上 下
146 / 173

第146話 王妃様?

しおりを挟む
 バン!城にある国王の執務室に似つかわしくない音がした。

 扉が開いたのだが、そこにはスカートをたくし上げ走ってくる王妃様の姿が会った。

 そして鏡を見ると半ば奪うように鏡を取ると顔を食い入るように見ていた。
 あの清楚でおしとやかそうな王妃が?と疑問に思うと、国王はやれやれといった顔をし、王妃様はあろうことかセルカッツの眼の前でキスをした。

 セルカッツはこれは見てはならないと背を向けたが、王妃がはっとなり取り繕おうと、追いかけてきた侍女に身なりを直してもらっており、侍女の1人は鏡を持ち王妃に向けている。

「素晴らしい・・・素晴らしいわ」

 ぶつぶつと聞こえる言葉はスルーする。

「セルカッツ殿、悪かったね。もう良いよ」

 王妃様の横に立つ国王の顔は晴れ晴れとしていた。

「無骨なデザインで申し訳けありません。屋敷に戻ったら姿見を送りましょう。いや、国王陛下、棺を積んで帰ってもらう事になりますが、王族や貴族向けの棺はありますか?」

 国王は?となるも、執事を呼んだ。

「・・・彼は私達の大事な客人だ。棺の調達を直ぐしてくれ」

「陛下は何故?と聞かれないのですか?」

「流石に私でもわかるよ。護衛に鏡を積み帰るよう、その入れ物だろう?それは分かるが何故棺のなのかい?」

「はい。長距離の輸送に耐える為です。頑丈な棺ならば歪む事もないですし、クッションをふんだんに入れれば、轍の衝撃にも耐えるでしょう。縁起が悪いかもですが、割れやすい鏡の輸送にはそれが一番かと」

「ああ。それだったら大丈夫だよ。てっきり死体を運ぶように擬装するのだと思ったよ」

「いや、それもなくはないですが」

「あるのだよ。棺を使わずに確実に運ぶ方法が」

「まさか?陛下はお持ちなので?」

「多分君も異空間収納のマジックアイテムを持っているだろう。しかし、それでは姿見は大き過ぎて入らない。違うかい?」

「ええ。今渡した鏡の大きさが限界でして。見ての通り私も持っていますし、アイリーンも持っていますが同じ制約があります」

「棺なら十分入るのだよ。我が王家の秘宝のマジックアイテムならばね。それを護衛隊長に託すから大丈夫だよ」

「言ってはなんですが、信用出来る方なのですか?そのマジックアイテムを持って他国に行き、売れば巨万の金を得て、女もよりどりみどりですよ。そんな誘惑に勝てるのですか?」

「大丈夫だよ。彼女はそんなんじゃない。あっ!出来れば、この大きさの鏡を渡してあげれば喜ぶだろう。何せ彼女の妹だからね。人質に取るわけじゃないが、夫と子供を捨ててそのような事をする者じゃないよ。セルカッツ殿が不安視するのならば、君のところにいる真言持ちの前で宣誓させるよ」

「いえ。そういうことなら不要です」

「よし、それより先程妻が失礼したね」

「いえ。慣れています。この世界にはこの品質の鏡がありませんでした。ですから女性のこういった反応はよく見ますから」

「セルカッツ様。先程はお恥ずかしい所をお見せしました」

「私は窓の外を見ていましたから、もし何かあったとしても私は気が付きませんでした。それより少しお付きの方に貸してあげると良いですよ」

「そうですわね。貴女達、セルカッツ様とお話をしている間、その鏡でご自分の姿を見て身なりを整えなさい!声を掛けるまで部屋の隅にて待機です」

 侍女達は口を押さえて涙しながら部屋の隅に下がり、順番に鏡を覗き込んでいた。

「セルカッツ殿、貴殿はあの新人武闘大会を制したそうだね。鏡の取引の話とは別に、この国に住まないかい?直ぐにとは言わないがね。ダイランド家は侯爵だったね。私もダイランド家に侯爵の爵位を授けたい。私の招請に応じてはくれまいか?」

