上 下
63 / 66
第二章

第62話 最下層への挑戦

しおりを挟む
 数日が過ぎ、僕たちは4階層での戦闘にも慣れ、各自のスキルも磨かれていった。日々の訓練と冒険の成果で、皆の体つきも少しずつ引き締まってきた。ナリアナは特にやせ細っていたが、今ではそんな様子は微塵もない。

「最近、少し太った気がするんだけど・・・」

 ナリアナが心配そうに話すと、冗談交じりにラファエルが笑いながら答えた。

「それなら、主殿のギフトで体重を調整してもらえば?」

「バンにぃ、お願いできる?」

「少し減らすけど、まだ体重足らないくらいだぞ。でもステータスに少しでも回したいよな」

 僕は了承し、ステータス操作(体重)を使って体重を調整することにした。もちろん減らした体重で得られるポイントはステータスに即時に反映する。僕のギフトが体重を自在に操作することができると伝えると、ナリアナ以外は2日に一度は体重を聞きに来て、彼女たちの中での許容体重を超えると直ぐに落としていた。

 これにより僕たちの動きもさらに軽快になるし、ステータスも上がるから良いこと尽くめだ。

「これで少しは動きやすくなるわ!バンにぃ、ありがとう!」

 ナリアナは体が軽くなったことを実感し、満足そうに微笑んだ。どうせならキスをして欲しかったけど、彼女はしてくれなかった。皆がいるからかな?

 その夜、宿での夕食を終えた後、僕たちは今潜っているダンジョン最下層について話し合った。

「最下層にはボス部屋があるって話よ。そこにはグリフォンがいるって噂を聞いたことがあるわ」

 ラファエルが真剣な表情で言った。

「グリフォンか・・・。それが本当なら、かなりの強敵だな。力はともかく、飛ぶのは厄介だな」

 僕は少し緊張しながらも、挑戦の意欲が湧いてきた。

「でも、気になることが一つあるわ」

 アレクシアが不安げに言った。

「何が気になるの?」

 ナリアナが尋ねると、アレクシアは続けた。

「これまで誰1人として生きて帰れなかったって話なのよ」

 珍しくミンディーが反応し、突っ込んだ。

「それっておかしくない?誰も生きて帰れなかったのにどうしてグリフォンだと分かるんだい?」

 ラファエルは少し考え込んだ後、答えた。

「他のパーティーがドアの隙間から閉まるまでに見たって話よ。その人たちより上のランク者が出てこなかったから挑戦するのを諦めたようね」

 その話を聞いて、僕たちは一瞬沈黙した。最下層のボス部屋に何が待ち受けているのか、それが僕たちの頭をよぎった。

「明日は最下層に挑むつもりだけど、準備は万全にしよう!ということで今日は早く寝ようね!」

 全員が頷き、翌日に向けての準備を進めることにした。

 翌朝、僕たちは早めに起床し、最下層に向けての最終準備を整えた。装備を点検し、各自の持ち物を確認してから、宿の入口に集まり、ダンジョンに向かった。

「行こう。これが僕たちの新たな挑戦だ」

 僕の合図で、僕たちは最下層を目指して進み始めた。道中の敵はこれまで以上に手強かったが、僕たちは連携を駆使して次々と倒していった。そしてついに、最下層のボス部屋の前にたどり着いた。

「ここが最下層か・・・」

 高さ3mはあろう観音開きの扉が階段を降りてすぐにあり、このフロアがボス部屋のみなのだと物語っていた。僕は深呼吸をして、皆に目配せをした。全員が準備を整えたのを確認し、扉を開けた。

 ボス部屋に足を踏み入れると、そこには異様な光景が広がっていた。部屋の中には無数の人間の石像が立ち並んでいた。まるで生きたまま石にされたかのようなリアルさだった。武器を手に持ち、立ち向かおうとしていたり、逃げ惑っている?唖然とした顔をしたりしているのもあり、ボス部屋の端ではなく戦闘中に石にされたとしか思えない位置にあり、はっきり言うと邪魔だ。そんな位置にあった。
 部屋の高さは10mはある・・・

