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第2章

第116話 偵察とテンプレ

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 今は国境の通過待ちで、商人用の通行手形や荷物を検査され、問題なしとして通され、無事に帝国に入国を果たした。

 カモフラージュとして、本物の取引用の商品を積んでいる。ただ、商品の知識や販売に関して、残念ながらトニーはその知識や経験を有していない。そこで御者としてこの商品を取り扱っている商会の職員に、同行をお願いしている。

 荷降ろし等も御者が手伝うのは不思議ではないので、手配していたのだ。

 国境から帝都までは馬車で6~8日は掛かる。同行している商会の者は何度も帝国へ行き来しており、帝都も何度か訪れているとの事だ。

 トニーは帝都方面を時折見つめていた。

 そんな中、休憩時に遠くを見つめているのトニーを見掛けたアイハが声を掛けた。

「トニー、このところ何処かを見ているけど、どうかしたのですか?」

「うん。気になるんだ。上手く説明ができないのだけれども、何かの存在を感じ取れるんだ。それよりも、アイハは前世の事って何か思い出したか?」

「さっぱりよ。ジュータスクさんは誰が誰だったかを含め、殆ど話してくれないわ。ただ、前世では皆前世の貴方を愛していたと言うだけね。それと、私達の性格は前世と殆ど同じというのよね。多少は育った環境から違うらしいけど、歴史書には前回の勇者一行について、ジョブについては多少の事が書かれているけど、性格は無いの。ジュータスクは必要が有れば想い出すというの。ジュータスクのみ思い出したのよね」

「スラナシスカも語ってくれないよね。それとなく聞いたけど、前世の俺の担当だったのにも関わらず、ジュータスクについて全く分からなかった事がショックのようだね」

「よく話してくれたわね」

「その、パスが繋がった日にうなされていて口走っていたんだ」

「パスが繋がった日って・・・いやーん」

 真っ赤になったアイハが可愛かった。ハーインは相変わらずだなとトニーは呟いた。

 ?ハーインって何だ?アイハのセカンドネームかな?

 道中20匹位の魔物の群れと遭遇したのみで特に事件もなく、国境を超えてから7日で帝都に到着した。

 結局、トニーは誰にもハーインという名前について聞かず、誰一人として前世の事を思い出せなかった。

 帝都に着いたのは夕方だった為、その日は宿に向かった。

 宿に入り、この日の夜は城の近くまで偵察をする事にした。トニーとレイラが黒い服に着替え、夜陰を進んでいた。キャサリンは宿に残して、皆を守る事をお願いした。アイハは不向きだからレイラとトニーの2人で偵察をしていた。道中見回りの兵士に誰何されたが、気配を消す闇魔法用いて躱していた。

 トニーは城の近くで唸っていた。何かがいると。

 途中隠し通路を発見したので、この日の偵察を打ち切り、宿に戻り始めた。

 町の中を歩いていると何故かトニーはレイラと逸れた。
 あれっ!?っと思っていると、女性の悲鳴混じりの声が聞こえてきた。

「お、お止めください!私には将来を誓った恋人が・・・」

「何を言うか!私と一夜を共にし、妾になれば何不自由しない生活が待っているのだぞ!」

「ご堪忍を!」

「ぐひひひ!我慢ならぬ!儂に抱かれる事を・・・」

 裏路地で、若い女性が身なりの良いおっさんに絡まれていた。いや、無理矢理関係を迫られていた。

 トニーはテンプレか・・・やれやれと思いつつ、助ける事にした。本当は目立ちたくは無いのだが、手籠にされる女性を見捨てる事が出来なかった。

 屋根伝いに走り、女性を背にする形で、その男の前に立ち塞がった。そしてコンバットナイフをその男の前に突き付けた。

「何をやっている。このまま去れば見逃してやるが、この女性に乱暴する気なら殺す!」

 その男はトニーの身のこなしと、殺気から殺される!と思い、ヒィーと情けない悲鳴を上げ、逃げていった。

「君、大丈夫かい?」

 その女性は美しかった。妙齢の女性で、ちょっかいを掛けられてもおかしくない美貌だった。

 女性は泣きながらトニーに抱き着いた。

「勇者様、ありがとうございました。あのままではわたくし、純潔を散らされるところでした。ううう・・・」

 トニーは優しく背中をさすってあげていた。この女性から何か甘く、素敵な匂いがするな!と、この女性を救えて良かったなと思い、落ち着くのを待って、家まで送ってあげようと思うのだった。
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