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第1章(高校生入学編)

第73話 サイクロプスを籠絡す!

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「マッスル達も2人を追って!」

 愛莉は叫んだ。

 めぐみんと律子がパニックになり駆け出した後即時に2人のカーヴァントは追い掛け始めた。
 だが他の者達は唖然としてその様子を見ているだけだったが、いち早く我に帰ったのは愛莉だった。

 愛莉は筋肉達に追い掛けるように指示をすると、筋肉達もすぐに従う。

 愛莉は自分達のところにいる全てのカーヴァントを行かせてしまうと自分達の身を守る為の手駒がなくなってしまうからと、自分のカードとカーヴァントだけ手元に残している。
 全員が固まっていればセボスチャーンだけでも十分な戦力になるが、めぐみんと律子を追い掛けるのに自分のカーヴァントは1体も送らなかった。

 2人が走っていく時に2人のカーヴァントは即時に動き、黙って追い掛けていたが、その様子をゼッチィーニとモーモンが見ていた。

 だが、その行動に何かしらの意図があるのかと思い、見ているだけだった。

 まさかパニックで闇雲に走っていたのだとは思わず、戦闘を継続していった。

 徐々に徐々にではあるが、前線を押し戻していた。
 不思議な事に走る2人は器用にサイクロプスを避けていたが、それでも数が多いのでその足に当たってしまった。
 そこで ようやく我に帰ったのだが、おぞましい数のマンティスの幼体達ちから逃げたつもりが、もっと恐ろしいサイクロプスが目の前にいる。

  その数はざっと5体だ。
 固まり言葉すら出なかった。
 このままだと無抵抗にただただ狩られるだけだ。

 彼女達の最大戦力である詐欺師と旅人であるトラベラーのカーヴァントは、これは非常にまずいと判断するやいなや2人を抱きかかえその場から離脱を試みる。
 しかし後ろも側も囲まれてしまった。
 サイクロプスは何だこいつら?と言った感じでその細い両肩に掴み掛ろうとした。

「マッスルゥ!マッスルウ!」 

 そう聞こえたかと思うと、蹴りやパンチがサイクロプスへ炸裂し、そのサイクロプス達は吹き飛んで行く。

 そしてその吹き飛ばされたサイクロプスの方へと真っ先に動いたのは詐欺師だ。
 倒れて呻いているところに近付き、人間には理解できない言語ではあるが、言葉巧みにサイクロプス達を籠絡しに掛かった。

 トラベラーのジンエモンが2人を守り、マッスル達が周りのサイクロプス達を片付けていく。
 そして詐欺師はついに2体の傷ついたサイクロプスを籠絡する事に成功したようで、ジンエモンに2人を連れてくるように言った。

「ご主人様達。このサイクロプス達がご主人様達と契約しても良いと言っている。より強い存在との戦いを臨んでいる。指先を少し切り彼らの指に触ってもらえれば契約されると思う」

 半信半疑になりながらもナイフで指先を切り、サイクロプスが震えながら差し出した指に触れると、自分達のカーヴァントになった事が分かった。
 震えているのは怪我からだ。

 この詐欺師であるスグルは戦闘力こそそこそこだが、特に知能の低い魔物達相手には効果が高く、言葉巧みにこちら側に引き込み人間と契約させ、自分の主たる律子とその仲間のめぐみんのカーヴァントにした。
 敵を味方に変える!そういう会話能力があるのだ。
 それが舌先三寸だ。
 末恐ろしい力でもある。
 味方を裏切る事になっているとは思わず、それが当然の事と思わせる事ができるのだ。
 だからこの2体は喜々として降ったのだ。

 マッスル達にとってサイクロプスのような怪力で、その膂力によるゴリ押しで来るタイプは絶好の好敵手である。

 1対1であれば正直遅れを取る事はない。
 だが多くのサイクロプスを、少ない人数で相手にして無傷で倒しきれるかどうかは別問題である。

 自分達がやられる事はないはずなのだが、自分の主である人間達が無事でいられるかどうかは別問題だ。

 だから黙ってこの詐欺師の指示に従うし、その指示内容はこうだった。

  可能なら1体もしくは2体のサイクロプスを殺さずに痛めつけるだけにし、こちらに寄越して欲しい。
 そう言われたのだ。
 勿論最初の2体を見れば目的は分かる。
 言葉巧みに傷付いたサイクロプスを籠絡し、人間達に契約させる事だ。
 ある意味ヒーラーよりも恐ろしい力だ。

 敵を味方に引き込み、味方の戦力に変えてしまうのだ!

 そして3体目、4体目へと詐欺師のスグルの舌が襲い掛かり、絡め取って行くのだった。
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