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第1章

第51話 メイドとお茶タイム

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 トニーは皆にある意味袋叩きにあっていた。心配させやがってと言われていたのだ。

 城に向かうまでもう少し時間があった。だがトニーの格好を見て皆絶句した。服がボロボロで血塗れなのだ。

 トニーは掻い摘んで話をさせられたが、つい大岩の事を話してしまい、ストレージの事がバレた。

 なので宿の裏で死体を出し、皆が検分をしている間に風呂で汚れを落とし、着替える事になった。

 流石にこの格好のままでは陛下への謁見に向かうのは厳しいからだ。

 トニーが着替え終わると皆深刻な顔をしていた。

 取り敢えず兵士の一人にお願いし、破れた服を渡し、替えの服を買ってきて貰う。もう予備がないからだ。

「何か分かりました?」

「トニーは誰か確認していないのか?」

「まだ暗かったから、よく分からなかったですが・・・やはり彼ですか。旅の途中で見覚えが無かったんですよね」

「済まない。僕のミスだ。誰かの知り合いだとばかり思っていたんだ。心配しなくても、今ここにいる者は僕が面を確認したが、全員出発時のメンバーだよ。目的は分かったかい?」

「コアを寄越せと。既に我々が乗ってきた馬車は確認したようです。あとジュース?でした?あの女は見なかったな」

「店の者じゃあ無かったな。あまりに堂々としているから、新人と思って誰一人として部外者が紛れ混んでいるとは思わなかったようだね」

「俺がターゲットだったの?」

「皆がトニーの武勇伝を話していたからね。あの女、最初は僕に興味を抱いていたけど、一番強いのがトニーだと分かり、トニーを篭絡したようだね。しかしトニーはあまりにもちょろいな!」

 クスクスと笑われた。

「やれたのかよ?」

 皆は昨夜の武勇伝を聞こうとし、根掘り葉掘りと質問を始めた。

「あいつの部屋でキスをされたけど、その時に口移しで薬を盛られ、眠らされたからやれなかったっす。あれはキスじゃないけどさ。おっぱいも触れなかったっす!悔しいっす!」

「ドンマイだぜ!」

 トニーは皆に慰められていた。

「という事で今晩は宿から出られないな。それと単独行動を禁止する」

 皆落胆の色を隠せない。王都に来た最大の楽しみは羽目を外す事が出来るからなのだ。娼館しかり。事態は深刻なので誰一人文句は言わない。しかし血の涙を流している。

「でも、コアを陛下に渡せばもう大丈夫なのでは?コアを狙っていたから」

「そうだね。ただ、今日は駄目だ。皆楽しみのところ悪いけど、皆に死なれたら目覚めが悪いからね」

 そうしていると、そろそろ登城の時間の為、一部の兵士を除き厳戒態勢で城に向かう。

 トーマスからはストレージの件は秘密を知られるのは諦めるようにと言われた。陛下の前で直接お出ししろと、他の者を経由するなとトーマスに念を押されたのだ。

 そして城に着くとトーマスの面通しと書簡の確認が行われ、本物と確認されると客間に案内され、謁見の順番を待つように執事に言われた。

 監視役?としか思えないメイドが待機し、トニーとトーマスに何かあればメイドに伝えるように言われた。

 メイドは若い女性で、トニーはまじまじと見ていた。本物のメイドに感激していたのだ。

 茶菓子と紅茶を出され、暫く待つ事になる。

 部屋は落ち着いた感じの調度品があり、流石は王城なだけはあるなと関心していた。トニーはキョロキョロしていた。

「トニー、どうかしましたか?」

「いやー、お城なんて初めてだから何もかも新鮮で、メイドさんも綺麗な人で驚いているんですよ」

「ははは。緊張はしていないのですね」

「だって滅多に来られない所なんだから楽しまなきゃ損ですよ」

 そんな会話にメイドさんはくすくすと笑っていた。

「メイドさん、一緒にお茶を飲みませんか?」

 メイドはキョトンとしていた。

「何かメイドさんとはいえ、人を立たせてお茶を飲むって落ち着かなくて、嫌じゃなければ一緒に座りませんか?」

 メイドはトーマスを見たが、トーマスは驚きつつ頷いた。

「それでは失礼しまして、ご相伴させて頂きます」

 トーマスはぎょっとした。本来メイドとは先ずは断るものだからだ。

「このお茶めっちゃ美味いっすね!なんて言うお茶なんですか?」

「はい。こちらの茶葉はリルカーム地方特産の最高級茶葉でございます」

「因みにお店で飲むとどれ位のお金になるのですか?」

「そうですね、お店にもよりますが、銅貨15枚程が相場かと。」

「因みに王都の一般的な昼食はどれ位で?」

「はい。銅貨5~10枚位でしょうか。一般庶民の方が外食をするのは大体これ位ですわね」

 トニーが質問し、メイドが答える感じで待ち時間が過ぎ、予定時刻になり扉がノックされ、メイドが確認した。

「トーマス様、トニー様、謁見の番が来ましたので、歩哨の案内に従い謁見の間へどうぞ」

 そうしてトニー達は謁見の間に向かうのであった。
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