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第3章

第167話 ヅラ事件と斗枡が勘違い野郎だった件

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「とうっ!」

 僕は唸ると颯爽と2階席から飛び出した。
 つい手すりを乗り越えて飛び出したけど、あっ!と唸った。

 ここが2階だと言うのを忘れていたんだ。
 しかもバトルスーツは父さんにお願いし、メンテナンス中・・・

 因みに父さんは余程の事がない限りラビリンスには入らないと言っていた。なので、正式にあのバトルスーツは僕に譲られたんだ。

 いつもなら大した事のない高さからのジャンプだけど、生身だと違う。
 刑事物のドラマとかでよくあるガードレールを颯爽と飛び越え、犯人に肉薄する!そんな感じのイメージで格好を付けたつもりだったんだ。

 ドラマのイケメン俳優は格好良くキメ、犯人に飛び蹴りでも食らわす場面だけど僕は違う。

 真澄ちゃんと目が合う。
 キラキラとした目だ!無様な所を見せられないけど、流石に厳しいかな?

「おおおおお!」

 つい叫び、手は一瞬バンザイの感じでバタつく。

 何とか転がりながら、落下の力を体全体に逃しつつ立て直した後、素早くバク転へと体勢を移行させた。
 身体が宙返りを描きながら空中に舞い上がり、見事なバク宙を披露した。
 多分見事だよね?

 その流れの中で壇上へジャンプしており、着地の瞬間に備えつつバク宙の美しさを最大限に引き立てた・・・はず?だと思う。

 又もや校長が立っている演台の上にフィニッシュを決めてしまった。
 しまいました。

 その瞬間、割れんばかりの拍手と、すげーとか、アレがランク1の実力か!等と感嘆の声が聞こえてくる。

「コホン」

 校長がたまらず咳払いをする。

 僕ははっとなりその場からジャンプして降りたんだけど、なんと着地に失敗。

 壇上に立った時にある物が落ち、その上に立ったんだ。

 バナナの皮宜しく盛大に滑り、お尻をしこたま打ち付けた。

 そして僕が踏んだそれは、前方に飛んで行った。

 狙いすましたように最前列に座る真澄ちゃんの頭にふわりと乗ったんだ。
 ごめんよ!今度ラビリンスに一緒に入るから許してちょんまげ!
 ちょんまげの用に見えなくもないからツイ呟く。

 何もなかったかのように僕は演台の前に立つ。
 そして演説を始めたんだ。

「2年1組の浅沼斗升です。ラビリンス専攻科の皆さん、ラビリンスに入る前に1つ言っておきます。死ぬ覚悟を持って挑んで下さい。出来れば自宅の机に登録だけしたカードと共に遺書を残して下さい」

 どよめきが起こる。

「僕の父は怪我をしたカーヴァントをカードに戻し、そのカードを家に置いて行っていました。行方不明から10年以上経過し、救い出すまで生死が分かっていました。何が起こるか分からないのがラビリンスです。それと黒服さん達には逆らわないでください。美人のおねぇさん達ですが、高ランクの実力を持つ探索者でもあります。犯そうと襲い掛かったら食いちぎられるか首を折られて死にますから。後、たまに僕に腕試しで掛かってくる人がいますが、今のところ10人以上蹴散らしていますが勿論無敗です。見た目で人を判断しないようにして下さい」

 よし、これで取り敢えず面倒なイキった奴等から挑まれないだろう!

 僕は1度壇上から降り、真澄ちゃんの頭からブツを取り、校長の頭に載せてから礼をした。

 そして腕に装着したアイテムからワイヤーを発射すると、狙い通りに2階の手摺に巻き付いた。

 ウインチになっており、最大速度で巻き上げ、僕は再び宙を舞う。

 手摺に向かってまっしぐらだけど、今度は狙ってやったから慌てずに手摺に手を掛けると、ワイヤーを外しつつジャンプして自分の席に着いた!

「これで一連の在校生挨拶にはつつがなく終わったよ!ふう!」
 呟いたんだ。
 我ながら完璧だよね!未来のトラブルを防いだ自分を褒めてやりたい!湧き上がっている拍手喝采もそれを物語っているよね!

 ・
 ・
 ・

 斗枡は支離滅裂な事を話しているのだが、ラビリンスについて怖がらせたのと不良共の勘違いを防ぐ事がこれで完璧にできたろう!とほくそ笑んでいた・・・

 先程ヅラで滑ったのは校長が笑われて終わったが、つつがなく終わった訳では無い。
 校長はトマスが怖く何も言えなかっただけで、先程の挑発もイキったやつをやる気にさせただけと、万事うまく行ったと勘違いをしている斗枡だった。
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