「ありがたきと言葉。ミリアム様の事がありますから、早くても1年?先になりますが宜しいでしょうか?」

「そうだね。配慮感謝する」

「それと、1つ直ぐに移れない事があり、多分2年か3年必要ですが、魔王が討伐された後になります」

「魔王の討伐?」

「はい。父が魔王の呪いより陽の光を受けると死にます。しかし、特殊なギフト持ちのお陰で、今住んでいる屋敷の敷地内限定で呪の効果はありません」

「成る程。それは君の弟の仕業かい?それもあり国元で爵位を失うのだろう?」

「よくご存知で。魔王さえ討てば呪いもなくなりますし、既に倒す算段はしてあります」

「頼もしいね。私の右腕として君を迎え入れたいよ!」

 何故それ程国王に気に入られたか分からないセルカッツだが、その後執事達と帰国の打ち合わせをしていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

祈りの力でレベルカンストした件!〜無能判定されたアーチャーは無双する〜

KeyBow
ファンタジー
主人公は高校の3年生。深蛇 武瑠(ふかだ たける)。以降タケル 男子21人、女子19人の進学校ではない普通科。大半は短大か地方の私立大学に進む。部活はアーチェリー部でキャプテン。平凡などこにでもいて、十把一絡げにされるような外観的に目立たない存在。それでも部活ではキャプテンをしていて、この土日に開催された県総体では見事に個人優勝した。また、2年生の後輩の坂倉 悠里菜も優勝している。 タケルに彼女はいない。想い人はいるが、彼氏がいると思い、その想いを伝えられない。(兄とのショッピングで仲良くしているのを彼氏と勘違い) そんな中でも、変化があった。教育実習生の女性がスタイル抜群で美人。愛嬌も良く、男子が浮き足立つのとは裏腹に女子からの人気も高かった。タケルも歳上じゃなかったら恋をしたかもと思う。6限目が終わり、ホームルームが少しなが引いた。終わると担任のおっさん(40歳らしい)が顧問をしている部の生徒から質問を受け、教育実習生のミヤちゃん(竹下実弥子)は女子と雑談。タケルは荷物をまとめ、部活にと思っていた、後輩の二年生の坂倉 悠里菜(ゆっちゃん、リナ)が言伝で来た。担任が会議で遅れるからストレッチと走り込みをと言っていたと。この子はタケルに気があるが、タケルは気が付いていない。ゆっちゃんのクラスの担任がアーチェリー部の担任だ。ゆっちゃんと弓を持って(普段は学校においているが大会明けで家に持って帰っていた)。弓を背中に回して教室を出ようとしたら…扉がスライドしない。反対側は開いていたのでそっちに行くが見えない何かに阻まれて進めない。反発から尻餅をつく。ゆっちゃんは波紋のようなのが見え唖然とし、タケルの手を取る。その音からみっちゃんも扉を見て驚く。すると急に光に包まれ、気絶した。目を覚ますと多くの人がいる広間にいた。皆すぐに目覚めたが、丁度三人帰ったので40人がそこにいた。誰かが何だここと叫び、ゆっちゃんは震えながらタケルにしがみつく。王女と国王が出てきてありきたりな異世界召喚をしたむね話し出す。強大な魔物に立ち向かうべく勇者の(いせかいから40人しか呼べない)力をと。口々に避難が飛ぶが帰ることは出来ないと。能力測定をする。タケルは平凡な数値。もちろんチート級のもおり、一喜一憂。ゆっちゃんは弓の上級スキル持ちで、ステータスも上位。タケルは屑スキル持ちとされクラスのものからバカにされる。ウイッシュ!一日一回限定で運が良ければ願いを聞き入られる。意味不明だった。ステータス測定後、能力別に(伝えられず)面談をするからと扉の先に案内されたが、タケルが好きな女子(天川)シズクと他男子二人だけ別の扉を入ると、閉められ扉が消え失せた。四人がいないので担任が質問すると、能力が低いので召喚を取り消したと。しかし、帰る事が出来ないと言っただろ?となるが、ため息混じりに40人しか召喚出

