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第1章

第52話 謁見

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 謁見の間に通され、玉座の前に案内された。

 初老のおっさんが玉座に座っており、その隣に若い男が立っていた。
 気の所為か見知った顔に似ている。
 そうそう、さっきのメイドさんは玉座の方に行き、玉座の斜め後ろに控えている。

 また、玉座の近くには何人かの家臣が控えている。

「グランの町領主が嫡男トーマスでございます。この度は重大な危機的事変の報告の為に参りました。当事者である掃除人たるデュノッゾ家のトニーを連れてまいりました」

 トーマスは片膝を付いているが、俺は立ったままだ。違和感がある。

 そうすると家臣の一人が喚き出した。

「貴様陛下の前で失礼であるぞ!陛下への不敬罪で死罪をくれてやる!」
 
 俺は一瞥のみした。

「なあトーマス、玉座のおっさんは誰だい?」

「へっ?」

「為政者じゃないぞ」

「僕も面識はないが、彼ならば・・・」

「貴方は誰ですか?」

 俺は玉座に座るおっさんに聞いた。

「我こそは・・・」

 俺は手で制しメイドを見てため息をついた。

「何かの趣向ですか?偽物を玉座に座らせ、玉座の主を当てるあれな感じですか?」

「これは驚いた。いつ見抜いたのだ?」

「あんたは側近の一人か?為政者のオーラを感じ取れなかった」

「さて、では誰が陛下だと?直接目の前に行き、当ててみせよ!玉座に来るが良い」

「その前に一つ宜いですか?」

 俺はメイドの前に行き、膝を付きその手を取り、トーマスに教えて貰った淑女への挨拶をした。

「トニーと申します。貴女は第何王女ですか?」

 ざわめきが起こる。

「これは驚きました。いつからバレていたのですか?」

「客間でひと目見た時に違和感があり、今は玉座の後ろに控えている事から王女様の一人だと推測、いや確信しました」

「因みに第2王女ですが、完璧なメイドを演じておりました筈ですのよ。見抜かれたのは初めてですわ」

「客間で既に疑っていたんだよね。で、本命は・・・」

 先程文句を言った者の横に控える副官を装っている者の所に行き、片膝を付いた。

「貴方ですね?」

「どうして分かったのだ?」

「護衛の兵士の位置関係ですよ。護衛対象の位置から貴方を護衛していると判断できましたから。先の文句も貴方がこの近衛の方に言わせて、私の反応を見て楽しんでいたのでしょう?」

 臣下の誰かが叫んだ。

「陛下が危険だ。その者を捕らえるのだ!」

「その方はそのような事をしません。私の命に代えてでも保証します。それに殺そうとしたら、ものの数秒でこの部屋の者を全滅出来ますよ」

 見覚えが有った。

「ハハハ。いやー驚いた。あんたは王子様だったのか」

「トニーさん、先日はお礼も言わずに申し訳ありませんでした。お陰様で生き返る事が出来ました」

 先の男が兵士に指示を出しており、程なくして兵の一団が謁見の間に詰め掛け、トニー達の回りを囲った。

 事情を知らぬ兵士にとっては玉座に座る者こそ国王だ。

 そして叫んだ。

「陛下の命を奪わんとしておる賊である!殺せ!」

 叛逆に出たのだ。すると玉座の周辺に居たものは皆バタバタと倒れた。スリープで眠らされたのだ。

「此奴陛下達を魔法で眠らせたぞ!誘拐するに違いない!殺せ!」

 俺はため息をつく。

 俺もエリアスリープを使った。但しトーマスと国王の手を掴み、それ以外の城の中の者を根こそぎだ。

「失礼しました。手を触れている者と己しかスリープの対象から外せられないので」

「凄いな。見事に眠っておるな。さてこの痴れ者を縛り上げるとするか」

「一応兵士達は玉座にいる人が国王だと思う筈というより、そう動いているので、玉座に座っていてください。人により早く目覚めたりしますから」

 そうして首謀者を俺とトーマスで縛り上げ、国王は玉座にいる影武者を退けて、玉座にて待機している。

 国王に先程の客間で待機しているからと、俺とトーマスは一旦この場から退いた。この後の収拾はまあ大丈夫だろうと。

 そして1時間程で第2王女が迎えに来た。

「陛下が無事に全体を掌握なされました。さあ、お2人共に陛下の元へ」

 そうしてもう一度謁見の間に向かうのであった。
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