上 下
80 / 173

第80話 領主の奥方達

しおりを挟む
 領主の屋敷は本来城がある所に建っていた。
 元々主要街道から少し離れていて、戦争が起こってもわざわざ占領しに来るほどの戦略上重要な要衝ではなく、周辺の魔物が少々厄介な土地だ。

 主要産業は観光だ。
 闘技場はこの大陸でもいくつが有り、各種の戦いが開催されているも、最高格式の大会はこの町で行われる。
 闘技場に訪れる人を相手にする商売で発展してきた。

 なので城の必要性がなく、屋敷だ。
 屋敷に着くと、そのまま応接に案内される。

 領主と奥様は着替えに行き、俺達は応接にて待つ。
 直ぐに着替えると言われたが、俺やメイヤは良い。
 だが、ウルナさんは可哀想な位オロオロしていた。

 貴族の、ましてや領主の屋敷になんて、本来無縁のはずだ。

 メイドに案内され、座る場所も指示された。
 というのも、上座と下座のない変わったレイアウトだ。

 5つの1人掛けのソファーが長ソファーのように並べられ、それが対面する形で間にローテーブルがある。
 また、横もソファーが2つ並べられている。

 それとは別に普通の応接セットも在るようだ。
 つまり、領主は何人か同席させるようだ。
 ウルナさんが右、左にメイヤが座る。
 ウルナさんが狼狽えているので、手を握って落ち着かせる。
 ウルナさんは真っ赤だ。
 可愛いなと思うも、もう肌をかさねたのに不思議だなあと思う。

 10分程で領主が現れ、立ち上がろうとするも静止された。

 後ろに先程の奥様とは別の女性も連れてきており、先程の女性が第3夫人、新たに連れてきたのが第1夫人と第2夫人だった。

 領主様に贈り物があるが、先のと同じだと伝えてある。
 屋敷で受け取るとなり、この2人に直接渡す事になった。
 領主の両脇にいるので、ウルナさんとメイヤが奥様方に渡した。

「こちらをお収め下さい。閣下より直接お渡しするようにとの事でしたので」

 訝しげにしていた。

「2人共開けてみなさい。気にいるはずだ」

 包みを無造作に開けるが、そこは貴族の夫人、上品な所作だ。
 30代前半と20代後半だ。

 そして絶句した。
 鏡を手に取り己の顔をまじまじと見ていた。

「こ、これは・・・す、素晴らしいですわ!宜しいの?」

 興奮しているのが分かる。
 この世界の鏡は金属の塊を研磨してできた物で、少し歪で色も変だった。
 それでも高貴な女性は美を求め、日に何度も顔を見る。
 元々の形容は変わらないが、化粧で別人にまで化ける。
 化粧はメイドがするが、お任せではない。

 細かく注文を付け、注文通りの見た目かどうか、化粧がくずれていないか等を見る。
 ひと目でこの鏡の品質が分かったようで、目を輝かせていた。

「この鏡はどうだ?お前達はどう思う?」

「はい。素晴らしいとしか言えません。これはどのようにして入手されたのですか?もっと大きいのはないのでしょうか?」

「はい。こちらにいるウルナが率いるチームが製造をしております。まだ試作の段階で、これから販売を予定しており、閣下のお力添えを頂きたくお願いに上がりました。試作の段階ではありますが、これくらいのもあります」

 30Cm四方の大きさを示すと、第1夫人は物欲しげに夫である領主を見た。

「これは革命です。この鏡を手に入れる為に死人がでる程ですわ!貴方、是非後ろ楯になり、販売する事をおすすめします!」

 他の夫人も同意し頷く。

「さて、セルカッツ君、鏡の販売について話をしようか。お前達は下がっても良いぞ」 

「セルカッツ様、この2人は奥様ですか?」

「色々ありまして、何れ妻にと思っております。これも閣下に相談しないとですが、彼女は父より送られた奴隷でして、先ずは奴隷から解放したいのです。ちゃんと奴隷から解放してからの話です」

「あなた、私達はこの子達とお茶をしようと思いますが構わないかしら?」

 領主は俺の方を見る。

「奥様、それではこの2人がご伴相させていただきます。ただ、こちらのウルナは完全に平民でして、無作法や無知な所があるかと思いますが、何卒ご容赦を。ただ、こちらのメイヤはメイドをしておりますから大丈夫だとは思いますが」

