14 / 73
第14話 謎の人物による尋問
しおりを挟む
校長室の前に着くと、校長は俺に向き直った。
「すまないが少し待っていてくれ」
ちょっと待ってくれと言うと校長は一人で中に入ったが、どうやら電話をしていたようだ。
・
・
・
「すまないな。急いで連絡を入れなければならなくてね。さあ、中に入ってくれ」
校長室に足を踏み入れた瞬間、空気が一変した。古びた木製の机と革張りの椅子、重厚なカーテンが遮る外の光が、部屋全体に緊張感を漂わせている。
校長は応接にあるソファーに腰掛け、その顔にはいつもの優しさはなく、厳しい眼差しが俺に向けられていた。
俺は2つの意味で緊張している。
ひとつはいわずもがなだと思うが、校長室なんて初めて入るし、一生縁のない所だと思っていたよ。
そして2つ目は森雪さん。
彼女は俺の手をぎゅっと握り、離そうとしない。
多分恋人のそれではなく、姉が幼い弟の手を握り、道路に飛び出さないようにするようなのだと思う。前者だったら嬉しいが、残念ながらそういう関係ではないし、そういうふうに見られてはいないと思う。俺に気があるなんて間違ってもなんて勘違いはすまい。道すがら心配そうに俺の顔をチラチラ見ていたから、余計そう思う。
余程今回のレイド戦のショックが大きかったのか、その反動かな?今の森雪さんは厳しい目をしている。
近くで見るとやはり綺麗だな!メガネをやめてコンタクトにすればよいのに・・・と、ふらちなことをつい思う。
森雪さんが俺の隣に立ち、心配そうに俺の顔を見つめている中、校長は応接に座るよう手振りで示した。
こういう場所というか、応接セットに座るときのマナーや決まりがわからないので、取り敢えず校長の様子を見、促されるのに任せようと思う。
校長が先に座っており、校長の手振りに促され、森雪さんが座りかけたので俺も腰掛けると、校長先生は一息つくと静かな声で問いかけた。
「市河君、君が無事で本当に良かった。しかし、君が今ここにいることに、どうにも違和感がある。何があったのか正直に話してくれるかね?」
俺は一瞬、言葉に詰まったが、正直に答えなければならないと決意してレイド戦で死にかけ、昨夜家に戻ったと簡単に話した。
「怪我はなかったのかね?」
それについて口を開こうとしたその瞬間、校長が突然俺の腕を見つめていることに気がついた。そして鋭い眼差しで上着を指差しながら言った。
「その腕・・・少し見せてくれないか?」
驚きつつも、俺はゆっくりと上着を脱ごうとした。だが、校長は焦りを感じたのか、俺の手を掴むと自ら上着を剥ぎ取った。
そこで露わになったのは、包帯がぐるぐる巻かれた左腕。不自然に短く、明らかに普通ではない状態だった。森雪さんはその場で息を呑み、口を押さえて絶句した。
校長もまた、驚愕の表情を浮かべ、深くため息をついた。
「これは一体・・・どうしてこんなことに?」
俺はレイド戦での役目、道中のことを話し、ボス部屋での絶望的な戦いについて話し始めた。暫くするとノックと共に校長室の扉が開き、ギルドからの使者が入ってきた。返事を待たずに・・・だ。
見知った顔が一人、そして見知らぬ年配の男性と共に現れた。見知った顔はギルドでの受付担当、水木さんだ。彼女は俺の姿を見て、一瞬戸惑った様子を見せたが、すぐに冷静さを取り戻し、隣の年配の男性に何かを耳打ちした。
その男性は俺の左腕を見ると、鋭い眼差しを俺にだけ向けて言った。
「君の名前は市河銀治君で間違いないな?」
彼の声は低く、しかし威圧的ではないが、素直に受け答えしなければならないなという迫力を感じさせるものだった。
俺は迷うことなく頷き、彼らの次の言葉を待った。
「君が生還したのは奇跡だ。しかし、その腕・・・まさか、今回失ったのか?君の身に何が起こったのか知る必要があるし、それよりも何か重大なことが隠されているのではないかと思うのだ」
ギルドからの使者たちは、明らかに俺の状況を探ろうとしていた。森雪さんは不安そうに俺を見つめ、何か言おうとしたが、言葉が出てこなかったようだ。
校長は深く息を吸い込み、ギルドの使者たちに向かって言った。
「この状況をどう理解すべきか、私にはまだわかりません。ですが、ハンターギルドの判断に委ねるしかないようだ。」
ギルドの年配の男性は頷き、再び俺に向き直った。
「市河君、君の身に何が起こったのか、全て話してもらう必要がある。今、この場で。」
俺は逃げることもできず、全てを話す覚悟を決めた。目の前の人々が何を知っているのか、そして俺の未来がどうなるのかはわからない。だが、今は真実を語るしかなかった。
しかし小心者の俺は疑問を口に出せずにいて、「あんた誰さ?」とか「人に物を尋ねる前にまず名乗るのが礼儀じゃないのか?」などと心の中でしか発せずに聞けなかった。少なくともハンターギルドの幹部だろう。水木さんの様子から、水木さんにとって目上の人っぽい・・・本当にこのひとは何者なのか・・・誰か教えてください・・・切実にお願いします!
