所の筆記体に相当する書体で書かれていた。その為殆ど読めなかった。べソンに限って言えば、文字が全く読めない。

 中々頼もうとしないので彼女は痺れを切らし

「ちょっと何よ。さっきあんたをひっぱたいちゃったから、そのお詫びに奢ってあげるんだから何か頼みなさいよ」

 フォルクスが正直に言う

「そうか。気持ちは有り難いけど、実は俺達このメニューが読めないんだ」

 えっと驚いていたが、

「じゃあ私が適当に頼むけど、あんた達何か苦手なのとかあるの?」

「いや特にないな」

 べソンもないと言う。彼女はベルを鳴らし店員を呼び、飲み物と何かの料理を頼んでいた。注文が終わったのでフォルクスが切り出した

「そういえば自己紹介がまだだったね。俺はフォルクス。彼はべソンだ。えっと君の名前は教えて貰えるのかな?」

「私はシーラ・イストーンよ」

 フォルクスが首を傾けていたのではっとなり

「イストーン家のシーラよシーラと呼んでも良いわよ」

「分かったよシーラ。俺の事もフォルクスで、彼もべソンで良いよ」

「分かったわ。それともう少ししたら私の友達が来るから、食べるのはそれまで待って」

 2人は頷く。

「それよりもフォルクス、あんた一体何者なのよ?あの試験官はあんたが魔力弾を放つのを一度止めたでしょ?一体どういう事なの?」

「あーあれか。魔力弾が大き過ぎて壁が壊れるから止められたんだ」

「えっ?どういう事よ?」

「多分シーラが放った魔力弾の10倍位の魔力だった筈だよ」

「えっ!嘘!そんな有り得ない!」

「多分俺は普通の人よりも魔力が強いんだ」

「そ、そんな!私だって10年に一人の才能の持ち主だなんて言われてたのよ。あいつなんか100年よ。あんたそれより上だっていう事なのよ」

「才能はどうか分からないけど、魔力量はかなり多い筈だよ」

 あいつと言う言葉を聞き逃していたが、シーラが納得しない感じだったので

「じゃあちょっと魔力量を実感してみようか。じゃあシーラ、手を貸してごらん」

 何?と言いつつも手を差し出す。フォルクスはその可憐な手を握る。

「ちょっと、あんた何を勝手に私の手を握っているのよ!」

 抗議をするがフォルクスはお構いなしにシーラの手に少量の魔力を流す。彼女は一瞬ビクッとなり、それを確認したフォルクスが

「シーラの方からも俺の方に少しで良いから魔力を流してくれるかな?」

 そして魔力を流すと、フォルクスも一瞬ピクッと体が動いた。

「ふむふむ。もういいよ。ありがとう」

「ちょっとあんた何がわかったのよ?それに今の感覚は何よ?」

「うん。シーラの手が滑らかで心地良い手だという事が分かったかな!」

 シーラが右手を振りかざし、平手打ちをしようとし身構えたので

「ごめんごめん冗談だ、冗談だよ」

 フォルクスはシーラが平手打ちをしようとした為慌てたが、シーラはブンプンといったような表情で踏みとどまった。可愛いなとドキリとするのはご愛嬌。

「えーと、僕の魔力感じなかった?」

「感じたけど何なの?」

「シーラの魔力の絶対量を概ねだけと計ってみたんだ。多分シーラの魔力の6倍から7倍の量を俺は持ってる感じだよ。

「へー、あんた変わった事が出来るのね」

「何故かよく分からないけど、やり方が分かるんだ」

「まあいいわ。そういう事にしといてあげる。それよりあんた達、その格好は何よ?まるで野蛮なあの国の兵士じゃないの?」

「あーそうだよ。10日位前までその野蛮な所で兵役に就かされていて、兵士をやってたんだよ。これはその時の装備だ。もし試験で何か魔物を倒せとか、そういうのだった時の為に着慣れた鎧を着て来たんだ」

「あんた達何を言ってるの?まさかそんな事も知らずに試験を受けに来たの?魔物を倒すなんてないわよ」

「あーそうなんだ。ここから2日位行った町のギルドマスターから魔法学校の事を教えて貰って、申し込み期限が迫っているから慌てて来たんだ。だから情報収集が出来なかったんだ」

「10日位前まで兵士をやっていてその歳って事は、やっぱりあんた達脱走兵じゃないの?」

「いや違うんだ、それはさ・・・」

 そう言っている最中に、フォルクス達の後ろから声を掛ける者がいた。

「おおー!珍しいわね。シーラ、貴女が男連れだなんて」

「あらあらシーラちゃんが男の子と一緒にいるわ!ふふふ」

「ふふふじゃないわよ。ちょっとあんた達、遅いじゃないの。まったくもう」

 そうやってシーラの仲間が合流したのであった。
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