「ふふふ。構いませんわ。初で可愛らしいでは有りませんか。気に入りましたわ。では2人共、男達の話は逃げるのが吉でしてよ」

 そうして俺は領主と話を始めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

祈りの力でレベルカンストした件!〜無能判定されたアーチャーは無双する〜

KeyBow
ファンタジー
主人公は高校の3年生。深蛇 武瑠(ふかだ たける)。以降タケル 男子21人、女子19人の進学校ではない普通科。大半は短大か地方の私立大学に進む。部活はアーチェリー部でキャプテン。平凡などこにでもいて、十把一絡げにされるような外観的に目立たない存在。それでも部活ではキャプテンをしていて、この土日に開催された県総体では見事に個人優勝した。また、2年生の後輩の坂倉 悠里菜も優勝している。 タケルに彼女はいない。想い人はいるが、彼氏がいると思い、その想いを伝えられない。(兄とのショッピングで仲良くしているのを彼氏と勘違い) そんな中でも、変化があった。教育実習生の女性がスタイル抜群で美人。愛嬌も良く、男子が浮き足立つのとは裏腹に女子からの人気も高かった。タケルも歳上じゃなかったら恋をしたかもと思う。6限目が終わり、ホームルームが少しなが引いた。終わると担任のおっさん(40歳らしい)が顧問をしている部の生徒から質問を受け、教育実習生のミヤちゃん(竹下実弥子)は女子と雑談。タケルは荷物をまとめ、部活にと思っていた、後輩の二年生の坂倉 悠里菜(ゆっちゃん、リナ)が言伝で来た。担任が会議で遅れるからストレッチと走り込みをと言っていたと。この子はタケルに気があるが、タケルは気が付いていない。ゆっちゃんのクラスの担任がアーチェリー部の担任だ。ゆっちゃんと弓を持って(普段は学校においているが大会明けで家に持って帰っていた)。弓を背中に回して教室を出ようとしたら…扉がスライドしない。反対側は開いていたのでそっちに行くが見えない何かに阻まれて進めない。反発から尻餅をつく。ゆっちゃんは波紋のようなのが見え唖然とし、タケルの手を取る。その音からみっちゃんも扉を見て驚く。すると急に光に包まれ、気絶した。目を覚ますと多くの人がいる広間にいた。皆すぐに目覚めたが、丁度三人帰ったので40人がそこにいた。誰かが何だここと叫び、ゆっちゃんは震えながらタケルにしがみつく。王女と国王が出てきてありきたりな異世界召喚をしたむね話し出す。強大な魔物に立ち向かうべく勇者の(いせかいから40人しか呼べない)力をと。口々に避難が飛ぶが帰ることは出来ないと。能力測定をする。タケルは平凡な数値。もちろんチート級のもおり、一喜一憂。ゆっちゃんは弓の上級スキル持ちで、ステータスも上位。タケルは屑スキル持ちとされクラスのものからバカにされる。ウイッシュ!一日一回限定で運が良ければ願いを聞き入られる。意味不明だった。ステータス測定後、能力別に(伝えられず)面談をするからと扉の先に案内されたが、タケルが好きな女子(天川)シズクと他男子二人だけ別の扉を入ると、閉められ扉が消え失せた。四人がいないので担任が質問すると、能力が低いので召喚を取り消したと。しかし、帰る事が出来ないと言っただろ?となるが、ため息混じりに40人しか召喚出

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

漆黒の私刑人〜S級パーティーを追放されたので今度は面倒事から逃げてのほほんとしたいのに・・・〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では15歳になった秋に何かしらのギフトを得る。  ギフトを2つ得たランスタッドは勇者パーティーに入るも7年経過したある日、嫉妬からパーティーを追放され、ショックから腐っていく。  ギフトを2つ持つ者は記録になかったが、期待外れとされた。  だが、皮肉にもそれにより第2のギフトが覚醒。それは超チートだった。    新たに修行で得た力がヤバかった。 その力を使い秘密の処刑人になり、悪を断罪していく。  また、追放されて腐っている時に知り合ったルーキーを新たな仲間とし、立ち直ろうと足掻く。そして新たな出会い?    悪い奴は情け容赦なくぶった斬る!  夜な夜な私刑を行う。表の顔はお人好しな中級〜上級冒険者!  ここにダークファンタジー開幕!

モブ高校生と愉快なカード達〜主人公は無自覚脱モブ&チート持ちだった!カードから美少女を召喚します!強いカード程1癖2癖もあり一筋縄ではない〜

KeyBow
ファンタジー
 1999年世界各地に隕石が落ち、その数年後に隕石が落ちた場所がラビリンス(迷宮)となり魔物が町に湧き出した。  各国の軍隊、日本も自衛隊によりラビリンスより外に出た魔物を駆逐した。  ラビリンスの中で魔物を倒すと稀にその個体の姿が写ったカードが落ちた。  その後、そのカードに血を掛けるとその魔物が召喚され使役できる事が判明した。  彼らは通称カーヴァント。  カーヴァントを使役する者は探索者と呼ばれた。  カーヴァントには1から10までのランクがあり、1は最弱、6で強者、7や8は最大戦力で鬼神とも呼ばれる強さだ。  しかし9と10は報告された事がない伝説級だ。  また、カードのランクはそのカードにいるカーヴァントを召喚するのに必要なコストに比例する。  探索者は各自そのラビリンスが持っているカーヴァントの召喚コスト内分しか召喚出来ない。  つまり沢山のカーヴァントを召喚したくてもコスト制限があり、強力なカーヴァントはコストが高い為に少数精鋭となる。  数を選ぶか質を選ぶかになるのだ。  月日が流れ、最初にラビリンスに入った者達の子供達が高校生〜大学生に。  彼らは二世と呼ばれ、例外なく特別な力を持っていた。  そんな中、ラビリンスに入った自衛隊員の息子である斗枡も高校生になり探索者となる。  勿論二世だ。  斗枡が持っている最大の能力はカード合成。  それは例えばゴブリンを10体合成すると10体分の力になるもカードのランクとコストは共に変わらない。  彼はその程度の認識だった。  実際は合成結果は最大でランク10の強さになるのだ。  単純な話ではないが、経験を積むとそのカーヴァントはより強力になるが、特筆すべきは合成元の生き残るカーヴァントのコストがそのままになる事だ。  つまりランク1(コスト1)の最弱扱いにも関わらず、実は伝説級であるランク10の強力な実力を持つカーヴァントを作れるチートだった。  また、探索者ギルドよりアドバイザーとして姉のような女性があてがわれる。  斗枡は平凡な容姿の為に己をモブだと思うも、周りはそうは見ず、クラスの底辺だと思っていたらトップとして周りを巻き込む事になる?  女子が自然と彼の取り巻きに!  彼はモブとしてモブではない高校生として生活を始める所から物語はスタートする。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

処理中です...