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自由の魔獣召喚編

初戦闘ならぬ初蹂躙

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「報告します!町に突如魔物が攻めてきました!」
「な……なんですって!!?」
「なんだと!?数はどれぐらいだ!?」

 兵士の報告によって部屋中は大慌て。全員アタフタして騒いでいた。
 まったく、敵がいきなり攻めてくるのは当然だろうが。今から貴方を狩りますって宣言してくれる捕食者がどこにいる?
 だから攻められないように、そして攻められてもすぐに反撃出来るよう準備をするもんだろうが。そうやって準備をしていれば落ち着いて対処出来るはずだ。
 なのに慌てているということはその準備が出来てないということ。……このままじゃ先が思いやられるな。

 魔力探知で数を探ってみる。大体大体100匹ほどか。種類までは分からないがどれも雑魚ばかり。こりゃくしゃみぐらいの力で片づけられるな。

「ゆ……勇者様!早速ですがあなた様の力をお貸し下さい!」
「ああ、早速か。いいぜ」

 ちょうどいい機会だ。どこまで俺の力がこの世界で通じるか調べてみるか。
 そして、出来るなら俺の心が躍るような強敵に巡り合えることを……。
 ま、どっちにしても暴れることに変わりはないんだけどな。

「ありがとうございます!では案内を……」
「いらねえ。グズグズしてたら犠牲が出るだろ」
「あ、勇者様そっちは窓です!」

 姫さまの話を無視して割った窓から飛び降りる。
 お前らみたいなトロい足に合わせて歩いてたら日が暮れる。俺はさっさと暴れてえんだよ!

虹煌翼プライド・ウィング!」

 背中から翼を生やして空を飛ぶ。風を切り、下の町が通りすぎる瞬間は、まるで時を操ってるかのようだ。
 くぅ~、空を飛ぶなんて久々だぜ! 

 スピードを抑えて敵を探る。マッハ超えなんて楽勝な俺の飛行能力ではこの町なんてすぐに過ぎ去ってしまう。なので大分抑える必要があるのだ。
 それだけじゃない。あまり速く飛びすぎるとソニックブームで周囲の物を吹き飛ばしてしまう。これは走ってる時も同じだ。いや、走る時はそこまで速くなくても障害物をぶっ飛ばしてしまう。

 窮屈だ。
 こんな思いは魔界じゃしたことがねえ。若獅子だった頃なら苛立ってすぐにいつも通りの戦いをしていたであろう。あの時の俺は短気だからな。……今でもそうだけど。
 けどまあいい、何事も経験だ。偶にはこんな変わった戦いも悪くねえだろう。


 感覚を少し集中させて敵を探る。
 全員ゴブリンだ。ファンタジー小説でお馴染みの人型魔物。魔界では既に絶滅した魔物だ。
 ゴブリン共は一か所に固まって攻撃しており、略奪を始めている。……ククッ。いい的だぜ。

魔獣斬牙カッターファング!」
「「「「ぎゃああああああああああああああああ!!!!?」」」

 俺の腹部にある牙を模した紋章から無数の斬撃波が吐き出される。牙のような斬撃波は敵を切り裂き、貫き、ミンチに変えた。
 へえ、この体ではこんな風に攻撃するんだ。前の身体じゃ口からだったが、この肉体はタトゥーがそういった役割を果たしてくれるようだ。……面白いな。

 だが大分威力が落ちたな。肉体が変わったから何かしらの変化があると思うのだが、どうにも感覚が安定しない。これは少し訓練がいるな。

 それにしてもこの程度でもう半数以上が死んだぜ。周囲を傷つけないように、けっこう手を抜いてやった攻撃なんだけどな。思ってた以上に敵のレベルは低いらしい。

「な……なんだ!?」
「あそこになにか飛んでるぞ!」
「なんだあれは!?人間か!?」

 お仲間が殺されてからあいつらはやっと俺の存在に気付いた。
 間抜けな連中だ。ここまで大体30mぐらいしか離れてないのに攻撃されてやっと気づくなんて。どうやら強さだけじゃなく感覚のレベルも低いらしい。

魔獣斬牙カッターファング!」
「「「「ぎゃああああああああああああああああ!!!!?」」」

 もう一度カッターファングをお見舞いする。今度も敵は面白い具合に当たって細切れになった。
 おいおい、同じ攻撃に二度も食らうなよ。なんか工夫あるだろ普通は。
 
「おいおい、折角ヒント与えてやってるんだからもっと頭使えよ」
「うるせえ卑怯モンが!何がヒントだ!?」

 おいおい、コイツらマジで気付いてねえのか?

