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第2章

初心者講習へ

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 太一は暖かく柔らかな感触を頭に感じていた。更に誰かに頭を撫でられているのだが、まだ眠りからは覚めてはいなかった。だが、おかけで心地良い眠りを享受していたのだ。

「母さん。死ぬかと思ったんだ。怖かったんだ。無理矢理こんな所に連れてこられて、魔物と戦わなければならないんだ。帰れないんだ。俺やっていく自信がないよ。くそー。死にたくないよ。死にたくないんだ。帰りたいな。帰りたかったな」

 太一が寝言を言っていた。
 シャロンは太一に何があったのか、うなされている太一を見て狼狽えていた。帰りたいとの言葉にショックを受けていた。帰れないと聞いているから、帰れない太一を可愛そうだとシャロンは涙していた。
 しかし今はシャロンは声を掛けられなく、頭を撫でるのが精一杯だった。

 やがて太一は目覚めた。
 しかし暖かく柔らかな感触が不思議だった。
 目を開くとシャロンの胸が近かった。手を伸ばせば届く距離にあるが、状況が理解できなかった。
 顔の位置や頭の下の温もりからどう見ても膝枕をされているのだ。何故だ?膝枕をされる?理由が見当たらない、どうしてこうなっているのか理解出来なかった。太一は乙女心を理解していなかった。ただ好きな人を膝枕して安らぎを与えているのか、得ているだけなのだ。

「あ、あの、シャロンさん?どうして僕は膝枕をされているの?」

「その、ソファーから落ちて頭を打たれたようなので、こうして介抱していたんですよ。また私やっちゃったんですね。私がベッドを使った所為で太一様がソファーを使われていたんですから、私の所為なの。それと、いえ、ごめんなさい。痛くはないですか?私は固くないですか?それと、ベッドまで運んで頂いたようですが、私重かったでしょう?」

「そ、そうか。えっと、固くなんかないよ。柔らかく暖かで至福の心地良さだよ。膝枕って恥ずかしいけど、その気持ち良いものなんだね。お陰で疲れも取れたけど、その、僕は何か言ってた?それとシャロンは体重どれくらいなの?軽過ぎて驚いたよ」

「良かったですわ。えっと、シャロン君が欲しい。結婚したいって言う以外は特に、アッ痛い」

 太一は膝にげんこつをくれてやり

「そんな事言っていないだろう?確かにシャロンのような女性が奥さんだったら素敵だとは思うけど。でもありがとう。何か元気が出たよ。やべえ!今日初心者講習じゃなかった?」

「あっ!急がないといけませんね。お着替えしてきますから、食堂でお待ちくださいね」

 お揃いの戦闘服に着替え、慌てて食事をし、ギルドに向かった。シャロンは太一の斜め後ろを歩き付き従う。

 時間に余裕を持ってギルドに着くと先日太一とシャロンの受付をしてくれたノエルという受付嬢が今日の初心者講習の受付やサポート等を担当しているようで、受付をして貰い、会場に向かう。通常の受付とは別だった。

 会場は2階にある大会議室で、会場に着くと既に殆どの参加者が席に着いていた。

 太一が部屋に入り、続いてシャロンが入るとヒューとかマブイ姉ちゃんだ!とか聞こえて来た。。

 嫌な予感しかしなかったが、シャロンと空いている席に座る。早速お約束と言うべきイベントが発生した。

 スキンヘッドで盗賊と見間違えるような面構えの奴を筆頭に3人の冒険者が絡んできた。

「よう姉ちゃん。俺らのパーティーに入んな!」

「私はロイ様のパートナーとして既にパーティを組んでおります。ですので折角お誘いを受けましたがお受けできません。申し訳ありませんが他を当たりくださいませ」

 すると太一に絡んできた

「てめえ、美人を連れているからって言い気になっているんじゃねえぞ。その姉ちゃんを俺達に寄越せば見逃してやる。寄越せ」

「はあ、いきなり何ですか貴方達は?失礼じゃないですか。彼女とは既に冒険者パーティを組んでおりますし、同じ師匠を持つ兄弟弟子です。僕にとって大切な仲間です。申し訳ありませんが、他を当たられた方が宜しいかと思います」

 いきなり襟首を掴み

「てめぇー調子に乗ってんじゃねえぞ!」

 周りが固唾をのんで見ていた。

 シャロンの後から入ってきたノエルはオロオロしていたが、講師が入って来た

「何だ?揉め事か?」

「ちっ!覚えてろ!。何でも有りませんぜ。ちょっとした挨拶ですぜ」

 講師のお陰で一旦助かったが、この後も絡まれるんだろうなと感じる太一だ。

 参加者は男性18、女性8といった所であった。
 既にパーティを組んでいる者、単独者、ペアを組んでいる者それぞれであった。
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