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第2章

第92話 模擬戦

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 トニーはくどい位にキャサリンの体調を気にしていた。最短距離を進んでおり、各階層を10分程で抜けていく。

 道順はやり直し前に覚えたそれであり、15階層のボス部屋の状況もトニーの思うそれだったのでトニーは一安心していた。
 15階層を終えると小休止を挟んでから先に進む事にした。やり直し前に姫騎士達から聞いた話からすると、少なくともシスティーナが殺される前に辿り着く筈のペースで進んでいるから多少の休憩を取る余裕があった。休憩を取らないと、いざ本番のダンジョンクリア後の対処に響くので、焦りがあるも休憩を挟む事を選んだ。

 15階層はキャサリンにやらせたが、相手にならなかった。剣を使うまでもなかったのだ。その戦いぶりから問題ないと判断し、最終テストをしようと思った。

 俺があまりにもキャサリンの事を聞かないので、15階層を終えた後の小休止時に痺れを切らせたキャサリンが聞いてきた。

「トニー殿?何故私を信用されるのですか?呪いを掛けられたとはいえ、かなり失礼な事をしています」

「うん。神器を使ってやり直しをしたと聞いたよね?その時に俺以外皆死んだんだ。その時にレイラ、アイハ、そして君と肩を並べて戦ったんだ。その前のダンジョンで呪いを掛けられている事に気が付くのが遅くてさ。もう少し早く気が付いていたら魔物に遅れを取る事なんか無かったと思うんだ。もうあんな酷い死に様を見たくない。それに解呪する前に知らずに口論になったりかなり喧嘩をしたんだ」

「トニー殿が私の何を見たか分かりませんが、騎士として共に戦うのはやぶさかではないですよ。お蔭様で頭の痛みがなくなったから全力を出せる筈ですが、そのよな悲しそうな顔をシスティーナ様には見せないで!」

 俺はキャサリンに対し複雑な顔を向けていた。残念さんなポンコツだと思っていたが、あれは呪いを掛けられた影響だと今は知っている。

 本来は真面目で融通の利かない女騎士だ。命が尽きる直前の戦いぶりには心が踊った。レイラとも戦い方が違うのだが、レイラは騎士を目指していなかった。キャサリンは真っ当な騎士の戦い方だった。残念さんだと思ったのは呪いの所為だった。

 ただ、姫騎士団の中で一番過激にシスティーナを慕う。勿論主としてだが、システィーナに敵対したと判断すると即時に殺そうとする面もある。

 その後、先を進んで行きサクッと10階層をクリアしたが、トニーは皆が意外と思うような事を言った。

「キャサリン、俺と魔法抜きで打ち合え。この模擬剣で」

「構いませんがどうしました?」

「俺に対し負けるような事が有ればこの先は連れていけない。これからする戦いはそういうものだからだ」 

「そうですか。純粋な剣の戦いでは結果が見えていると思いますが?」

「だからだ。俺に対して負けるようならば、まだちゃんと回復していないからね」

 キャサリンが頷いたので模擬戦を始めたが、逆にトニーの腕前を評価される形になり、トニーでは歯が立たなかったのであった。
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