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表裏シリーズ
生贄はいなかった【裏編】(約5分 男女不問1人読み)
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ジャンル【ミステリー】
配役 1名
語り手(不思議な雰囲気を持つ謎の人物。キャラ付け自由)
《概要》
ある村に伝わる不可解な話の解答編。
出題編にあたる【表編】から先にお読みください。
====================
○静かな場所(演者が自由に想像・設定してください)
「おや、あなたですか。また来てくれたんですね。やっぱり昨日の話の真相が気になりますか? それとも、それは建前で…本当は私に会いに来てくれたのかな? そうだったらとても嬉しいのですが」
「…ふふ、その顔はどっちなんでしょうね。まあ、どちらにしても今日は【裏編】をお聞かせする約束でしたので。ごゆっくり…はできないとして、束の間の時間だけ、この不可解な物語に御付き合いください」
「それでは始めましょう。『生贄はいなかった』。その真相のお話です」
村一番の美人だと言われたエミリーですが、そもそも『生贄は村一番の美人でなければならない』などという決まりはありませんでした。
ただ、何となくそういうものというイメージが村人達の中にあり、美しい順に選ばれてゆく、暗黙のルールのようなものが作られていたのでしょう。
つまりそれは、『生贄はエミリーでなければいけないわけではない』………『エミリーでなくてもよい』、そういうことです。
エミリーの母親の【シンシア】は、エミリーを村から逃がす計画を進めていました。
家族全員で逃げれば目立ってすぐに見つかってしまうでしょう。細身の女性一人がギリギリ通れる程の細い抜け道を選び、前日の夜に見事エミリーを逃がすことができたシンシアは、抜け道の痕跡を隠し、震えながら手を合わせ続けました。
『許してちょうだい。エミリーのためなのよ』
その言葉は、きっとエミリーの代わりに生贄に抜擢されるであろうアリスに向けたものでした。生贄は誰でもいいのですから、村人達は、労力をかけてエミリーを探し出すことよりも、2番目に美しいアリスに変更することを選ぶに決まっていますものね。
生贄として殺されたアリスは、深い谷底で何度も繰り返しシンシアの声を聴いていました。『エミリーのためなのよ、エミリーのためなのよ』……。
そして、偶像の悪魔はどこにもいませんでした。
アリスの死霊は20年の間怨念を燃やし続けました。
『エミリーのせいなのよ…エミリーのせいなのよ………………エミリーと……シンシアのせいなのよ』
20年後の同じ日、同じ時間。花を手向けに来た老婆に、谷底から細い女の手が伸ばされました。
長い怨念を晴らした死霊と入れ替わりに、谷底からは別の女性の声が聴かれるようになったのでした。
『許してちょうだい……エミリーのためなのよ…エミリーのためなのよ……』
「…はい。これが、昨日の不可解なお話の裏に隠された、もうひとつの物語でした。……いかがでしたか? 納得して頂けたのでしょうか?」
「その顔はどっちなんでしょう。……って、ふふ。さっきもこんなやり取りをしましたね。さて、それはそれとして。【裏編】も話し終えてしまいましたが、またいつか、あなたはここへ来てくれるのでしょうか?」
「約束はできない? いいんですよ。それはこちらも同じですから。……もしまたいつか、この場所のことをふと思い出して、あなたがふらっと立ち寄ってくれた時。その時たまたま私もここに居たら。………その時は、何の話をしましょうか?」
『裏編』終
配役 1名
語り手(不思議な雰囲気を持つ謎の人物。キャラ付け自由)
《概要》
ある村に伝わる不可解な話の解答編。
出題編にあたる【表編】から先にお読みください。
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○静かな場所(演者が自由に想像・設定してください)
「おや、あなたですか。また来てくれたんですね。やっぱり昨日の話の真相が気になりますか? それとも、それは建前で…本当は私に会いに来てくれたのかな? そうだったらとても嬉しいのですが」
「…ふふ、その顔はどっちなんでしょうね。まあ、どちらにしても今日は【裏編】をお聞かせする約束でしたので。ごゆっくり…はできないとして、束の間の時間だけ、この不可解な物語に御付き合いください」
「それでは始めましょう。『生贄はいなかった』。その真相のお話です」
村一番の美人だと言われたエミリーですが、そもそも『生贄は村一番の美人でなければならない』などという決まりはありませんでした。
ただ、何となくそういうものというイメージが村人達の中にあり、美しい順に選ばれてゆく、暗黙のルールのようなものが作られていたのでしょう。
つまりそれは、『生贄はエミリーでなければいけないわけではない』………『エミリーでなくてもよい』、そういうことです。
エミリーの母親の【シンシア】は、エミリーを村から逃がす計画を進めていました。
家族全員で逃げれば目立ってすぐに見つかってしまうでしょう。細身の女性一人がギリギリ通れる程の細い抜け道を選び、前日の夜に見事エミリーを逃がすことができたシンシアは、抜け道の痕跡を隠し、震えながら手を合わせ続けました。
『許してちょうだい。エミリーのためなのよ』
その言葉は、きっとエミリーの代わりに生贄に抜擢されるであろうアリスに向けたものでした。生贄は誰でもいいのですから、村人達は、労力をかけてエミリーを探し出すことよりも、2番目に美しいアリスに変更することを選ぶに決まっていますものね。
生贄として殺されたアリスは、深い谷底で何度も繰り返しシンシアの声を聴いていました。『エミリーのためなのよ、エミリーのためなのよ』……。
そして、偶像の悪魔はどこにもいませんでした。
アリスの死霊は20年の間怨念を燃やし続けました。
『エミリーのせいなのよ…エミリーのせいなのよ………………エミリーと……シンシアのせいなのよ』
20年後の同じ日、同じ時間。花を手向けに来た老婆に、谷底から細い女の手が伸ばされました。
長い怨念を晴らした死霊と入れ替わりに、谷底からは別の女性の声が聴かれるようになったのでした。
『許してちょうだい……エミリーのためなのよ…エミリーのためなのよ……』
「…はい。これが、昨日の不可解なお話の裏に隠された、もうひとつの物語でした。……いかがでしたか? 納得して頂けたのでしょうか?」
「その顔はどっちなんでしょう。……って、ふふ。さっきもこんなやり取りをしましたね。さて、それはそれとして。【裏編】も話し終えてしまいましたが、またいつか、あなたはここへ来てくれるのでしょうか?」
「約束はできない? いいんですよ。それはこちらも同じですから。……もしまたいつか、この場所のことをふと思い出して、あなたがふらっと立ち寄ってくれた時。その時たまたま私もここに居たら。………その時は、何の話をしましょうか?」
『裏編』終
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