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第1章

第56話 国王との会食

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 ギルドで賊の引き渡しをした後は城に戻った。

 このメイドもとい、第2王女のシスティーヌは油断ならない。

 目的が分からないのだ。
 だが、ギルドを出てからは態度が明らかに変わった。ギルドマスターと話をしたが、かなりの賞金首で、元々高ランクの魔物を狩れる実力者だと判明したからだろう。

「さっきはごめんなさい。貴方の判断が正しかったわ」

「別に謝る事ではないさ。なあ、こういう時に謝られても嬉しくないけどさ、一言ありがとうと言われた方が嬉しいかな」

「うん。そうね。トニー様、私を助けてくれてありがとう!」

「意外と素直なんだな」

「勿論私は素直よ!どう見えたのかしら?」

「意地っ張りかな?」

「ふーん。そうそう、君、ひょっとして異世界人だというのを隠しているつもり?」

「異世界人?」 

「とぼけても無駄よ。お父様が既に見抜いていたわ。私はお父様に貴方の監視と場合によっては殺すようにと言われていたの。もしこの国に仇なす者ならベッドの上なりで喉を掻き切れと。酷いわよね。男性経験のない乙女にそんな命令を出すだなんて」

「何故そんな事を話す?」

「君も私が監視役だと疑って、いや確信していたでしょ?」

「まあな」

「心配しないで。私は君が気に入ったの。お父様には気を許しては駄目よ。レイラを連れてきなさい。私が君と行動を共に出来れば良いのだけれども、厳しいわね。だからなの」

 城に着いてからはシスティーヌが国王に個別に報告をしたようだ。

 そうして場違いな気分で食堂にて俺が待っていると、今度は如何にもお姫様と分かる姿に着替えたシスティーヌがやってきた。

 俺は不覚にも見惚れていた。
 従姉妹だけあってかなり似ているのだ。特に目がそっくりだ。レイラ・・・

 俺の中でレイラの存在がいかに大きかったのかを思い知らされた。

 レイラはじゃなく、システィーヌは俺の視線に気が付くと、小悪魔的にウインクをした。そして俺は来賓のようで、長テーブルの端っこ、つまり国王と対面する位置にいる。

 完全な身内だけではなく、一部の腹心が同席のようだ。

 そうしていると国王が入ってきて、俺が立とうとしたら手で制された。

「悪い悪い、会議が長引いて遅くなってな。早速頂こうか」

 奥方様が何やら神に対して感謝を述べて、最後にルーイン!と述べると皆が食べ始めた。

 俺は皆と違い、食器をガチャガチャさせており、背筋も曲がっております。そんな俺の情けない様子をシスティーヌはにこやかに見ております。恥ずかしいっす。 

「システィーヌ、今日はどうだった?」

「はい。レイラと知己があるようですが、彼女が許せば私はトニー様に嫁ぎたく思います」

「ぶー!ゴホッゴホッ!」

 俺はつい口の中のものを吹き出してうめいた。メイドさんが口を拭いたりテーブルを拭いたりしていた。

「ふふふ。冗談ですわ。今日は例の盗賊団に襲われた時に閉じ込められたので、ちょっとした仕返しですわ。そうですね。彼は善良な方です。こちらから敵対行為をしさえしなければ、陛下に仇なす者にはなりませんわ。今の通りで、驚き等を隠す事は出来ませんから」

「そうかそうか。お前が珍しいな。そうそう、トニー殿、システィーヌを守ってくれたそうで、一人の父親として礼を言わせてくれ。あやつらは騎士団や掃除人がずっと追っておったのだが、トニー殿に掛かれば赤子の様であり、あっさりと捕らえたそうだな。この件も大変じゃ。内通者が町に手引しておった事を意味するでな」

「いえ。お役に立てて幸いです。盗賊団の事はよく分かりませんが、あれの事と関連が有ると思いますか?」

「あやつら自体は別物だろうが、まあ、首謀者は同じであろうな。幸運にもトニー殿が潰してくれたから良かったが、最近きな臭くてな。所でトニー殿はこの後はどうするのだ?」

「はい。お許しを頂けるのなら、直ぐにでもグランの町に戻りたいと思います」

「王都には残らぬのか?」

「今後の事は分かりませんが、仲間が向こうで私の帰りを待っています。それと気になる事が有ります」

「なんだ?此度は仲間を連れてこなんだのか?」

「急な事なので」

「分かった。気になる事とは?」

「はい。あのコアの事です。グランの町が目的なのか、はたまた、偶々白羽の矢が立ったのか?で、警戒の為もあり暫くはあの町に居たいと思いまして」

「うむ。システィーヌがお主に王都に来て欲しそうでな。儂はいずれお主がシスティーヌの婿として王都に来る事を望むぞ」

 俺はポカーンとしていた。

「ははは。冗談じゃ。やはりトニー殿は顔に直ぐ出るのう。娘の話ではないがの、お主の様な男には是非王都に迎えたいのじゃ。取り敢えずトニー殿には我が息子の命を救い、ダンジョンコアを送り届けた功績により準男爵の地位を授ける」

「えっ?爵位ですか?俺なんかが?でも、俺には領地経営なんか無理ですよ?」

「心配せずとも良い。準男爵は爵位のみで、領地は無いでな。次に王都に来た時には住まいは見繕ってやろう」

「はっ!ありがとうございます!」

 その後何を食べたのか俺は覚えていなかった。この爵位の意味を、どういった意図にて授けたのか俺には理解できなかった。勿論気に入られたからではない。それにシスティーヌの事は、俺を繋ぎ止める為に人身御供にするつもりなのだと感じていたのだった。

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