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第140話 使い魔の最後

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 最高司祭が放った白い光は魔王の使い魔を包んだ。
 その白い光は魔王の使い魔を焼き尽くして行く、不浄なものにとっては脅威の光だ。
 その反面、人にとっては心地よい慈悲に溢れた光だった。

 魔王の使い魔である淫魔は最高司祭の放った光に耐えられず、そのほのかに温かみを感じる聖なる光に悲鳴を上げた。
 そして数秒間断末魔の叫びを上げると、光により灰となった。

 ドナルドの体を乗っ取っていた魔王の使い魔が消え、体が元の状態に戻ると意識も戻った。

 ドナルドにとっては生々しくエロい夢を見ていたような感覚だった。
 その夢の中で自分は女性に甘い言葉をかけ、初な女性を食い物にしていた。
 言葉巧みに人気のない所に行ったり、その者の部屋に何もしないからと入り込み、純潔を奪い性技の虜にして蹂躙していた。

 淫魔にとって女性が悶え、性の虜になっているその陰鬱な悦びが何よりのごちそうだった。
 そうして4人の女を性的な支配下に置き、夜な夜なまぐわうおぞましい夢だ。

 そして急激にモヤが消え、ドナルドは目を覚ました。 
 彼は周りの状況に気が付き、自分の状態に驚いた。

「ここは・・・私は・・・何が・・・」

 ドナルドは混乱していた。


 お構いなしにセルカッツはドナルドに近付くとドナルドの顔を見、その目を見た。いや、覗き込んだ。

 ドナルドはセルカッツに恐怖した。 彼はセルカッツが自分を殺すのではないかと思った。 
 彼はセルカッツが自分に何をしたのか分からなかった。
 名前は知っている。
 夢の中で婚約者を救いに来たヒーローだ!
 僕もこんなふうに女性を愛せたらなと思ったほどだ。

「セルカッツ様、どうかお許しください。私は何も覚えていません。私は何も悪いことはしていません。私は何も知りません!どうか落ち着いてください」

 ドナルドはセルカッツに懇願した。
 何が起こったのかわからないが、自分が兵士に槍を向けられ、セルカッツが尋問しようとしているのだと悟ったが、本当に理由がわからない。

 セルカッツはドナルドに同情した。 セルカッツはドナルドが魔王の使い魔に憑依されていたことを理解している。いや、指摘したのはほかならぬ自分だ。

  ドナルドが魔王の使い魔に記憶を奪われていたことを察した。
 いや、半ば意識のない状態で、己の体が何をするにも干渉できず、鑑賞するしかなかった。

 もしドナルドが異世界人だったら、妙にリアルなアダルト動画を見ていたなぁと思っただろう。それにバーチャル技術は凄いな!と感嘆したはずだ。

「ドナルド、お前は魔王の使い魔に憑依されていたんだ。つまり、魔王の使い魔に操られていたんだ。お前は魔王の使い魔によって国王や私、ヤーマやアイリーンに危害を加えようとしたんだ。お前は魔王の使い魔によってこの国を滅ぼそうとしたのだ。だが、お前はそれを自覚していなかった。お前はそれを記憶していなかったのだ」

 セルカッツはドナルドに説明した。

 ドナルドはセルカッツの言葉に驚きも、彼は自分が魔王の使い魔に憑依されていたことを信じられなかった。
 しかし、彼は自分が魔王の使い魔によって悪事を働いていたことに恥じた。

「セルカッツ様、それは本当ですか?私は魔王の使い魔に操られていたと?」

 じわりじわりと兵士が距離を詰める。

 そんな中、一部の生徒が様子を見ており、その中の卒業生の1人が慌てて駆け寄り、ドナルドの前に立ち塞がった。

「後生です!ドナルド様を殺さないで!私にはこの方が必要です!」

 金髪の手入れされた髪と、襟元に見える徽章は、公爵家を示すものだった。
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