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自由の魔獣召喚編

ここから出してくれ!

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 深い深い闇の中。光一つない暗闇の奥底に、ひっそりと佇む牢屋があった。
 牢屋は厳重に鍵をかけられ、幾重にも鍵と鎖をかけられたそれは、如何なる力を以てしても破壊は不可能に思えた。

 隙間から様子を覗く。そこには、一匹の獣が鎖によって幾重にも雁字搦めに封じられていた。

 獣を縛る鎖は黄金に輝いていた。まるで太陽の光を鎖に変えたかのような煌き。どんな黄金でもその前では金属ゴミ同然であった。

「グルルル……」

 唸る獣。
 黄金に輝く体毛、七色に煌く翼、宝刀のような角。
 美しい獣だ。おとぎ話や神話にでも出てくるような、一匹のライオンだった。

 その風貌はまさしく獣の王。どんな神獣を用意してもその獣の美しさには勝てないであろう。牢獄に監禁され、鎖によって雁字搦めにされた今の姿でもそれは変わらない。むしろ、背徳的な美しさがそこにあった。

「クソッ。なんで転生してまでこんな不自由な生活いなくちゃいけねえんだよ?」

 そして、彼は転生者でもあった。





「グルルル……」
 
 牢獄の中、俺はストレスを発散させるかのように唸った。 

 転生して早数百年。俺は獅子の魔物として転生した。
 俺には前世のニートとしての記憶があり、その影響か一族の中では飛び抜けて強く、そして他者とは違う思考回路をしていた。

 この世界の獅子も前世のライオン同様に社会性で全員ほぼメス、種付用のオスが普段ニートとして生息する。だから俺もそれに倣ってオスライオンとして生きようとした。



 だが俺にはその生き方は合っていなかった



 ライオンの魔物になったおかげか、俺はすぐ頭に血が昇るような、すぐ衝動に飲み込まれるようになってしまった。
 前世の俺は決して暴力的な男ではなかった。争いや対立などから逃げるような、自分のやりたいことも言いたいことも主張出来ない臆病なクソ野郎だった。だから前世では社会の荒波に耐え切れず押し流され、引きこもっていた。

 だが力を得て増長したのか、元からそういう種族か、それとも両方か。この身体に転生した俺は衝動のままに生きた。

 倒して倒して倒して。気に入らない奴は全員ボコってやった。
 俺の邪魔をする奴、気に入らない奴、ムカつく奴は全員ぶっ殺してやった。

 時には俺よりも強い奴もいた。俺より賢い奴もいた。罠に嵌めて追い詰めた奴もいたし、複数でリンチを受けたこともあった。
 だが俺は勝った。どんなに追い詰められても、ボコられても俺は勝つことが出来た。そしてその度に俺は強くなっていった。

 戦って戦って戦って。俺に歯向かう強者や賢者を倒し、気が付けば俺は魔獣帝だと美獣公だの獣の魔王だのと呼ばれるようになった。そう、つい最近までは。


 今から百数年ほど前。神と名乗る存在が俺たち魔物に戦争を吹っかけてきた。
 ゼウスやアテナなどのメジャーな敵からアレスなどのマイナーな敵まで。様々な神が俺たち魔物に向かってきた。

 そして俺たちは勝った。百年もの長い戦争を続け、俺は主神ゼウスの首を討ち取った。
 だが、ゼウスは俺に殺される瞬間、奴は自身の身体と精神を鎖に変えて俺を縛りやがった。俺を地下深くまで突き落とし、この部屋に閉じ込めやがった。
 同じように封印された同居人がいる。お隣さんのデカイ魚はオーディンに、また隣のドラゴンはアテナに封印されている。

「……ああ、あと何年ここにいればいいんだ?」

 封印されてから何も食ってない。
 いや、それは問題ない。時の止まったこの空間内では疲労も空腹も感じないのだから。

 俺を苦しめるのが退屈感。戦えないという苦痛だ。
 敵が欲しい。俺に自分という認識を、生きているという実感をもたらしてくれる相手を。
 いや、この際戦いでなくてもいい。誰か俺に……俺に!!

 俺の願いが届いたのか、頭上に突如魔法陣のようなものが現れた。

「これは……転移魔法か!?」

 転移魔法。名前のとおり対象を転移させるための魔法。移動用として自分に使うこともあれば、対象を転移させて自分に優位なフィールドに引きずり込むためにも使われる。

 魔法陣は俺を吸い込んで転移させようとする。抵抗することは出来るが、俺は敢えて魔法陣の引力に従った。
 もしかしたら罠かもしれないが、その時は全員ぶっとばすだけである。俺にはその力があるのだから。

 けどもしかしたら……もしかしたら……!

「俺に……俺を実感させてくれ!!」

 魔法陣に突撃する。トンネルのように長い通行路を飛び、出口らしき門へと向かった。

 俺は門を乱暴に開ける。
 いきなりこの俺を了承もなしに転移させようとしたのだ。満足させる覚悟はあるんだな!!











「い、偉大なる魔の勇者様よ!こ、この私を生贄として捧げます!ですから、この国をお救いください!!」
「…………は?」
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