「これは・・・」

 僕たちは言葉を失いながらも、警戒を強めた。部屋の奥には巨大なコカトリスが鎮座していた。その鋭い目が僕たちを見据え、獰猛な笑みを浮かべている。石像に目を取られている間に扉は閉まった。

「どう見てもコカトリスか・・・石化の魔眼を持っているに違いない。くそっ!これは戦いに負けた人たちか?」

 僕は緊張しながら、戦闘の準備を整えた。コカトリスが動き出し、戦いが始まるのを待った。

「僕たちならやれる!行くぞ!」

 僕たちは一致団結して、コカトリスに立ち向かう心の準備を整えた。未知なる強敵との戦いが、今まさに始まろうとしていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界の約束:追放者の再興〜外れギフト【光】を授り侯爵家を追い出されたけど本当はチート持ちなので幸せに生きて見返してやります!〜

KeyBow
ファンタジー
 主人公の井野口 孝志は交通事故により死亡し、異世界へ転生した。  そこは剣と魔法の王道的なファンタジー世界。  転生した先は侯爵家の子息。  妾の子として家督相続とは無縁のはずだったが、兄の全てが事故により死亡し嫡男に。  女神により魔王討伐を受ける者は記憶を持ったまま転生させる事が出来ると言われ、主人公はゲームで遊んだ世界に転生した。  ゲームと言ってもその世界を模したゲームで、手を打たなければこうなる【if】の世界だった。  理不尽な死を迎えるモブ以下のヒロインを救いたく、転生した先で14歳の時にギフトを得られる信託の儀の後に追放されるが、その時に備えストーリーを変えてしまう。  メイヤと言うゲームでは犯され、絶望から自殺した少女をそのルートから外す事を幼少期より決めていた。  しかしそう簡単な話ではない。  女神の意図とは違う生き様と、ゲームで救えなかった少女を救う。  2人で逃げて何処かで畑でも耕しながら生きようとしていたが、計画が狂い何故か闘技場でハッスルする未来が待ち受けているとは物語がスタートした時はまだ知らない・・・  多くの者と出会い、誤解されたり頼られたり、理不尽な目に遭ったりと、平穏な生活を求める主人公の思いとは裏腹に波乱万丈な未来が待ち受けている。  しかし、主人公補正からかメインストリートから逃げられない予感。  信託の儀の後に侯爵家から追放されるところから物語はスタートする。  いつしか追放した侯爵家にザマアをし、経済的にも見返し謝罪させる事を当面の目標とする事へと、物語の早々に変化していく。  孤児達と出会い自活と脱却を手伝ったりお人好しだ。  また、貴族ではあるが、多くの貴族が好んでするが自分は奴隷を性的に抱かないとのポリシーが行動に規制を掛ける。  果たして幸せを掴む事が出来るのか?魔王討伐から逃げられるのか?・・・

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

漆黒の私刑人〜S級パーティーを追放されたので今度は面倒事から逃げてのほほんとしたいのに・・・〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では15歳になった秋に何かしらのギフトを得る。  ギフトを2つ得たランスタッドは勇者パーティーに入るも7年経過したある日、嫉妬からパーティーを追放され、ショックから腐っていく。  ギフトを2つ持つ者は記録になかったが、期待外れとされた。  だが、皮肉にもそれにより第2のギフトが覚醒。それは超チートだった。    新たに修行で得た力がヤバかった。 その力を使い秘密の処刑人になり、悪を断罪していく。  また、追放されて腐っている時に知り合ったルーキーを新たな仲間とし、立ち直ろうと足掻く。そして新たな出会い?    悪い奴は情け容赦なくぶった斬る!  夜な夜な私刑を行う。表の顔はお人好しな中級〜上級冒険者!  ここにダークファンタジー開幕!

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

スキルスティール〜悪い奴から根こそぎ奪って何が悪い!能無しと追放されるも実はチート持ちだった!

