上 下
23 / 119
序章 私刑人誕生編

第23話 子供を拾った!

しおりを挟む
 この子達3人について、さてどうしたものか?と悩む。
 この年齢の子供を奴隷にするのは違法だ。
 しかも何故こんなところにいるのかよく分からないぞ!

 リザードマンの死体を収納し、マリニアのところに戻るも3人はまだ気絶しているままだ。

「周りを見てきたが、もういないな。この子らをそのままにする訳にも行かないから町まで連れて行こうと思う。時間が経つと別の魔物が来かねないから急がないとだ」

「子供とはいえ3人ですよ?馬車もなくどうやるんですか?」

 俺はロープを出した。

「1番大きい子を背負うから縛ってくれ」

 マリニアはきょとんとしながらも俺の指示に従った。
 3人の中で1番大きい子を背負い、マリニアが縛る。
 両手を塞いでしまうが俺は小さな子を2人抱っこした。

「これで何とか進む事が出来るな。マリニア、見ての通りだ。俺とこの子供達の命を預ける。流石に数で来られたらこの子供達を地面に放り出してでも戦うが、2、3匹程度なら頼むぞ!」

「う、うん。ボク頑張るよ!」

 マリニアに命を預ける形になるが、これが俺の考えの及ぶ範囲で今出来る最善だと思う。
 俺は己に身体強化のバフを掛け、小走りに街道を目指す。
 街道に出れば魔物と遭遇するリスクが減る。
 勿論脇道から出てきた所を偶々ばったりというのは避けられない。

 そして街道にもうすぐという所で、道の脇に屯するオークの群れ約15体と運悪く鉢合わせした。
 流石にまずい。
 俺1人いや、マリニアとだけだったらこの場で斬り伏せるまでだが、子供を3人背負ったりしながらでは守り切れる自信がない。

 取り敢えず咄嗟にアイスショットを放つ。
 俺の使える中級魔法の中で最速で放てるのがこれだ。

「数が多い。このまま子供等を守りながら戦うのは厳しいから取り敢えず逃げるぞ!」

 マリニアも顔を青ざめていた。
 2体を悶絶させるのが精一杯で、身体強化魔法を掛けまくり何とか距離を保ち走っている。

 しかし、3人を担いでいる俺ではなく、マリニアの息が上がってきた。
 やるしかないか・・・
 俺は戦う覚悟を決めた。

「マリニア、一旦結界を張るから息を整えたり子供等を頼む。俺が何とか倒すよ。全力で俺のところに来い!」

 マリニアはゼエゼエと息が辛そうで返事をする余裕がない。
 しかし最後の力を振り絞り俺に追い付いた。

 俺の場合、ギフトのお陰で得意属性は詠唱も不要だが、「結界発動!」とマリニアの為に発した。

 俺を中心に直径5m程の結界が発動し、先頭の1体を巻き込んだようだ。
 片脚を失い悶絶しているオークが1体、結界の内側にいた。
 マリニアが直ぐに仕留めてくれたが、倒した後に倒れ込んで息を整える。

 そう、結界の外にいるオークが結界に群がりビシバシと叩いているのが分かり、安堵したようだ。

「マリニア、5分で息を整えてくれ。それで結界を解除しないと俺が魔力切れを起こしてしまう」

 マリニアは頷く。
 そして、悪い事は重なるものだ。
 背負っている女の子が目覚めたのだ。

「えっ!な、な何これ!いやああああ!」

「こ、こら暴れるな!俺達は君達を保護したんだ。悪いが今はオークの群れに追われている。結界魔法で凌いでいるんだ。今降ろすから落ち着くんだ!良いね!?」

「えっ?あっはい!私・・・生きているの?」

 その子は周りを見たが、特にマリニアを見てホッとしたようだ。
 頼むからこれ以上問題は無しにしてくれよ!

 俺は顎でしゃくり、寝かせた子供達がいるのを知らせた。

「悪いが俺達が君達を見付けた時には既に君の他はこの2人しか生きていなく、何とか担いで逃げてきたんだ」

「そうですか・・・この子供達しか生き残れなかったのね」

「君達の事は今を生き延びたら話を聞く。気休めだろうが武器を渡すから、死にたくなかったらオークが来たら滅茶苦茶で構わないから振り回せ!」

「わ、分かりました」

 マリニアは息が整ったらしい。

「ランスタッド、ボクは何をすれば?」

「俺は結界を解除すると、魔法を使えるまで2、3秒程掛かるから魔法での攻撃が間に合わない。だから剣で行く。お前はライオットを発動しろ。詠唱が終わったタイミングで結界を解除するから即時にぶっ放せ!その後はこの子らを守れ!」

「分かったよ。じゃあ詠唱を始めるね」

 そうして蒼白になって震えている女の子を庇うようにオークに向きあい、マリニアの詠唱が終わるのを待つのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

【完結】王女様の暇つぶしに私を巻き込まないでください

むとうみつき
ファンタジー
暇を持て余した王女殿下が、自らの婚約者候補達にゲームの提案。 「勉強しか興味のない、あのガリ勉女を恋に落としなさい!」 それって私のことだよね?! そんな王女様の話しをうっかり聞いてしまっていた、ガリ勉女シェリル。 でもシェリルには必死で勉強する理由があって…。 長編です。 よろしくお願いします。 カクヨムにも投稿しています。

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

ザ・タワー 〜俺にしかできない魔石を鑑定する能力!魔石を使っての魔法&スキル付与!この力で最強を目指す〜

KeyBow
ファンタジー
 世界初のフルダイブ型のVRMMOゲームにダイブしたはずが、リアルの異世界に飛ばされた。  いきなり戦闘になるハードモードを選んでおり、襲われている商隊を助ける事に。  その世界はタワーがあり、そこは迷宮となっている。  富や名誉等を得る為に多くの冒険者がタワーに挑み散っていく。  そんなタワーに挑む主人公は、記憶を対価にチート能力をチョイスしていた。  その中の強化と鑑定がヤバかった。  鑑定で一部の魔石にはスキルや魔法を付与出来ると気が付くも、この世界の人は誰も知らないし、出来る者がいないが、俺にはそれが出来る!  強化でパラメータを上げ、多くのスキルを得る事によりこの世界での生きる道筋と、俺TUEEEを目指す。  タワーで裏切りに遭い、奴隷しか信じられなくなるのだが・・・

伯爵夫人のお気に入り

つくも茄子
ファンタジー
プライド伯爵令嬢、ユースティティアは僅か二歳で大病を患い入院を余儀なくされた。悲しみにくれる伯爵夫人は、遠縁の少女を娘代わりに可愛がっていた。 数年後、全快した娘が屋敷に戻ってきた時。 喜ぶ伯爵夫人。 伯爵夫人を慕う少女。 静観する伯爵。 三者三様の想いが交差する。 歪な家族の形。 「この家族ごっこはいつまで続けるおつもりですか?お父様」 「お人形遊びはいい加減卒業なさってください、お母様」 「家族?いいえ、貴方は他所の子です」 ユースティティアは、そんな家族の形に呆れていた。 「可愛いあの子は、伯爵夫人のお気に入り」から「伯爵夫人のお気に入り」にタイトルを変更します。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

処理中です...