上 下
14 / 43

第14話 アイリとの夕食

しおりを挟む
 宿に戻り、ブラッドはタミアを奴隷から開放した事と、明日2人の奴隷を連れて来ると女将さんに伝え、明日からは4人が使える部屋をと頼んだ。しかし、ベッドが3つしかないという。

「女将さん、大丈夫です。代わる代わる添い寝をする人が変わるだけですから」

「タ、タミア?いいのか?」

「うん。ボクを抱いたらブラッドはボクの事を女として認めたって事だよね!」

「分かったよ。ムラムラするから娼館で発散してくるよ。止めるなよ」

 タミアはむすっとしていた。

 宿の食堂にてそんな話をしていると、アイリが現れた。清楚なワンピースで、腰をベルトで絞っており、ブラッドはつい見惚れていた。

「こんばんは。ブラッドさん?私の顔になにかついていますか?」

「いや、その、ギルドの時と雰囲気が違っていて、つい素敵だなと見惚れていただけだ」

「あらお上手ね。お隣良いかしら」

 6人が座れるテーブルで女子に挟まれる形になった。

「いきなり近くないか?」

「嫌かしら?」

「俺は良いがと言うか、寧ろ美女が隣で嬉しいから良いが、アイリは受付嬢をしているのだろう?大丈夫なのか?」

「あら美女だなんて。大丈夫ですわ。ブラッドさんが運命の人って感じたの」

「俺は良いが、売り言葉に買い言葉で大丈夫なのか?俺はとんでもない奴かもだぞ」

「どんなふうにかしら?楽しみね。私ね、とことん男運が無かったのよ。担当の冒険者でまともなのは所帯持ちか、女の子達だけなのよ。皆ね、私の人となりを見ずに、体目当てなの。ブラッドさんもそうなのかしら」

「俺は女好きだぞ。さっきも性奴隷を2人も買ったんだぞ。アイリの事もただ抱きたいだけかもだぞ」

「ブラッドさん、私と付き合うのが嫌なら嫌いだって言って欲しいの。何か私に嫌われるような事をワザと言っていないかしら?。女将さん!二人と同じのをお願いね!って、タミアちゃんにも同じようにしているでしょ?でも私の事を今は嫌っていないでしょ?」 