 魔獣斬牙カッターファングは前方にしか飛ばせない。だから放たれる直前に俺のタトゥーが向いてない方向に移動すればよけられるのだ。
 銃だってそうだ。どんなに性能の高い銃でも銃口が向いていなくては意味がない。だからまずは銃口が向かないようにするのだ。

 だがコイツらはそんな単純なことにも気づいてない。そんな頭でよく生きてこられたな。

「く…クソー!降りてきやがれ!」
「飛ぶなんて卑怯だ!降りて俺らになぶり殺しにされろ!」

 おいおい、コイツらマジで馬鹿か? 降りろって言われて降りる馬鹿がどこにいる?
 今の俺は限りなく有利な状況だ。なのになぜ自分からそれを手放す? もしするとしたら、ソイツが馬鹿か遊んでるかのどっちかだ。
 というか、そんな無駄なことするくらいなら頭を使えよ。布をスリングみたいに使って物投げるなり、建物内に隠れてゲリラ戦に持ち込むなり、武器を持って応戦するなり。そんなことも思いつかないほどの愚図なのか?

 まあいい。群れる雑魚にはこの技だ!

虹斬羽刃ウィングスラッシャー!」

 鬱陶しくなったので全方向から羽の手裏剣をまき散らす。
 ほとんど無差別攻撃なので町中ではあまり使いたくないのだが、馬鹿どもは密集しているのでその部分だけを攻撃すればいい。

「「「「ぎゃああああああああああああああああ!!!!?」」」

 虹色の刃が馬鹿を貫き、ズタズタに変える。威力はカッターファングよりも低いのだが、全方向に攻撃出来るこの技はけっこう重用している。ま、こんな雑魚相手じゃ別に威力なんて関係ねえけどな。 

「く……クソ!なら人質を使ってやる!」

 おや、少しは頭使えるじゃないか。でも一番最初に人質が出るなんて雑魚の発想だな。もっと良くてスマートな方法あるだろうに。 

「させねえよ」
「なに!?」

 ガキに手を掲げて術を発動させる。
 地中から巨大な顎が現れ、ガキとその家族を飲み込むような形で敵の攻撃を防いだ。
 魔獣の城壁牙シェルター・ファング。俺の数少ない防御用の術だ。この世界の魔物の強さは分からないが、俺の世界じゃ主神ゼウスの雷霆も弾いた強度だったぞ。まあさっきのはそんなに力込めてねえからそれほど頑丈ではないが、それでも雑魚の攻撃相手じゃ傷一つ付かねえぜ。

 ほかにも一般人に魔獣の城壁牙シェルター・ファングをかけて守る。これでもう人質にするなんて馬鹿な真似はできないはずだ。

「く…クソが!卑怯だぞ!」
「人質取ろうとしたお前らが言うな!」

 どんだけコイツら頭悪すぎだろ。ブーメランにも程があるだろうが。

 けどもう遊びはもう終いだ。そろそろ真面目に吹き飛ばすか。
 町の人は魔獣の城壁牙シェルター・ファング。で保護している。この中なら巻き添えを食うことはない。

 腕の神経を直列に変える。筋肉細胞によって発電された電気を一箇所に集め、一気に放った。

闇穿殲光ターミネーション・サンダー!」
「「「「ぎゃああああああああああああああああ!!!!?」」」

 両手の先から、巨大な紫の荷電粒子砲が発射された。周囲の敵を一気に薙ぎ払い、その膨大な熱量で焼き尽くす。
 ゴブリンの死体は電熱により一瞬で火葬される。その電気によって一部の建物に引火、電撃の勢いによって破壊された。
 一応風で消火したがそれでも燃えたり攻撃で吹っ飛んだ家々が目に映る。こりゃ修復作業が大変だな。

「まだだ……。まだ暴れ足りねえ! 」

 けど遊んでばかりいられねえ。今の俺には仕事があるんだ。遊ぶのはお仕事が終わってからだ。
 なあに、こんな雑魚共すぐに片づけられる。こんなの、俺が子ライオン時代でも狩れる雑魚ばかりじゃないか。

「じゃ、次はメインと行こうか!」

 翼を広げて、より獲物の多い地点へと向かった。
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