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第2話 奴隷を買う

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 ブラッドは帰還後報奨を貰った。敵将を討った褒美だというのも有り、晴れて傷病軍人として退役を認められた。去勢されている為あまり意味を成さないが、総大将が約束した通り、一夫多妻権も与えられた。貴族や国に対して貢献の高い者に与えられるのだ。

 ブラッドは約10年振りに自由になったのだが、今は何もやる気が沸かなかった。

 一緒に崖を下り生き残った奴隷のうち、同じ出身国の4人も今回の恩赦により開放された。

 ブラッドには生活の基盤が必要だった。皆暫く休んでから故郷に戻るというが、ブラッドは故郷の者に不完全になった体を見せるのを良しとせず、王都に残る事にした。皆はブラッドが片手に慣れるまで数日は残って協力してくれる事になり、もしも故郷が壊滅していたらここに戻ると言っていた。大した手柄を挙げられなかったが、ブラットのお陰で開放されたのだ。ただ、ブラッド程の報奨はなかったが、当面暮らす為のお金と安い奴隷なら買える位は貰えたようだ。

 王都にて数日が経過し、なんとか着替えを一人で出来るようにはなったが、剣を振るのも一苦労だった。バランスが取れないのだ。また、その後仲間が出立してから一週間が経過していたが、仕事も中々見付からず、いつの間にか酒に溺れていた。

 そんなある日、町をぶらついていると奴隷の姿を見た。奴隷商の前を歩いていたのだ。奴隷でも買うかなとふらっと立ち寄ったが、偶々奴隷商の主が相手をした。

「ブラッド様、はじめまして。どのような奴隷をお探しで?」

「何故俺の名を?」

「此度の戦の最大の功労者だと聞いております。それにその身長と左手を無くされたと聞き及んでおりますので、すぐに分かりました。それと高額の報奨を得たとの噂もありますから。左手を喪った以上、暫くの間は身の回りの世話をする者を必要としている筈ですし、いずれ奴隷を買いに来ると思っておりました。ですが、私の予想よりも遅く、もう来ないのではないかと思い始めておりました」

「女の奴隷が欲しいのだが、いいのはいるか?」

「生憎性奴隷になりそうなのは全て売れてしまいました。戦の後は品薄になるのですよ。戦闘奴隷も今はおりません。今はお売り出来るのは子供や健康に難のある奴隷しかおりませんが、いかがされますか?」

「確かにこの体では何かと不便だ。身の回りの世話をして貰う奴隷が欲しい。冒険者活動をしたいからサポートが出来れば尚良いが、まずは見よう。そういう事なら男でも我慢するよ」

 ブラッドは奴隷商が申し訳なさそうに案内していた理由が分かった。腕がなかったり、ガリガリに痩せていたり、咳こんでいる者等、買う気の起こらない者ばかりだった。つまり売れ残りだ。

 そんな中、一人の男の子?いや、娘?が気になった。先程見たガリガリで今にも倒れそうな娘だ。ブラッドは多分女の子だと思うが、確定するまでは男の子として扱おう今の段階ではと思う。髪はボサボサで肌はカサカサだ。なぜ気になったのかはよく分からなかった。

「こいつは何故こんなに痩せているんだ?」

「はい。2日前に他の町の奴隷商から託されました。何でもこれからの人生に悲観し、食が細いのだとか」

「おい、お前、ここを出たいか?見ての通り俺は片手を喪っていて、身の回りの世話をする者が欲しくて買いに来た」

 その奴隷は頷いた。

 身長145cmと一般的な女性の身長程度しかない。金髪の普通の長さで、女ならショートカットと言われる長さだ。こいつ女物の服を着せれば女にしか見えないなとブラッドは思った。

「ここのところ喉を痛めておると聞いております。この者ですと金貨200枚になります」

「では頂こう。もう少しまともな服や履物は無いのか?こんな小汚い格好の者を連れ回す趣味はないぞ」

「はっ。ございますので用意致します。水洗いをしてきますので少々お待ち下さい」

「必要ない。お前こっちに来い」

 ブラッドは奴隷の頭に手をやるとクリーン魔法を使った。魔法を使える者で有れば誰でも使えるのだ。

「こ、これはお見それしました。魔道士様でしたか。なるほど。それで敵将を討てたのですな」

 奴隷商はこの奴隷に着させる服やらを部下に持って来るように指示をした。

 ブラッドは何処からともなく出したお金を払った。すると奴隷商は何やら道具を出し、奴隷の主の設定を変え、ブラッドを主人に変更した。

「お前の主人はこれでブラッド卿となった。見ての通り左手を戦で失っておる。ブラッド卿の生活を助けるのだぞ!」

「お前、名前は?」

「はい。この者はタミアと申します。今は喉を痛めておるので声が出ません」

「女みたいな名前だな」

 一瞬びくんとなった。

 タミアは一旦着替えや何やらの為別室に連れられていったが、ブラッドは奴隷の扱いについて説明を受けており、その後タミアを受け取り奴隷商を後にした。

 少し歩いてからタミアを路地に引っ張り、周りに誰もいない事を確認した。そして先日の戦で得た回復のスキルを使ったが、呼吸からどうやら喉が楽になったのだと理解した。

「口が聞けるようになった筈だ。試しに名を言ってみろ」

「あっはい。タミアです」

 ハスキーボイスだった。

「飯を食おう。ついてこい」

 頷くとブラッドは腹が減ったと言って、タミアを引き連れとりあえず目に付いた食堂に入るのであった。

ブラッドはこの娘の扱いをどうするかな?と暫し考えるのであった。
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