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自由の魔獣召喚編
プリマの求めるモノ
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「もう……いいですかな?」
「え…ええ、許可しますわ」
「「「はぁ~~~~~」」」
勇者様―――リオン様が立ち去った後、私たちはその場に倒れ込みました。
「な……なんという圧力だ。かつて出会った勇者や魔物の中でも」
我が国最強の剣士、黒虎騎士団団長アンドリューは苦しそうな顔で言いました。
彼は私たち王国の中でも優秀な戦士です。魔族たちの軍勢を相手にしても怖じけることなく、先頭で戦うほどの勇敢さ。一国の軍隊を全滅させる力を持つような、魔物をも倒すほどの戦力。この二つを併せ持つ彼はまさしく王国最強です。彼は今までその勇敢さと戦闘能力で様々な功績と武勲を立ててきました。
そんな彼の力を以てしてもこの有様です。魔王軍団の将軍を前にしても果敢に、そして互角に戦ったはずの彼が。そんな彼がまるで父親に叱られた子供のように縮こまってしまいました。ただ威圧されただけなのに……!
「な……なんなんですかあの化物は!?」
体育座りして震えるオリヴィア。
普段は毅然としている彼女も同様です。民や兵士たちの前では凛々しい態度を取る彼女でさえ。……まあ、この子の素は大体こんな感じですね。
しかしあの凄み―――覇気は一体何だったのでしょうか? 今でも震えが止まりません。
「あ、あの勇者は何者なのでしょうか?」
「……分かりませぬ」
苦々しそうな顔でアンドリューは続ける。
「あの勇者様は俺のレベルを大きく凌駕しております。最低でも……魔王幹部クラスは優に超えているかと」
「魔王幹部!一人でも小国を簡単に滅ぼす化物と同格というの!?」
「最低でもそのレベルです。最悪、魔王をも超える化物かと……」
「そ、そんな……。あんなん無礼者が……」
ワナワナと震えるオリヴィア。しかし彼女はアンドリューの言葉を否定することはありませんでした。
あの人の発した圧力はそれほど強大なものでした。まるで巨大な獣の口の中に放り込まれたかのような、その顎門を下ろして私たちをすり潰し、喉のお奥に広がる闇へと放り込めるような。そんな恐怖です。
あの感覚はしばらく忘れるのは無理そうです。まだ全身が震え、寒気が残っています。絶対に逃れない天敵に遭遇したネズミはこんな感じなのでしょうか?
「だ……だが! 所詮奴は人だ!ならば何かしらの手段で従えることは出来るはずだ!
なあに、所詮は暴れることしか頭にない異国の猿だ! ならばやりようによっては我らの支配下に……」
「それは無理でしょう。あの勇者には町の端から端を一瞬で移動できる翼があります。無理やり従えようとすれば他国に亡命、最悪は魔族に寝返ります。勇者の意に背くような行いは最小限にするべきでしょう」
「……クソッ!結局我らはあの獣みたいな男のご機嫌を取るしかないのか!?」
アンドリューの意見を聞いた途端、その場を沈黙が支配しました。
二人とも本当に重苦しそうな顔をしてます。これからどうしようか、どうすればあの勇者さまをコントロール出来るのか。そんな面持ちでした。
「いいじゃありませんかそんなこと」
私がそう言いますと、二人共ぎょっとした顔でこちらを振り向きました。
「私たちが求めるものは人徳ある指導者でも敬虔な信者でもじゃありません。魔王と魔王の率いる魔族軍団を一掃する『暴力』です」
そう、私たちが勇者に求めるのはただ一つ、戦う力のみです。それ以外はついでのようなもの。出来れば欲しいといった程度なのです。だって勇者は戦って勝たなくては意味がないじゃないですか。
勇者は戦ってこそ意味があるのです。戦って魔族を殲滅して、戦って魔物を撃退して……そしていつかは魔王を!!
「勇者の最大目標は敵の殲滅。暴力の入れ物に過ぎないのですよ」
そう、あの力ならばいつか魔王を倒せる。あの力を使えるなら、どんな代償を払ってでも手に入れる価値があります。
いえ、手に入れるなんて贅沢ですね。ほんの少しだけ、ちょっとの間だけお力を貸して頂ければそれでいいのです。それだけであいつを……魔王を殺せます!!
