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第31話 ビキニアーマー

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 森雪さんは一瞬、ビキニアーマーを見て驚いた表情を浮かべていたが、次第に顔を赤らめて、じっと俺を見つめる。つい、ビキニアーマーを森雪さんに差し出すように向けた。
 そして森雪さんはというと、震えながらもおそるおそる手を伸ばす。

「え・・・?本当にこれを・・・?」

 俺は慌てて首を振る。

「いや、そんなつもりじゃなくて!これはただのドロップ品で、別に無理に着なくていいんだよ!本当だから!。ほら、もちろん上に服とか着るでしょ!」

 しかし、彼女はなぜか真剣な表情を浮かべ、少し戸惑いながらもこう言った。

「・・・銀治君がどうしてもって言うなら・・・私、受け取るよ・・・うん・・・」

 彼女の言葉に俺は完全に固まった。まさか、本気で受け取るつもりとは・・・心臓がドキドキしているのが自分でもわかる。

「いや、本当に無理しなくていいから!これはその・・・コレクションみたいなもんでさ!」

 必死に意味不明な弁明をしてしまうが、森雪さんはまだ少し震えながらもビキニアーマーを受け取ってしまった。顔を真っ赤にしながら思わずゴクリとし、引きつった笑顔をこぼす俺を見て彼女はさらに首を傾げた。

「・・・銀治君、もしかして本当に着てほしいの?これを着た姿を見たいのね?」

 俺は無意識に森雪さんに不躾な視線を送ってしまったことに気づき、焦りで言い訳をする。

「いや、その・・・今じゃなくても良いから!服を上に着たら良いから!」

 咄嗟に上ずった声で返す。彼女はなぜか頷いて、少し落ち着いた様子で返事をした。

「・・・今じゃなくても、よいのね!」

 俺はさらに言葉を継ぎ足す。

「さっき、黒い角のミノタウロスが階段から上がってきたんだ。それを倒したけど、多分メスだったからこのビキニアーマーを落としたんだと思う。何となくビキニアーマーを着てた気がする。俺が着るわけにはいかないし、森雪さんが使うなら有効利用できるかな?でも、まずはギルドで鑑定して、呪われてないか確認しないと・・・」

 必死に説明する俺・・・

 黒のビキニアーマーはさっき倒したミノタウロスの角と同じ色だ。その形が妙に印象に残ってしまい、つい森雪さんがそのアーマーを着た姿を想像してしまう。
 彼女は普段着だと着痩せして見えるけど、大きな果実を持っているっぽい。もし眼鏡を外して髪をアップにしたら、その姿はアイドルにも負けないくらい可愛いだろう・・・つい考えてしまう。

「・・・恥ずかしいけど・・・頑張・・・」

 森雪さんはその時、クネクネと動きながら何とも言えないリアクションをしている。しかし、森雪さんははっとした顔をすると、ビキニアーマーを俺に押し返すと急に俺の体をぺたぺたと触り始めた。

「ち、ちかい・・・!」

 俺はその距離感に戸惑いながらも、彼女の髪が鼻先に触れる度にドキドキしてしまう。

「大丈夫だった?ミノタウロスと戦ったのに・・・本当に無事なの?」

 心配する森雪さんの表情は必死で、真剣そのもので、俺の体に異変がないか確かめている。

「大丈夫!一撃ももらわなかったから!それよりスルメイラに突き飛ばされてたけど大丈夫なの?」

 森雪さんが安堵するのを見て続ける。

「それに、もし怪我をしてもこの前得たスキルでダンジョン内なら回復できるんだ」

「ひょっとして・・・手が生えたのもそのスキル?」

 森雪さんが聞いてきたので、俺は頷く。

「そう、ダンジョンの中にいれば自然に回復できる。」

 すると森雪さんは急に安堵の表情を浮かべた。

「よかった・・・」

 そう言いながら俺の左手を取り、頬ずりしてくる。その瞬間俺は固まってしまった。そのシチュエーションはまるで天国に昇るような感覚だ。

 しかし、はっとなり何をしていたのか気が付いた彼女は急に距離を取った。

「そ、そうだったわ」

 スルメイラのカードを取り出し、俺に渡してきた。

「途中でぽすんと音がして、カードに戻っちゃったの。どうやら、ある程度離れると自動的に戻るみたい。」

 俺はそれを受け取りながら、ようやく少し落ち着いた気分になったが、心臓はまだドキドキしているのがわかる。

「さっきヤバそうだから俺がカードに戻しただけだよ」

「なるほと、そうだったのね」

 その一言でスルメイラのことは納得してくれたようだった。

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