「見透かされているんだな。もしもな、アイリと愛し合ったとして、多分俺との子を抱かせてあげられないんだ。女として満足させられないと思う。済まない」

「どういう事なの?」

「黙っているつもりだったが、その、去勢されているんだよ。子をなそうと思うと、俺の体を切り刻んで取り出した子種を指に付けて、子宮に突っ込むしかないんだ」

「そ、そんな。可哀想に。そんな事だと思っていました。噂で戦闘奴隷は去勢しているって聞きました。その、覚悟を決めればお付き合いをするのは良いのよね?」

「だ、駄目だ。友達なら良いが、君の人生に関わる事だ。君は子を抱く権利があるし、だからといって自分の女を、例え子を得る為とはいえ他の男に抱かせるつもりはない」

「あのね、その、男の人の象徴を復活させるやり方が有るって言ったらどうする?」

「あ、あるのか?」

「ええ。ブラッドさんの左腕を見て気になったから調べてみたの。あの聖騎士は欠損部位を復元していたようよ」

「あいつは俺が殺したぞ」

「えっ?」 

「知らないのか?結構有名だぞ」

「聖騎士がスキルを2つ持っていて、回復スキルでできるらしいの」

「何だって?」

「おかしいと思ったの。ブラッドさんって、聖騎士と同じスキルを持っているのに、何故手を復元しないのかって、不思議だったの」

「耳を貸せ。俺は殺した奴のスキルを奪えるんだ。だから同じスキルを偶々持っているのじゃなくて、俺のスキルは全て殺した奴から奪ったものだ」

「試していないの?」

「試したさ。だが出来なかったんだ。知っていた奴は既に死んでいるんだ」

「あの聖騎士って確か婚約しているわよ。その婚約者は流石に知っているのではないの?探してみたらどうかしら?」

「さっき奴隷を買ったって言ったろ?その婚約者だよ」

「えっ?そんな偶然があるの?」

「いや、偶然じゃない筈だ。あの奴隷商は俺に格安で売り付けて来たんだ。なるほど。なんとなく見えてきたな」

「何が分かったのですか?」

「ああ。俺が欠損修復をできるようにしたいんだろう。問題は誰を治したいのかだ。俺の為じゃない筈だ」

「よく気が付きますね」

「タミアもそうだが、俺に何かをさせたがっているのは分かっていたんだ。不自然に誘導をしていたからな。アイリ、希望が見えたよ。そうだな。あのお姫さんに俺が欠損修復をできるようになったら買い戻しをできる許可を出し、1年は手を出さずにいてやるって条件を出そうと思う」

「あのう、ブラッドさん、彼女になる女の前で、他の女を犯す話がよくできますね」

「勿論そんな事をするつもりはないさ。ただな、期限を切らないとのらりくらりとし、危機感を抱かないだろ?」

「アイリさん。ブラッドはそういう人なんですよ。信じてあげましょうよ」

「いいのよ。タミアさんを見ていれば分かるわ。不器用な人だけど、妙に頭が切れるのよね。私、ブラッドさんの事を本気で気に入ったのよ。でもね、子供の話は話が飛び過ぎよ。交際が直ぐに終わるかも分からないでしょ」

「そうかもな。それよりも俺の手の事を調べてくれていたんだな。アイリは案外いい女だな」

「あら?私は案外なの?」

「いや、掛け値無しで良い女だと思うぞ。ふう。なあ、この話はそろそろ止めにしないか?知り合ったその日にするような話じゃないぞ」

「確かにそうね。でもブラッドさんの能力についてだけれども、興味深いわね」

「思う所が有るんだが、その、今日一つ追加になったっぽいんだ」

「どういう事かしら?」

「サイクロプスを倒した時にだな、何かが入って来たんだ。今迄は戦の最中だったから気が付かなかったが、今回は単体の魔物だったから気が付いたんだ」

 アイリは頷き、先を促した。

「まだ検証をしていないんだが、スキル名は怪力というんだ」

「魔物からも奪えるのね。ちょっと調べておこうかしら」

「じゃあ頼もうかな」

 結局ブラッドのスキルについての話になってしまったが、食事の後3人でギルドの職員官舎に歩いて行き、アイリを送り届けた後はタミアはブラッドの腕にしがみつく形だった。
 身長差の影響でタミアはブラッドと腕を組みたかったのだ。タミアはまだ伸び盛りだが、現状は身長差がかなりあるのだ。
 見兼ねたブラッドがタミアの手を取り、手を繋いで歩いてあげたが、タミアはえらくご機嫌になっていた。ブラッドは今日だけだぞと釘を刺していた。とは言え宿に真っ直ぐに向かい、風呂に入ってから大人しく休むのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ゾンビになった妹を救うため、終末世界で明日に向かってゴールをめざす

戸影絵麻
ホラー
原因不明の異変により、外界と隔絶された政令指定都市。住民たちは次々にゾンビ化し、凄惨な殺戮を繰り返す。その地獄さながらの世界の片隅で、ゾンビ化した妹を救うために、何の取り柄もないヘタレ大学生の僕は、ついに行動を起こす。が、その前に立ちふさがるのは、僕の予想をはるかに超えた異常事態だった…。 一応、『ホラー小説大賞』の大賞候補作品です。

大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-

半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ@転移世界のアウトサイダー発売中
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

ぼくは帰って来た男

東坂臨里
ファンタジー
 あっちにとっては→必要な召喚 =≒≠ こっちにしたら→いきなりの神隠し そんな召喚から帰って来た元勇者の六歳児とみんなの 召喚と転移と神隠しと それからやり直しの話

シモウサへようこそ!