「すまないが少し待っていてくれ」
ちょっと待ってくれと言うと校長は一人で中に入ったが、どうやら電話をしていたようだ。
・
・
・
「すまないな。急いで連絡を入れなければならなくてね。さあ、中に入ってくれ」
校長室に足を踏み入れた瞬間、空気が一変した。古びた木製の机と革張りの椅子、重厚なカーテンが遮る外の光が、部屋全体に緊張感を漂わせている。
校長は応接にあるソファーに腰掛け、その顔にはいつもの優しさはなく、厳しい眼差しが俺に向けられていた。
俺は2つの意味で緊張している。
ひとつはいわずもがなだと思うが、校長室なんて初めて入るし、一生縁のない所だと思っていたよ。
そして2つ目は森雪さん。
彼女は俺の手をぎゅっと握り、離そうとしない。
多分恋人のそれではなく、姉が幼い弟の手を握り、道路に飛び出さないようにするようなのだと思う。前者だったら嬉しいが、残念ながらそういう関係ではないし、そういうふうに見られてはいないと思う。俺に気があるなんて間違ってもなんて勘違いはすまい。道すがら心配そうに俺の顔をチラチラ見ていたから、余計そう思う。
余程今回のレイド戦のショックが大きかったのか、その反動かな?今の森雪さんは厳しい目をしている。
近くで見るとやはり綺麗だな!メガネをやめてコンタクトにすればよいのに・・・と、ふらちなことをつい思う。
森雪さんが俺の隣に立ち、心配そうに俺の顔を見つめている中、校長は応接に座るよう手振りで示した。
こういう場所というか、応接セットに座るときのマナーや決まりがわからないので、取り敢えず校長の様子を見、促されるのに任せようと思う。
校長が先に座っており、校長の手振りに促され、森雪さんが座りかけたので俺も腰掛けると、校長先生は一息つくと静かな声で問いかけた。
「市河君、君が無事で本当に良かった。しかし、君が今ここにいることに、どうにも違和感がある。何があったのか正直に話してくれるかね?」
俺は一瞬、言葉に詰まったが、正直に答えなければならないと決意してレイド戦で死にかけ、昨夜家に戻ったと簡単に話した。
「怪我はなかったのかね?」
それについて口を開こうとしたその瞬間、校長が突然俺の腕を見つめていることに気がついた。そして鋭い眼差しで上着を指差しながら言った。
「その腕・・・少し見せてくれないか?」
驚きつつも、俺はゆっくりと上着を脱ごうとした。だが、校長は焦りを感じたのか、俺の手を掴むと自ら上着を剥ぎ取った。
そこで露わになったのは、包帯がぐるぐる巻かれた左腕。不自然に短く、明らかに普通ではない状態だった。森雪さんはその場で息を呑み、口を押さえて絶句した。
校長もまた、驚愕の表情を浮かべ、深くため息をついた。
「これは一体・・・どうしてこんなことに?」
俺はレイド戦での役目、道中のことを話し、ボス部屋での絶望的な戦いについて話し始めた。暫くするとノックと共に校長室の扉が開き、ギルドからの使者が入ってきた。返事を待たずに・・・だ。
見知った顔が一人、そして見知らぬ年配の男性と共に現れた。見知った顔はギルドでの受付担当、水木さんだ。彼女は俺の姿を見て、一瞬戸惑った様子を見せたが、すぐに冷静さを取り戻し、隣の年配の男性に何かを耳打ちした。
その男性は俺の左腕を見ると、鋭い眼差しを俺にだけ向けて言った。
「君の名前は市河銀治君で間違いないな?」
彼の声は低く、しかし威圧的ではないが、素直に受け答えしなければならないなという迫力を感じさせるものだった。
俺は迷うことなく頷き、彼らの次の言葉を待った。
「君が生還したのは奇跡だ。しかし、その腕・・・まさか、今回失ったのか?君の身に何が起こったのか知る必要があるし、それよりも何か重大なことが隠されているのではないかと思うのだ」
ギルドからの使者たちは、明らかに俺の状況を探ろうとしていた。森雪さんは不安そうに俺を見つめ、何か言おうとしたが、言葉が出てこなかったようだ。
校長は深く息を吸い込み、ギルドの使者たちに向かって言った。
「この状況をどう理解すべきか、私にはまだわかりません。ですが、ハンターギルドの判断に委ねるしかないようだ。」
ギルドの年配の男性は頷き、再び俺に向き直った。
「市河君、君の身に何が起こったのか、全て話してもらう必要がある。今、この場で。」
俺は逃げることもできず、全てを話す覚悟を決めた。目の前の人々が何を知っているのか、そして俺の未来がどうなるのかはわからない。だが、今は真実を語るしかなかった。
しかし小心者の俺は疑問を口に出せずにいて、「あんた誰さ?」とか「人に物を尋ねる前にまず名乗るのが礼儀じゃないのか?」などと心の中でしか発せずに聞けなかった。少なくともハンターギルドの幹部だろう。水木さんの様子から、水木さんにとって目上の人っぽい・・・本当にこのひとは何者なのか・・・誰か教えてください・・・切実にお願いします!
56
お気に入りに追加
97
あなたにおすすめの小説
劣等生のハイランカー
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す!
無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。
カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。
唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。
学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。
クラスメイトは全員ライバル!
卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである!
そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。
それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。
難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。
かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。
「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」
学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。
「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」
時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。
制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。
そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。
(各20話編成)
1章:ダンジョン学園【完結】
2章:ダンジョンチルドレン【完結】
3章:大罪の権能【完結】
4章:暴食の力【完結】
5章:暗躍する嫉妬【完結】
6章:奇妙な共闘【完結】
7章:最弱種族の下剋上【完結】
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
現代ダンジョンで成り上がり!
カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる!
現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。
舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。
四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。
落ちこぼれの烙印を押された少年、唯一無二のスキルを開花させ世界に裁きの鉄槌を!
酒井 曳野
ファンタジー
この世界ニードにはスキルと呼ばれる物がある。
スキルは、生まれた時に全員が神から授けられ
個人差はあるが5〜8歳で開花する。
そのスキルによって今後の人生が決まる。
しかし、極めて稀にスキルが開花しない者がいる。
世界はその者たちを、ドロップアウト(落ちこぼれ)と呼んで差別し、見下した。
カイアスもスキルは開花しなかった。
しかし、それは気付いていないだけだった。
遅咲きで開花したスキルは唯一無二の特異であり最強のもの!!
それを使い、自分を蔑んだ世界に裁きを降す!
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
世界中にダンジョンが出来た。何故か俺の部屋にも出来た。
阿吽
ファンタジー
クリスマスの夜……それは突然出現した。世界中あらゆる観光地に『扉』が現れる。それは荘厳で魅惑的で威圧的で……様々な恩恵を齎したそれは、かのファンタジー要素に欠かせない【ダンジョン】であった!
※カクヨムにて先行投稿中
ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜
むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。
幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。
そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。
故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。
自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。
だが、エアルは知らない。
ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。
遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。
これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる