上 下
132 / 173

第132話 ドナルドとヤーマ

しおりを挟む
 前書失礼します。予約投稿失敗していました。その為本日2話に鳴ります。


 その後は大きな問題もなく、俺達は予定通りに王都に到着した。
 流石に王都だけあり、国境を超えた後通ったどの町よりも大きく、華やかで賑やかだった。 
 とりあえずヤーマが泊まっている宿に向かう。

 宿に着くと俺達は馬車から降りて、各部屋に別れ荷物の整理は後回しにし部屋へ運び入れるだけにした。

「さて、これからどうしましょうか?」

 リリアナさんが俺達に尋ねたが、彼女は俺達と一緒に魔法学校へ行くつもりだった。

「魔法学校へ行きましょうよ」

 アイリーンが明日卒業する予定なのもありメイヤが告げた。

「そうですね。魔法学校へ行こう」

 俺も言った。
 俺はハーニャ(アイリーン)と一緒に卒業式に出席するつもりだった。
 領主からの書状もあり、手続き的には問題ない。

「では、魔法学校へ行きましょう」

 リリアナさんが言って、馬車を進めようとしたが・・・その時、馬車の前に人影が現れた。

「お待ちください!」

 その者は声を上げて、手を振った。  人影は男性で、長い髪と無精髭を生やしていた。
 彼は俺達に向かって走ってきた。

「誰だ?何の用だ?」

 隊長の騎士が声を張り上げて、剣を構えた。 
 彼は馬車から飛び降りて、男性に向かって立ち塞がった。

「落ち着いてください!私は敵ではありません!私は味方です!」

 男性は手を上げて見せ、更に彼は剣を帯ていなかった。

「誰の味方だというのだ?」

「あなた達の味方ですよ。私は魔法学校の生徒です」

「魔法学校の生徒?」

 俺達は驚いて男性を見た。
 彼は本当に魔法学校の生徒なのだろうか?

「そうです。私はドナルドと言います。怪しい者ではありません」

 男性は笑顔み向け俺達に親しげに言った。

「ドナルド?」

 俺達は声を揃えて疑問形で名前を聞き返したが、俺達はドナルドという名前を聞いたことがなかったからだ。

「ええ、ドナルドです。誰も私の事を覚えていませんか?私は貴方達が来るのを待っていました。

 ドナルドはそう言って、首を傾げたが、俺達は不思議そうに彼を見るしかなかった。

「ごめんなさい、私には見覚えがありません」

 リリアナさんが謝った。
 彼女はドナルドに申し訳なさそうに言った。

「私も覚えていません」

 俺もドナルドに申し訳なさそうに言った。

「私も・・・」

 ハーニャ(アイリーン)も言おうとしたが、その前にドナルドが口を挟んだ。

「あなたは覚えているでしょう?ここではヤーマ様とお呼びした方がよろしいか?」

 ドナルドはハーニャ(アイリーン)を見つめた。
 彼はハーニャ(アイリーン)に深い感情を込めて言った。

「では・・・アイリーン様!」

 俺達は驚いて、ハーニャ(アイリーン)を見た。
 彼女の本名はアイリーンだ。

「あなたは誰?どうして私の名前を知っているの?」

 ハーニャ(アイリーン)は、ドナルドを睨んだ。彼女はドナルドに警戒心を抱いた。

 俺達はドナルドに疑いの目を向け、警戒度を高めた。
  彼は本当に魔法学校の生徒なのだろうか?彼は本当にアイリーン様かヤーマを知っているのだろうか?  彼は本当に俺達の味方なのだろうか?

「ドナルドさん、どうしてあなたはヤーマやアイリーン様の名前を知っているんですか?」

 俺はドナルドに尋ねた。

「それは・・・実は私はアイリーン様の護衛なのです」

 ドナルドは告げた。

「護衛?」

 俺達は驚いて、ハーニャを見た。  彼は本当に護衛だったのだろうか?

「ええ、護衛です。私はアイリーン様の父上、つまり国王陛下から頼まれて、彼女の代わりに魔法学校に通っているヤーマの護衛をしています。今は隠れ潜み助けに来る方をお待ちし、見極めていました」

 目が!?となっているリリアナが質問した。

「そうだったんですか?でも、どうしてそんなことをしたんですか?」

「それは・・・アイリーン様に危険が迫ってきているからです」

 ドナルドは経緯を説明した。
 彼は俺達に真剣に言った。

「アイリーン様は王族の血筋で、王都では有名な人物です。彼女は王族であることを隠して魔法学校に通っていましたが、それでも暗殺者や敵対者から狙われることがありました。彼女は自分の身を守るために、影武者を雇うことにしたのです。それにあの見た目ですから、バレていたでしょう」

「なるほど・・・それであなたが護衛になったのですね」

「はい。私はアイリーン様の分家筋の従兄妹に当たります。ヤーマは背格好が近いからと、騎士見習いの中から影武者に選ばれました。私はアイリーンの護衛として魔法学校に通っていました。ヤーマはアイリーン様の代わりに魔法学校に通っていました」  