「……‥たとえこの国を犠牲にしてもね」
周囲には聞こえないような小さい声で、私はそっと呟きました。
「え…ええ、許可しますわ」
「「「はぁ~~~~~」」」
勇者様―――リオン様が立ち去った後、私たちはその場に倒れ込みました。
「な……なんという圧力だ。かつて出会った勇者や魔物の中でも」
我が国最強の剣士、黒虎騎士団団長アンドリューは苦しそうな顔で言いました。
彼は私たち王国の中でも優秀な戦士です。魔族たちの軍勢を相手にしても怖じけることなく、先頭で戦うほどの勇敢さ。一国の軍隊を全滅させる力を持つような、魔物をも倒すほどの戦力。この二つを併せ持つ彼はまさしく王国最強です。彼は今までその勇敢さと戦闘能力で様々な功績と武勲を立ててきました。
そんな彼の力を以てしてもこの有様です。魔王軍団の将軍を前にしても果敢に、そして互角に戦ったはずの彼が。そんな彼がまるで父親に叱られた子供のように縮こまってしまいました。ただ威圧されただけなのに……!
「な……なんなんですかあの化物は!?」
体育座りして震えるオリヴィア。
普段は毅然としている彼女も同様です。民や兵士たちの前では凛々しい態度を取る彼女でさえ。……まあ、この子の素は大体こんな感じですね。
しかしあの凄み―――覇気は一体何だったのでしょうか? 今でも震えが止まりません。
「あ、あの勇者は何者なのでしょうか?」
「……分かりませぬ」
苦々しそうな顔でアンドリューは続ける。
「あの勇者様は俺のレベルを大きく凌駕しております。最低でも……魔王幹部クラスは優に超えているかと」
「魔王幹部!一人でも小国を簡単に滅ぼす化物と同格というの!?」
「最低でもそのレベルです。最悪、魔王をも超える化物かと……」
「そ、そんな……。あんなん無礼者が……」
ワナワナと震えるオリヴィア。しかし彼女はアンドリューの言葉を否定することはありませんでした。
あの人の発した圧力はそれほど強大なものでした。まるで巨大な獣の口の中に放り込まれたかのような、その顎門を下ろして私たちをすり潰し、喉のお奥に広がる闇へと放り込めるような。そんな恐怖です。
あの感覚はしばらく忘れるのは無理そうです。まだ全身が震え、寒気が残っています。絶対に逃れない天敵に遭遇したネズミはこんな感じなのでしょうか?
「だ……だが! 所詮奴は人だ!ならば何かしらの手段で従えることは出来るはずだ!
なあに、所詮は暴れることしか頭にない異国の猿だ! ならばやりようによっては我らの支配下に……」
「それは無理でしょう。あの勇者には町の端から端を一瞬で移動できる翼があります。無理やり従えようとすれば他国に亡命、最悪は魔族に寝返ります。勇者の意に背くような行いは最小限にするべきでしょう」
「……クソッ!結局我らはあの獣みたいな男のご機嫌を取るしかないのか!?」
アンドリューの意見を聞いた途端、その場を沈黙が支配しました。
二人とも本当に重苦しそうな顔をしてます。これからどうしようか、どうすればあの勇者さまをコントロール出来るのか。そんな面持ちでした。
「いいじゃありませんかそんなこと」
私がそう言いますと、二人共ぎょっとした顔でこちらを振り向きました。
「私たちが求めるものは人徳ある指導者でも敬虔な信者でもじゃありません。魔王と魔王の率いる魔族軍団を一掃する『暴力』です」
そう、私たちが勇者に求めるのはただ一つ、戦う力のみです。それ以外はついでのようなもの。出来れば欲しいといった程度なのです。だって勇者は戦って勝たなくては意味がないじゃないですか。
勇者は戦ってこそ意味があるのです。戦って魔族を殲滅して、戦って魔物を撃退して……そしていつかは魔王を!!
「勇者の最大目標は敵の殲滅。暴力の入れ物に過ぎないのですよ」
そう、あの力ならばいつか魔王を倒せる。あの力を使えるなら、どんな代償を払ってでも手に入れる価値があります。
いえ、手に入れるなんて贅沢ですね。ほんの少しだけ、ちょっとの間だけお力を貸して頂ければそれでいいのです。それだけであいつを……魔王を殺せます!!
「……‥たとえこの国を犠牲にしてもね」
周囲には聞こえないような小さい声で、私はそっと呟きました。
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