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第130話 ドラゴン戦

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 俺達はドラゴンと戦う事になってしまったが、どう考えてもおかしい。
 そもそもラージリオンオンラインではこの国でドラゴンは出ない。
 それに大陸に現れるのはもっと先の事だった。
 しかし、眼の前にいる・・・
 俺は剣で斬りつけようとしたが、ドラゴンの鱗は硬くて傷つけられなかった。まるで鋼を叩いているかのように、金属と金属が当たるガキーンという音と手に痺れが残った。
 ハーニャは弓で矢を放ったが、ドラゴンは翼で風を起こして矢を跳ね返し、ネイリスはナイフで刺そうとするも、ドラゴンの爪で振り払われた。  

 メイヤは槍で突き刺そうとしたが、ドラゴンが牙で噛みつこうとしたので断念し、タニスは魔法攻撃を試みるがドラゴンは口から火を吐いて魔法を消し飛ばした。 
 ヨルミクルは刀で斬り裂こうとしたが、ドラゴンが振った尾を避けられず弾き飛ばされ、イザベルは盾で防御しようとしたがドラゴンに踏みつけられた・・・

 俺達はドラゴンに一方的に痛めつけ られ、俺達の攻撃は殆ど効かないので焦る。 

「くそっ!この魔物に勝てる気がしない!」

「どうしよう!?逃げるしかないの!?」

「でも、馬車や荷物や馬を置いて逃げるわけにもいかない!」

 俺達は困惑した。
 しかし・・・その時、タニスが声を上げた。

「待って!このドラゴン・・・多分本物じゃないわ!」

「えっ!?どういうこと!?」

「見て!このドラゴンの目・・・光ってないわ!」

 俺達はタニスの言う通りにドラゴンの目を見た。 
 確かに、ドラゴンの目は赤くて大きいが、生命の光がなかった。 
 ドラゴンの目はただの玉のようだった。

「それに、このドラゴンの動き・・・不自然よ!ゴーレム?」

「確かに、このドラゴンは同じ動きを繰り返してるわ!」

 俺達はドラゴンの動きを見たが、
 確かにタニスの言う通りドラゴンは咆哮したり、火を吐いたり、尾を振ったりするが、それらは決まったパターンで行われていた。
 ドラゴンは自分の意思で動いているようには見えなかった。
 決まったパターンでも初見殺しとしては十分だ。、

「これは・・・やはりゴーレムにホログラムを掛けただけのモノよ!」

 タニスが叫んだ。
 彼女は男装の似合う麗人でそうは見えないが魔法の専門家だ。

「ホログラム?」

「そうよ!これは魔法で作られた虚像よ。本物のドラゴンではないわ」

「そうなのか?じゃあ、攻撃しても無駄なの?」

「そうよ。多分アイアンゴーレムにホログラムでドラゴンに見せているから、ミスリルかオリハルコンでもなければ武器での攻撃は受け付けないわ。緩慢な動きだからまともに攻撃もしない。ただ見せかけだ」

「じゃあ、どうすればいい?ヨルミクルは吹き飛ばされたぞ?」

「このゴーレムにホログラムを掛けている魔法装置か術者を探して倒すか破壊すればいいわ。実際に当たった攻撃は術者からのものだと思うわ。それがどこにあるかは分からないけれども・・・」

 タニスはそう言って、周囲を探し始め、俺達もタニスに続き周囲を探した。

 しかし・・・その時、森から声がした。

「ふふふ・・・やっと気づいたか?」

 声は男性のものだった。 
 声は嘲笑と威嚇や脅迫が混じった感じだった。

「誰だ!?出て来い!」

 騎士隊長が声を張り上げた。 
 彼は剣を構えて森に向かって叫んだ。

「私があなた達に名乗る必要はない。私はただあなた達を試したかっただけだ」

 男?は笑った。
 笑い声は不気味であり、冷酷で残忍だった。

「試した?何を言ってるんだ!?」

「私はあなた達がどれほど強いか知りたかっただけだ。私はあなた達に興味があったんだよ。特にあなた達の中にいるある人物にね」

 声は言って、俺達を指さした。
 俺達は声の方を見たが、姿は見えなかった。

「誰だ!?誰に興味があるんだ!?」

「それは言えないな。まだ早すぎる。でも、そのうち分かるよ。その時が来るまで待っているがよい。私と君達はまた会うと思う。その時まで精々頑張って強くなるのだな。そろそろ時間だ。中々楽しませてもらったよ!」

 声は消えた。  
 ドラゴンのホログラムも消え、そこには動かなくなったアイアンゴーレムがいた。

「ちくしょう!逃げやがった!」

 騎士隊長が怒鳴った。
 彼は剣を振り回して森に向かって叫んだ。

「リリアナ様!大丈夫です?」

 吹き飛ばされたヨルミクルとぶつかり、蹲っているリリアナに俺は声を掛けた。
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