KeyBow
ファンタジー
 日常のありふれた生活が一変!古本屋で何気に手に取り開けた本のタイトルは【猿でも分かるスキルスティール取得法】  変な本だと感じつい見てしまう。そこにはこう有った。  【アホが見ーる馬のけーつ♪  スキルスティールをやるから魔王を倒してこい!まお頑張れや 】  はっ!?と思うとお城の中に。城の誰かに召喚されたが、無能者として暗殺者をけしかけられたりする。  出会った猫耳ツインズがぺったんこだけど可愛すぎるんですが!エルフの美女が恋人に?何故かヒューマンの恋人ができません!  行き当たりばったりで異世界ライフを満喫していく。自重って何?という物語。  悪人からは遠慮なくスキルをいただきまーーーす!ざまぁっす!  一癖も二癖もある仲間と歩む珍道中!

モブ高校生と愉快なカード達〜主人公は無自覚脱モブ&チート持ちだった!カードから美少女を召喚します!強いカード程1癖2癖もあり一筋縄ではない〜

KeyBow
ファンタジー
 1999年世界各地に隕石が落ち、その数年後に隕石が落ちた場所がラビリンス(迷宮)となり魔物が町に湧き出した。  各国の軍隊、日本も自衛隊によりラビリンスより外に出た魔物を駆逐した。  ラビリンスの中で魔物を倒すと稀にその個体の姿が写ったカードが落ちた。  その後、そのカードに血を掛けるとその魔物が召喚され使役できる事が判明した。  彼らは通称カーヴァント。  カーヴァントを使役する者は探索者と呼ばれた。  カーヴァントには1から10までのランクがあり、1は最弱、6で強者、7や8は最大戦力で鬼神とも呼ばれる強さだ。  しかし9と10は報告された事がない伝説級だ。  また、カードのランクはそのカードにいるカーヴァントを召喚するのに必要なコストに比例する。  探索者は各自そのラビリンスが持っているカーヴァントの召喚コスト内分しか召喚出来ない。  つまり沢山のカーヴァントを召喚したくてもコスト制限があり、強力なカーヴァントはコストが高い為に少数精鋭となる。  数を選ぶか質を選ぶかになるのだ。  月日が流れ、最初にラビリンスに入った者達の子供達が高校生〜大学生に。  彼らは二世と呼ばれ、例外なく特別な力を持っていた。  そんな中、ラビリンスに入った自衛隊員の息子である斗枡も高校生になり探索者となる。  勿論二世だ。  斗枡が持っている最大の能力はカード合成。  それは例えばゴブリンを10体合成すると10体分の力になるもカードのランクとコストは共に変わらない。  彼はその程度の認識だった。  実際は合成結果は最大でランク10の強さになるのだ。  単純な話ではないが、経験を積むとそのカーヴァントはより強力になるが、特筆すべきは合成元の生き残るカーヴァントのコストがそのままになる事だ。  つまりランク1(コスト1)の最弱扱いにも関わらず、実は伝説級であるランク10の強力な実力を持つカーヴァントを作れるチートだった。  また、探索者ギルドよりアドバイザーとして姉のような女性があてがわれる。  斗枡は平凡な容姿の為に己をモブだと思うも、周りはそうは見ず、クラスの底辺だと思っていたらトップとして周りを巻き込む事になる?  女子が自然と彼の取り巻きに!  彼はモブとしてモブではない高校生として生活を始める所から物語はスタートする。

いつもの電車を降りたら異世界でした 身ぐるみはがされたので【異世界商店】で何とか生きていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
電車をおりたら普通はホームでしょ、だけど僕はいつもの電車を降りたら異世界に来ていました 第一村人は僕に不親切で持っているものを全部奪われちゃった 服も全部奪われて路地で暮らすしかなくなってしまったけど、親切な人もいて何とか生きていけるようです レベルのある世界で優遇されたスキルがあることに気づいた僕は何とか生きていきます

処理中です...