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第21話 奴隷商グレイズ

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 ブラッドは颯爽とレイガルドに跨って奴隷商に向かったが、近いので程なくして着いた。

 タミアが駆け寄り、既に奴隷の2人は馬車の中におり、着替えも済んでいる事を伝えて来た。

「悪いな。商会主に挨拶だけしてくるよ」

 そう言うと馬車の中に女性二人の人影が有る事だけを確認し、奴隷商のところに向かった。

「お早いお戻りでございましたな。奴隷の方は申し出のように一旦タミア嬢を主人として引き渡しをさせて頂きましたが、宜しかったので?」

「ああ済まない。あいつなら奴隷の辛さを知っているから酷い扱いをしないだろうさ。それよりあんたの事を何と呼べば良い?名前を聞いていないんだ」

「親しい者はグレイズと呼んでおります」

「今晩の宿で主人を変更するので良いか?もう出発だろう?」

「そうして頂けると助かります。さて出発致しますか」

 ブラッドはレイガルドについてくるように伝え、馬車に乗り込んだ。
 そこには冒険者が着るような服を着た奴隷の少女が二人いた。

「おかえりなさい」

「色々済まなかったな。出発するそうだ。時間がないから、主人の変更は今日の宿でしてもらうからな」

「了解しました。えっと、ブラッドはボクと同列で、主人として反抗を禁じておいたので」

「分かった。二人共中々似合っているじゃないか。少しサイズが合わないようだな。ほら、裁縫道具だ。宿にて直すんだな。おい、お前は侍女だったって言ってたよな?出来るか?」

 ・・・

「はあ。答えないのは自由だが、気に入らないという事で、奴隷商で着ていた服に着替えてもらおうかな。奴隷とはいえ、嫌な服を着せる趣味はないんでな」

「申し訳ございませんでした。私が直します。気に入らないなんて滅相もありません」

「で、お前はどうなんだ?この服で良いのか?」  

 もうひとりは頷いた。

「それと今日の宿はまあ、向こうに着いてからの話だが、基本的に一部屋を借りる。多分ベッドが2つだ。
 選択肢を2つ用意するから選べ。俺と同じ布団で俺の添い寝をするなら一緒にベッドで寝ればよい。嫌なら厩だ。今日泊まる宿に着くまでに決めておけ」

 二人は黙ったままだ。
 少し待ったが押し黙っていた。

「馬車が進みだしたから、大事な話をしたいが、お前達の本名は?」

「ブラッド様。私がマリーナで、お嬢様がニスティー様でございます。」

「タミア、元の名を使うのは問題があるか?」

「特にないけど、名前を付けるのは主人の特権ですよ」 

「面倒臭いな。まあ、あまり反抗的ならビッチとかヤリマンとかに改名するかもだがな」

 ブラッドは二人の目を見た。

「名前をどうしたいか選ばせてやる。俺も鬼じゃないんでな。俺が名前を付けるか、元の名にするかのどちらかだ。これ位は即答しろよ。口が聞けないのなら別だが、各々自分の意見を出せ。まずはニスティー、お前からだ」

「どうやら躾が必要なようだな。マリーナと言ったな。隷属の首輪による躾はニスティーは教えられたのか?お前はきのうやられていたよな?流石に王族なら知識はあるだろ?」

 ・・・

「奴隷商の奴め、教えていないのか。気が進まないな仕方がない。タミア、命令を頼む」

「命令に背いたら苦しい思いをするのは君達だよ。ほらボクはきのう君達の目の前で奴隷解放されたでしょ。ブラッドにはされていないけど、この町の奴隷商に引き渡される前の奴隷商に躾と称して散々苦しめられたんだ。もし命令に背いたらこうなるから、出来ればこの一回だけにしたいけど、どうなるか試したい?余り勧められないし、物凄く苦しいよ?」

「ブラッド様、御慈悲です。私は宜しいが、お嬢様にはお止めください。身を持ってどうなるか、お嬢様も知っております。その、お嬢様は昨夜の躾がショックで、今は声が出せなくなっております。私は元の名前でお願いします。お嬢様、元の名前が宜しければ首を縦に振り、ブラッド様に名を付けて頂くなら横にお振りください」

 ニスティーは首を縦に振った。

「分かった。そう言う事なら仕方がない。筆談は出来るな?」

 首を縦に振った。

「それでは今後のお前たち二人の身の振り方について伝えておく。見ての通り俺は片手を失っているが、聞いたところによると聖騎士は欠損修復ができたと言うが、俺にはやり方が分からない。もし知っているなら教えて欲しい。勿論ただでとは言わない。俺に伝えてくれるなら、つまり俺の左手が復活する事ができたのなら、お前達に対して1年間は性的に手を出さず、買い戻しのチャンスをやる。その間は冒険者として一緒に活動し、その中の報酬をきちんと分配してやるから、それを貯める事になる。そうやって買い戻しのチャンスをやるが、買い戻しの金額は俺が買った金額だ。このタミアは自らの活躍により、俺が手を出す前に自らを買い戻す事ができた」

「よろしいのですか?」

「俺はやる気のない状態の者を手元に置いておく気はない。信じるか信じないかはお前達の自由だが、俺は一度した約束は守る主義だ。これから俺が出兵する前に愛した女の所に向かう。その女に俺が不誠実な者だとは思われたくはない。丁度近くの町にこのキャラバンが向かうから便乗している形だ。で、どうする?ニスティーは知っているのではないのか?」

 ニスティーは慌てて首を縦に振っていた。

「やり方を教えることはできるか?タミア、見ての通りだ。彼女達は俺の役に立つ情報を持っているようだ。もし俺が約束を破ろうとした場合は、お前が俺を刺せ」

 ニスティーに紙を渡すと、何やら書いておりブラッドに渡して来た。

 紙を一瞥のみし、マリーナに渡した。

「俺の出身国の字じゃないから俺には読めない。読んでくれ。もっともお前が知っているならその内容でも構わない」

「はい。欠損修復を行う場合最低3人が必要です。1人はもちろん被験者、術者つまりブラッド様、補助する支援者と3名となります。支援者が被験者の欠損部位を舐めている、その状態で術者が回復術を行い、支援者が欠損修復するように祈る必要があります。私も聞いた事があります。聖騎士殿は偶然発見したようですが、色々試しておりました。術者が傷口を舐めながら行っても術は発動しませんでした。それと被験者と支援者は異性でなければなりません。これも検証済みです」

「そうか。侍女だから同行していたのか。侍女と言うより護衛だろ?じゃあニスティー、俺の腕の傷口を舐めてくれ」

「それでしたら私が」

「いやお前には後で違う事をお願いする事になる。賭けてもいいがその時にそれをニスティーじゃなくお前に頼んだ事を感謝される、そういう内容だ」

 2人は顔を見合わせていたが、頷いた。

 そしてニスティーがブラッドの手を舐めている状態でスキルを発動する。ふんわり光ったので術自体は発動しているのが分かる。

 しかし何も起こらなかった。

「ひょっとして自分自身には使えないのか?」

「聖騎士様が欠損修復をされる羽目になったという事は聞いておりませんので、誰も分からないとしか申し上げられません」

「ブラッド、結局のところ1人足らないんじゃないの?その、2人で同時に舐めてみたらどう?その、もう一人はボクがやるよ」

「そうだなもう一人はマリーナお前がやるんだ。タミアは見ていてくれ」

 そして仕切り直しとなったのであった。
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