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第18話 ファミリアの魔力回復
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スルメイラが顕現し安堵したのも束の間、俺の顔を見ると直ぐに一言発した。
「ご主人様!お腹すいたー!なんか美味しいのないの?」
その瞬間、俺の幻想は音を立てて崩れ落ちた。カッコ良く美人な外見に似合わない、まるで駄々をこねる子供のような口調。そんな残念具合を再認識し、俺はため息をついた。
「・・・お前はやっぱり、見た目だけはカッコいいんだけどな・・・・」
「えへへ、そうでしょ?でもお腹空いて力が出ないの~。」
彼女はまるで気にする様子もなく、笑顔で答える。
「昨日も運んでもらったし、今日はそのお礼を言おうと思ってたんだが・・・お腹が減ったのか?」
晩飯までの繋ぎと買っておいた菓子パンをリュックから取り出して差し出した。
だが、スルメイラはパンを見てふくれっ面をしながら、首を横に振る。
「パンじゃないんなら、何を食べるんだよ?」
「違うの!私が欲しいのは魔力!」
予想外のことを強く主張してきたので思わずはっ!?と唸る。
美味しいものと、食べ物を欲したよな?魔力が、欲しいなら最初から言えよ!と心の中で毒づく。
すると彼女は胸を張って少し得意げに答えた。
「ご主人様の魔力!それを少し分けてもらえれば元気になるの!」
「どうすればいいんだ?」
俺が尋ねると、彼女は急に俺に近づき、いきなり手を取ってきた。
「簡単だよ!こうやって、魔力をちょっと分けてもらうだけでいいんだよ~。」
スルメイラは俺の手を握りしめ、まるで何かの儀式のように目を閉じる。
「・・・お前、ホントにそれで大丈夫なのか?」
俺は半信半疑で彼女の様子を見守ったが、手から何かが抜けてと言うか、スルメイラに吸われる感覚に襲われた。
俺が今回ダンジョンに来た目的は、自分の腕の再生を進めるためだった。再生には時間がかかるとわかっていたが、少しでも早く元の状態に戻りたい。そして、片腕しか使えない状態ではダンジョンでの戦闘が危険なので、護衛としてスルメイラを召喚することにした。
彼女を召喚した理由はもう一つあった。きのう俺をダンジョンの外まで運んでくれたことへのお礼を言いたかったし、ちゃんと話をしたいとも思っていたのだ。
ダンジョンに入ってすぐにスルメイラを呼び出すと、彼女はドレスアーマー姿で現れた。しかし、最初に発した言葉は相変わらずの残念ぶりだったが、欲したものが予想外で驚いた。
スルメイラが俺の手を握ると、どうやらスルメイラに対し俺の方から魔力を送り始めたと言うか、吸われ始めたのが感覚で分かる。
スルメイラは俺から受け取った魔力を糧に、周囲の魔力を数倍にして取り込むことができるらしい。だから、俺が送る魔力も、結果として彼女の中で数倍に膨れ上がるということだ。
どうも大気中の魔力を取り込めるようだが、それには触媒が必要で、主、つまり俺の体と魔力を触媒にする。
俺の魔力が核となり、数倍の魔力が流れ込むらしい。
・
・
・
「すごいな、手を握るだけでそんなに効率が上がるのか」
感心しつつ黙って彼女の手を握り続けた。
最初は俺の手を握っていたが、白目を剥いてトランス状態になったようで、握力が弱くなったので俺の方が掴んでいる。
しかし、数秒後には本来の目に戻りふとスルメイラが真剣な顔をして言った。
「今のご主人様では魔力を流すのに時間がかかるのです」
「そうか、腕の再生もかなり時間がかかるんだよな・・・魔力を流す力に関連しているのかな?」
俺がそう言うと、彼女は急に俺の顔を両手で掴んで、グイッと自分の顔に近づけてきた。
「唇から魔力を直接渡せば、一番早く補充できるの」
彼女は真剣に言ってきた。
俺は驚きつつ、「何言ってんだ!」と反射的に彼女の頭にチョップを入れた。
「俺のファーストキスは好きな人とするんだ!お前になんかやるわけないだろ!」
そしてきっぱり言った。
すると、スルメイラは涙声になる。
「えー、私の唇が嫌なの?」
俺が慌てるとすぐに笑い出した。
「冗談だって。手を握ってくれればそれでいいから」
いつもの調子で返してきたが、どうやら嘘泣きだった。
俺は改めて彼女の手を握り、再び魔力を送り続けた。最初はよく分からなかったが、多少流す魔力の量はコントロールできるようだ。
黙っていればスルメイラは美人で頼りになる存在だし、彼女に背負われて護衛してもらいながら、片腕の状態でもなんとかダンジョンを進んでいくことができた。
彼女と少しの間、そんなやり取りを続けながら、俺は腕の再生を急ぐ為、9階層に降り、少しだけ奥へと向かっていった。
下の階層、そして奥の方が空気中に漂う魔力の量が多く、肉体の再生速度やスルメイラに対する魔力補充の速度が上がるからだ。
なんとなくそうだろうなと思いつつ、試してみた結果だ!と言えれば良いがスルメイラが言っていたから実行に移ったんだ。
ただし、スルメイラの手を握ったまま・・・
「ご主人様!お腹すいたー!なんか美味しいのないの?」
その瞬間、俺の幻想は音を立てて崩れ落ちた。カッコ良く美人な外見に似合わない、まるで駄々をこねる子供のような口調。そんな残念具合を再認識し、俺はため息をついた。
「・・・お前はやっぱり、見た目だけはカッコいいんだけどな・・・・」
「えへへ、そうでしょ?でもお腹空いて力が出ないの~。」
彼女はまるで気にする様子もなく、笑顔で答える。
「昨日も運んでもらったし、今日はそのお礼を言おうと思ってたんだが・・・お腹が減ったのか?」
晩飯までの繋ぎと買っておいた菓子パンをリュックから取り出して差し出した。
だが、スルメイラはパンを見てふくれっ面をしながら、首を横に振る。
「パンじゃないんなら、何を食べるんだよ?」
「違うの!私が欲しいのは魔力!」
予想外のことを強く主張してきたので思わずはっ!?と唸る。
美味しいものと、食べ物を欲したよな?魔力が、欲しいなら最初から言えよ!と心の中で毒づく。
すると彼女は胸を張って少し得意げに答えた。
「ご主人様の魔力!それを少し分けてもらえれば元気になるの!」
「どうすればいいんだ?」
俺が尋ねると、彼女は急に俺に近づき、いきなり手を取ってきた。
「簡単だよ!こうやって、魔力をちょっと分けてもらうだけでいいんだよ~。」
スルメイラは俺の手を握りしめ、まるで何かの儀式のように目を閉じる。
「・・・お前、ホントにそれで大丈夫なのか?」
俺は半信半疑で彼女の様子を見守ったが、手から何かが抜けてと言うか、スルメイラに吸われる感覚に襲われた。
俺が今回ダンジョンに来た目的は、自分の腕の再生を進めるためだった。再生には時間がかかるとわかっていたが、少しでも早く元の状態に戻りたい。そして、片腕しか使えない状態ではダンジョンでの戦闘が危険なので、護衛としてスルメイラを召喚することにした。
彼女を召喚した理由はもう一つあった。きのう俺をダンジョンの外まで運んでくれたことへのお礼を言いたかったし、ちゃんと話をしたいとも思っていたのだ。
ダンジョンに入ってすぐにスルメイラを呼び出すと、彼女はドレスアーマー姿で現れた。しかし、最初に発した言葉は相変わらずの残念ぶりだったが、欲したものが予想外で驚いた。
スルメイラが俺の手を握ると、どうやらスルメイラに対し俺の方から魔力を送り始めたと言うか、吸われ始めたのが感覚で分かる。
スルメイラは俺から受け取った魔力を糧に、周囲の魔力を数倍にして取り込むことができるらしい。だから、俺が送る魔力も、結果として彼女の中で数倍に膨れ上がるということだ。
どうも大気中の魔力を取り込めるようだが、それには触媒が必要で、主、つまり俺の体と魔力を触媒にする。
俺の魔力が核となり、数倍の魔力が流れ込むらしい。
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「すごいな、手を握るだけでそんなに効率が上がるのか」
感心しつつ黙って彼女の手を握り続けた。
最初は俺の手を握っていたが、白目を剥いてトランス状態になったようで、握力が弱くなったので俺の方が掴んでいる。
しかし、数秒後には本来の目に戻りふとスルメイラが真剣な顔をして言った。
「今のご主人様では魔力を流すのに時間がかかるのです」
「そうか、腕の再生もかなり時間がかかるんだよな・・・魔力を流す力に関連しているのかな?」
俺がそう言うと、彼女は急に俺の顔を両手で掴んで、グイッと自分の顔に近づけてきた。
「唇から魔力を直接渡せば、一番早く補充できるの」
彼女は真剣に言ってきた。
俺は驚きつつ、「何言ってんだ!」と反射的に彼女の頭にチョップを入れた。
「俺のファーストキスは好きな人とするんだ!お前になんかやるわけないだろ!」
そしてきっぱり言った。
すると、スルメイラは涙声になる。
「えー、私の唇が嫌なの?」
俺が慌てるとすぐに笑い出した。
「冗談だって。手を握ってくれればそれでいいから」
いつもの調子で返してきたが、どうやら嘘泣きだった。
俺は改めて彼女の手を握り、再び魔力を送り続けた。最初はよく分からなかったが、多少流す魔力の量はコントロールできるようだ。
黙っていればスルメイラは美人で頼りになる存在だし、彼女に背負われて護衛してもらいながら、片腕の状態でもなんとかダンジョンを進んでいくことができた。
彼女と少しの間、そんなやり取りを続けながら、俺は腕の再生を急ぐ為、9階層に降り、少しだけ奥へと向かっていった。
下の階層、そして奥の方が空気中に漂う魔力の量が多く、肉体の再生速度やスルメイラに対する魔力補充の速度が上がるからだ。
なんとなくそうだろうなと思いつつ、試してみた結果だ!と言えれば良いがスルメイラが言っていたから実行に移ったんだ。
ただし、スルメイラの手を握ったまま・・・
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