「ドナルドさん。ヤーマさんは今近くにいるのですか?」

「はい」

「これを彼女に見せ、馬車に連れてきてください」

 俺はアイリーンの直筆の札を渡した。
 当たり障りのない文字が書かれている。

「筆跡から分かるでしょう?」

「分かりました。ではお待ち下さい」
  
 ドナルドが宿に入り、間もなくドナルドがハーニャの姿をした少女と現れた。
 俺、アイリーン、リリアナ、騎士隊長が乗っていたが窓越しでも間違いない。

「リリアナ様、姿を確認しました。間違いなく探していた人物です」

 俺は急ぎ馬車に乗せた。

 リリアナが即時に質問攻めにした。

「どうして2人は制服姿になったのですか?」

「それは・・・卒業式だからです」

 ドナルドは答えた。彼は俺達に申し訳なさそうに言った。

「卒業式だから?」

「はい。卒業式はアイリーン様が出席しなければならない大事な行事です。彼女はこれからアイリーン様の姿に変わります。魔道具で変えられます」

「魔道具で姿を変えることができる?」

「はい。姿を交換し、変身するのです。それにより姿や声や匂いを自在に変えることができます。背丈は無理ですが、彼女はアイリーン様の姿に変わって、再び学校に戻り卒業式に出席しなければなりません」

「でも、どうして卒業式に出るまで行方をくらませたのですか?」

「それは・・・アイリーン様の婚約者たるセルカッツさん達と合流するためです」

 ドナルドはそう言って、俺を見た。  彼は俺に優しく微笑んだ。

「セルカッツさんと合流するため?」

「はい。セルカッツさんはアイリーン様の婚約者ですよね?私はアイリーン様からセルカッツさんのことを聞いていました」

「リリアナ様、今まで黙っていて申し訳ありませんでした。いままで彼女の姿を見られないようにしていましたが、彼女が本物のアイリーンで、彼女はアイリーンの影武者のヤーマさんです」

「お初にお目にかかります。アイリーン様の影武者をしておりますヤーマと申します。貴方がセルカッツ様ですね?アイリーン様、お元気そうで何よりです」

「ヤーマ、今まで苦労を掛けました。しかし、それも今日で最後です。卒業式の後は指輪を外し、姿を変えて宿まで逃げなさい。ダイランド家に着いたらその後の事を考えましょう」

 そう言うと更にリリアナさんの混乱に拍車が掛かった・・・
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お助けキャラに転生したのに主人公に嫌われているのはなんで!?

菟圃(うさぎはたけ)
BL
事故で死んで気がつけば俺はよく遊んでいた18禁BLゲームのお助けキャラに転生していた! 主人公の幼馴染で主人公に必要なものがあればお助けアイテムをくれたり、テストの範囲を教えてくれたりする何でも屋みたいなお助けキャラだ。 お助けキャラだから最後までストーリーを楽しめると思っていたのに…。 優しい主人公が悪役みたいになっていたり!? なんでみんなストーリー通りに動いてくれないの!? 残酷な描写や、無理矢理の表現があります。 苦手な方はご注意ください。 偶に寝ぼけて2話同じ時間帯に投稿してる時があります。 その時は寝惚けてるんだと思って生暖かく見守ってください…

兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜

藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。 __婚約破棄、大歓迎だ。 そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った! 勝負は一瞬!王子は場外へ! シスコン兄と無自覚ブラコン妹。 そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。 周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!? 短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。

【完結】年下幼馴染くんを上司撃退の盾にしたら、偽装婚約の罠にハマりました

廻り
恋愛
 幼い頃に誘拐されたトラウマがあるリリアナ。  王宮事務官として就職するが、犯人に似ている上司に一目惚れされ、威圧的に独占されてしまう。  恐怖から逃れたいリリアナは、幼馴染を盾にし「恋人がいる」と上司の誘いを断る。 「リリちゃん。俺たち、いつから付き合っていたのかな?」  幼馴染を怒らせてしまったが、上司撃退は成功。  ほっとしたのも束の間、上司から二人の関係を問い詰められた挙句、求婚されてしまう。  幼馴染に相談したところ、彼と偽装婚約することになるが――

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした

miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。 婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。 (ゲーム通りになるとは限らないのかも) ・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。 周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。 馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。 冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。 強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!? ※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。

聖十字騎士学院の異端児〜学園でただ1人の男の俺は個性豊かな女子達に迫られながらも、世界最強の聖剣を駆使して成り上がる〜

R666
ファンタジー
日本で平凡な高校生活を送っていた一人の少年は駅のホームでいつも通りに電車を待っていると、突如として背中を何者かに突き飛ばされ線路上に放り出されてしまい、迫り来ていた電車に轢かれて呆気なく死んでしまう。 しかし彼の人生はそこで終わることなく次に目を覚ますと、そこは聖剣と呼ばれる女性にしか扱えない武器と魔法が存在する異世界であった。 そこで主人公の【ハヤト・Ⅵ・オウエンズ】は男性でありながら何故か聖剣を引き抜く事が出来ると、有無を言わさずに姉の【サクヤ・M・オウエンズ】から聖十字騎士学院という聖剣の扱い方を学ぶ場所へと入学を言い渡される。 ――そしてハヤトは女性しかいない学院で個性豊かな女子達と多忙な毎日を送り、そこで聖剣を駆使して女尊男卑の世界で成り上がることを決める――

婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた

cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。 お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。 婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。 過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。 ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。 婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。 明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。 「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。 そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。 茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。 幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。 「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?! ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

婚約破棄の場に相手がいなかった件について

三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵令息であるアダルベルトは、とある夜会で婚約者の伯爵令嬢クラウディアとの婚約破棄を宣言する。しかし、その夜会にクラウディアの姿はなかった。 断罪イベントの夜会に婚約者を迎えに来ないというパターンがあるので、では行かなければいいと思って書いたら、人徳あふれるヒロイン(不在)が誕生しました。 カクヨムにも公開しています。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

処理中です...