一ノ宮ガユウ
ファンタジー
日本政府からあっさりと見捨てられた千葉県北部と茨城県南部。 しかし住民はといえば、元気にたくましく――というか、さして気にすることもなくフツーに暮らしていたりも。 そんな「セーグフレード領シモウサ」の防衛局司令に、若干16歳にして任命され、赴任してきた少女ルクフェネ・ティッセと、補佐に志願した地元の高校生・相馬圭が、抱え込んだコンプレックスに折り合いをつけながら成長し、そして想いを強めていく物語。 ❖ルクフェネ・ティッセ❖ 防衛局に司令として赴任してきた少女。アルテリウア、16歳。王族らしい。しかしその生まれをもって特別扱いされることを嫌い、自分をありのままに理解してくれることを望んでいる。おしゃれには無頓着。また、同世代との交友がなかったため、恋愛関係に疎い。 ❖相馬圭 (そうま けい)❖ 防衛局が置かれた取手市内に住む高校生。17歳。都内の大学へ進学する道が閉ざされたことを理由に、防衛局の補佐に志願した。少しでもルクフェネの役に立てるようになりたいと、もがく。姉・妹・母という家族構成からか、女子耐性が強い (無頓着ともいう)。 ❖リバ❖ モミョ族 (外見的には長毛種の猫。尻尾が3本あって、背中にはコウモリのような大きな翼が生えており、ライオン並にでかい――が) の侵入者。不遇な種族の名誉を回復するため、手柄を立てようとしている。 ❖カルナ・ウィーディルビルグ❖ セーグフレード領シモウサ総督。アルテリウア。28歳。圭から見ても相当な経歴の持ち主だが、飄々とした、とらえどころのない人物。ルクフェネとは旧知の間柄の模様。 ❖コヨ・タキッシェ❖ シモウサにやってきた冒険者。ネズミかそれ近い種族の、いわゆる獣人。ルクフェネがいうには、その目的から、逸早く新たな土地にやってくることは理解できるが、査証が発行されるのが早過ぎるらしい。 ❖木葉つぐみ (このは――)❖ 圭の幼なじみ。17歳。圭のことが好きだが、想いを告げられないでいる。 ❖二十日兎 (マルシェ)❖ 正体不明のアルテリウア。シモウサには、ローブと仮面を依り代に現れる。かなり能力の高いアルテリウアと思われる。 ❖精霊たち❖ 下総国北部と常陸国南部の精霊たち。ケヤキちゃん、ジャモちゃん、ツムギちゃん、アヤメちゃん、カスミちゃん (+マリモちゃん)。 ❖精霊たち(?)❖ シライちゃん (しらいっしー)、ウサギちゃん (兎田ぴょん)。 ❖神々❖ 下総国北部と常陸国南部の神々。香取の神、鹿島の神、筑波の神、牛島の神。 ❖魔物(?)❖ チョーシュー・リーキ、かっぱのキューちゃん、コスモ星丸、まさかどくん、なあにちゃん。

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

拝啓、無人島でスローライフはじめました

うみ
ファンタジー
病弱な青年ビャクヤは点滴を受けに病院にいたはず……だった。 突然、砂浜に転移した彼は混乱するものの、自分が健康体になっていることが分かる。 ここは絶海の孤島で、小屋と井戸があったが他には三冊の本と竹竿、寝そべるカピバラしかいなかった。 喰うに困らぬ採集と釣りの特性、ささやかな道具が手に入るデイリーガチャ、ちょっとしたものが自作できるクラフトの力を使い島で生活をしていくビャクヤ。 強烈なチートもなく、たった一人であるが、ビャクヤは無人島生活を満喫していた。 そんな折、釣りをしていると貝殻に紐を通した人工物を発見する。 自分だけじゃなく、他にも人間がいるかもしれない! と喜んだ彼だったが、貝殻は人魚のブラジャーだった。 地味ながらも着々と島での生活を整えていくのんびりとした物語。実は島に秘密があり――。 ※ざまあ展開、ストレス展開はありません。 ※全部で31話と短めで完結いたします。完結まで書けておりますので完結保障です。

処理中です...