上 下
5 / 8

2-2 そっち方面でも成長してしまった王子様。

しおりを挟む
「は、早かったね……」 
「………ああ。用事が早く終わって……なんだその服」

 口をひくつかせる俊に気のない返事をした後、クレイグがおもむろに近づいてくる。なぜかしかめ面をしている彼に思わず後ずさりするも、腕を掴まれた。

 受勲式にも着ていた王宮から支給された聖騎士の制服は、相変わらず赤面するほどクレイグに似合っている。
 異世界然としたクレイグを前にして、野暮ったいスーツを着ている自分がさらに居たたまれなくなった。

「こ、これは前の世界の服で、召喚されたときに着てたやつ。こないだシュバイツアーから返してもらって、暇つぶしに着てみただけで、コスプレとかじゃなくて、ただ懐かしいなって」

 クレイグの威圧感のためか、お母さんにエロ本が見つかった男子高校生並みに慌ててしまう。そんな俊を尻目に、クレイグの視線はスーツに固定されたままだ。

「えっと、早めに夕飯行く? すぐ着替えるし、少し待ってて……」

 クレイグに背中を向け、脱ごうとするも焦りのためかネクタイが上手くほどけない。二度目の「待って」を言う前に、背後から抱きすくめられた。

「な、何…っ! んっ…」

 後ろを向かされ、口をふさがれる。
 目を白黒させていると閉じたままだった口端に指を突っ込まれ、無理やり開いたそこに舌が入ってきた。

「っ、ん、っ……」

 奥に引っ込んでいた舌が引きだされ、互いのものが絡む。ぢゅ、と音を立てて吸われて背中があわたった。

 この感じには覚えがありすぎる。これは絶対にキスだけでは終わらない。

 一体どうしたのだろう。
 まさかのスーツフェチだとでもいうのか。などとクレイグの変貌ぶりにバカなことを考えていたら、予想どおりクレイグは口を解放すると、俊のワイシャツをスラックスから引き出し手を侵入させた。

 臍を通り、胸を撫でて敏感な突起を刺激する。
 姿見の真正面にいるせいで、後ろから襲われている姿をはっきりと見せつけられる。

「あ、っ…、夕飯に行くんじゃ」

 もっともな非難の言葉は途中で止まった。
 鏡の中の金の瞳と目が合う。俊の首筋を舌でなぞりながらこちらを見る視線は、ありありと熾烈な感情を宿している。情欲と、あと一つは……。

「面白れぇ形してんな」

 ネクタイのノットを難なく解いた長い指は、続けてワイシャツのボタンを上から順に外していく。
 白いシャツから肩が露出しクレイグはそこに薄い唇を寄せた。は、と濡れた吐息が素肌にかかり、一気に腰が重くなった。

「っあ! あ、やっ!」

 スラックスの上から一番敏感な場所を握られて、体の芯が痺れる。
 数回擦られただけでそこは完全に立ち上がってしまった。

 ぐ、と後ろから腰に押し付けられた硬い感覚でクレイグも同じ状態なことが分かった。

「ちょ、………っと待って! 先にお風呂に入らせて」

 汗をかいたままでは恥ずかしい。台詞に嘘はない。だがなんだか普段のクレイグらしくないし、一旦離れれば冷静になるだろうと提案した。

 期待どおりクレイグの動きが止まった。
 ほっとした次の瞬間、クレイグが、ふ、と息を吐いた。金色の柔らかい風が全身をめぐり、入浴後のようにどこもかしこもはすっきりしてしまった。

「これで良いだろ」

 目を丸くしていると、クレイグが得意げに目を眇めた。
 こちらの思惑など全てお見通しのようだった。

 しかも足の爪先から耳の裏まで、どこにも不快感が残っていないのだ。清めの術の発動条件を思い出した俊は、真っ赤になった。

「そうだった……クレイグにはこれがあったんだった……。って、待って…っん!」

 目論見が失敗に終わるも、後悔に浸らせてくれる気はないらしい。

 鏡に映る俊のシャツはもう全開で、クレイグの大きな手が無遠慮に肌の上を這っていく。俊が見ている前で、腰のベルトが解かれ直接性器に触れられる。
 ひときわ大きな声を上げて俊は目をつむった。

「ここで何されてるか見ながらすんのと、ベッドの上、どっちが良い?」
「っ――!」

 湿度を増した低い声にぞくりと背中が震えた。

 いつの間に言葉責めなんて覚えたのか。そんな悪態は自身の嬌声にもみ消された。
 直に刺激されている場所からぐちゃぐちゃと音が立って、視界を遮断した意味もなかった。

「あ、もう立ってられな……、あ、ンん!」

 スラックスと下穿きが床に落ち、後孔を指がなぞる。
 前に倒れ壁に埋め込まれた鏡に手をつくと、熱に浮かされた自分の顔が目に入る。後ろから覆いかぶさる聖騎士も。
 こんなの、見ていられない。

「っ……で」
「ん?」

 真っ赤になっている耳を甘噛みされ、催促される。俊は震えるまま、口を開いた。

「ベッドが良い……」
「っ、…了解」

 こく、と喉を鳴らしたクレイグが俊を抱き上げた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

祝福という名の厄介なモノがあるんですけど

野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。 愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。 それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。  ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。 イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?! □■ 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです! 完結しました。 応援していただきありがとうございます! □■ 第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

異世界転移して出会っためちゃくちゃ好きな男が全く手を出してこない

春野ひより
BL
前触れもなく異世界転移したトップアイドル、アオイ。 路頭に迷いかけたアオイを拾ったのは娼館のガメツイ女主人で、アオイは半ば強制的に男娼としてデビューすることに。しかし、絶対に抱かれたくないアオイは初めての客である美しい男に交渉する。 「――僕を見てほしいんです」 奇跡的に男に気に入られたアオイ。足繁く通う男。男はアオイに惜しみなく金を注ぎ、アオイは美しい男に恋をするが、男は「私は貴方のファンです」と言うばかりで頑としてアオイを抱かなくて――。 愛されるには理由が必要だと思っているし、理由が無くなれば捨てられて当然だと思っている受けが「それでも愛して欲しい」と手を伸ばせるようになるまでの話です。 金を使うことでしか愛を伝えられない不器用な人外×自分に付けられた値段でしか愛を実感できない不器用な青年

婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました

ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。 愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。 ***************** 「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。 ※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。 ※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。  評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。 ※小説家になろう様でも公開中です。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される

Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木) 読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!! 黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。 死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。 闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。 そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。 BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)… 連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。 拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。 Noah

処理中です...