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

モブ高校生と愉快なカード達〜主人公は無自覚脱モブ&チート持ちだった!カードから美少女を召喚します!強いカード程1癖2癖もあり一筋縄ではない〜

KeyBow
ファンタジー
 1999年世界各地に隕石が落ち、その数年後に隕石が落ちた場所がラビリンス(迷宮)となり魔物が町に湧き出した。  各国の軍隊、日本も自衛隊によりラビリンスより外に出た魔物を駆逐した。  ラビリンスの中で魔物を倒すと稀にその個体の姿が写ったカードが落ちた。  その後、そのカードに血を掛けるとその魔物が召喚され使役できる事が判明した。  彼らは通称カーヴァント。  カーヴァントを使役する者は探索者と呼ばれた。  カーヴァントには1から10までのランクがあり、1は最弱、6で強者、7や8は最大戦力で鬼神とも呼ばれる強さだ。  しかし9と10は報告された事がない伝説級だ。  また、カードのランクはそのカードにいるカーヴァントを召喚するのに必要なコストに比例する。  探索者は各自そのラビリンスが持っているカーヴァントの召喚コスト内分しか召喚出来ない。  つまり沢山のカーヴァントを召喚したくてもコスト制限があり、強力なカーヴァントはコストが高い為に少数精鋭となる。  数を選ぶか質を選ぶかになるのだ。  月日が流れ、最初にラビリンスに入った者達の子供達が高校生〜大学生に。  彼らは二世と呼ばれ、例外なく特別な力を持っていた。  そんな中、ラビリンスに入った自衛隊員の息子である斗枡も高校生になり探索者となる。  勿論二世だ。  斗枡が持っている最大の能力はカード合成。  それは例えばゴブリンを10体合成すると10体分の力になるもカードのランクとコストは共に変わらない。  彼はその程度の認識だった。  実際は合成結果は最大でランク10の強さになるのだ。  単純な話ではないが、経験を積むとそのカーヴァントはより強力になるが、特筆すべきは合成元の生き残るカーヴァントのコストがそのままになる事だ。  つまりランク1(コスト1)の最弱扱いにも関わらず、実は伝説級であるランク10の強力な実力を持つカーヴァントを作れるチートだった。  また、探索者ギルドよりアドバイザーとして姉のような女性があてがわれる。  斗枡は平凡な容姿の為に己をモブだと思うも、周りはそうは見ず、クラスの底辺だと思っていたらトップとして周りを巻き込む事になる?  女子が自然と彼の取り巻きに!  彼はモブとしてモブではない高校生として生活を始める所から物語はスタートする。

漆黒の私刑人〜S級パーティーを追放されたので今度は面倒事から逃げてのほほんとしたいのに・・・〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では15歳になった秋に何かしらのギフトを得る。  ギフトを2つ得たランスタッドは勇者パーティーに入るも7年経過したある日、嫉妬からパーティーを追放され、ショックから腐っていく。  ギフトを2つ持つ者は記録になかったが、期待外れとされた。  だが、皮肉にもそれにより第2のギフトが覚醒。それは超チートだった。    新たに修行で得た力がヤバかった。 その力を使い秘密の処刑人になり、悪を断罪していく。  また、追放されて腐っている時に知り合ったルーキーを新たな仲間とし、立ち直ろうと足掻く。そして新たな出会い?    悪い奴は情け容赦なくぶった斬る!  夜な夜な私刑を行う。表の顔はお人好しな中級〜上級冒険者!  ここにダークファンタジー開幕!

「おっさんはいらない」とパーティーを追放された魔導師は若返り、最強の大賢者となる~今更戻ってこいと言われてももう遅い~

平山和人
ファンタジー
かつては伝説の魔法使いと謳われたアークは中年となり、衰えた存在になった。 ある日、所属していたパーティーのリーダーから「老いさらばえたおっさんは必要ない」とパーティーを追い出される。 身も心も疲弊したアークは、辺境の地と拠点を移し、自給自足のスローライフを送っていた。 そんなある日、森の中で呪いをかけられた瀕死のフェニックスを発見し、これを助ける。 フェニックスはお礼に、アークを若返らせてくれるのだった。若返ったおかげで、全盛期以上の力を手に入れたアークは、史上最強の大賢者となる。 一方アークを追放したパーティーはアークを失ったことで、没落の道を辿ることになる。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

処理中です...