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狼少女編
近所の森を調査します
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妖魔の森。俺の近所の魔境である。普段は父さんが雇っている元冒険者の使用人が定期的に見回りに向かうのが、簡単に見るだけで終わりなのだ。詳しい調査はまずしない。
だから俺は魔境に入り放題なのだ。なにせ自分から侵入しようとするバカは俺ぐらいだろうし、町の人々はここを恐れて誰も入ろうとしない。警戒するだけ無駄なのだ。
この森に生息しているモンスターは主に下級のモンスター。ビッグビーという50cmほどのデカイ蜂やゴブリンだ。一番強いモンスターでもトロールという初心者と中級者の間の中途半端な魔境だ。
とまあ、ここは他の魔境と比べてそれほど危険も価値もないのだ。だからこうして探しても意味など特にないのだが……。
「………これはどういうことだ?」
だが、今回ばかりは違った。この妖魔の森に本来は存在しないはずの種族―――ワーウルフ族とラミア族がいたのだ。。
ラミア。上半身は美女で下半身は蛇の上級魔物である。主な生息地は砂漠の魔境とされているが、奥深くに生息するためその生態は謎に包まれているという。
そんな激レア魔物が何故こんな平凡な魔境にいる?気になった俺は目と耳に魔力を集中させてラミアを観察する。
『誰か助けて!!』
その声を聞いた途端、俺の身体は勝手に動いた。
足に魔力を込めて敏捷性を増加。根や石が邪魔をする悪路をものとしない速度で木々の間をくぐり抜け、助けを求めるラミアへと向かった。
声のしたラミアを裸眼で確認出来る距離まで接近した。
俺は迷わず投擲用の短剣を投げる。短剣は蛇の化物とラミアの少女の間にある岩に刺さった。
いきなり倒すのはまずい。もしかしたらただの喧嘩をしてるだけかもしれないからだ。
けどあんな声聞いて黙ってるわけにはいかない。俺は腹の底から大声をだした。
「貴様!こんなとこで何をしてる!?」
「に……人間だと!? こんな辺境の魔境にか!?」
「俺の質問に答えろ!でなくては……」
剣をちらつかせながら言う。だが狼男は鼻で笑って俺に向かってきた。
「フン! 人間のガキが粋がるな! 人間風情がに勝てるわけがないだろ!!」
奴はそう言って腰から剣を引き抜いて俺に襲いかかった。
「んな口叩くのは俺に勝ってからにしな」
「なめるな人間風情が!」
狼男は俺に向かって紫色の煙を吐いた。おそらく毒の息であろう。それは悪臭を放ちながら俺を包み込もうとした。
俺は咄嗟に毒の耐性を強化魔法で上げる。おかげで俺は毒に満たされた空気の中でも活動できるようになった。
「ば……馬鹿な!? 我が毒が効かないだと!?」
ピンピンした様子で霧から出た俺に仰天する狼男。そのせいで防御のタイミングが遅れた。
加えて毒の霧が煙幕になったおかげか、俺の攻撃に見えなかったらしい。鞘に納めた剣でナーガの鼻筋をホームランでも打つかのようにスイングした。。
「ぐうぅあ!!」
鼻から血を流しながら倒れる狼男。俺は追撃をかけようと剣を振りかざそうとする。
「……ん?なんだ、もう終わりか」
しかし、敵の反応がなかったので攻撃を中断。倒れている狼男に近づき、剣でツンツン付いてみた。
反応はない。どうやら本当に気絶したらしい。
「……あ、あっけないな」
鞘を腰に納めてラミアの少女に振り向く。しかし、そこには誰もいなかった。
「………仕方ないか」
せっかくの手がかりを見逃すのは癪だが、逃げてしまったものは仕方ない。
俺は森の調査をやめて家に戻った。
だから俺は魔境に入り放題なのだ。なにせ自分から侵入しようとするバカは俺ぐらいだろうし、町の人々はここを恐れて誰も入ろうとしない。警戒するだけ無駄なのだ。
この森に生息しているモンスターは主に下級のモンスター。ビッグビーという50cmほどのデカイ蜂やゴブリンだ。一番強いモンスターでもトロールという初心者と中級者の間の中途半端な魔境だ。
とまあ、ここは他の魔境と比べてそれほど危険も価値もないのだ。だからこうして探しても意味など特にないのだが……。
「………これはどういうことだ?」
だが、今回ばかりは違った。この妖魔の森に本来は存在しないはずの種族―――ワーウルフ族とラミア族がいたのだ。。
ラミア。上半身は美女で下半身は蛇の上級魔物である。主な生息地は砂漠の魔境とされているが、奥深くに生息するためその生態は謎に包まれているという。
そんな激レア魔物が何故こんな平凡な魔境にいる?気になった俺は目と耳に魔力を集中させてラミアを観察する。
『誰か助けて!!』
その声を聞いた途端、俺の身体は勝手に動いた。
足に魔力を込めて敏捷性を増加。根や石が邪魔をする悪路をものとしない速度で木々の間をくぐり抜け、助けを求めるラミアへと向かった。
声のしたラミアを裸眼で確認出来る距離まで接近した。
俺は迷わず投擲用の短剣を投げる。短剣は蛇の化物とラミアの少女の間にある岩に刺さった。
いきなり倒すのはまずい。もしかしたらただの喧嘩をしてるだけかもしれないからだ。
けどあんな声聞いて黙ってるわけにはいかない。俺は腹の底から大声をだした。
「貴様!こんなとこで何をしてる!?」
「に……人間だと!? こんな辺境の魔境にか!?」
「俺の質問に答えろ!でなくては……」
剣をちらつかせながら言う。だが狼男は鼻で笑って俺に向かってきた。
「フン! 人間のガキが粋がるな! 人間風情がに勝てるわけがないだろ!!」
奴はそう言って腰から剣を引き抜いて俺に襲いかかった。
「んな口叩くのは俺に勝ってからにしな」
「なめるな人間風情が!」
狼男は俺に向かって紫色の煙を吐いた。おそらく毒の息であろう。それは悪臭を放ちながら俺を包み込もうとした。
俺は咄嗟に毒の耐性を強化魔法で上げる。おかげで俺は毒に満たされた空気の中でも活動できるようになった。
「ば……馬鹿な!? 我が毒が効かないだと!?」
ピンピンした様子で霧から出た俺に仰天する狼男。そのせいで防御のタイミングが遅れた。
加えて毒の霧が煙幕になったおかげか、俺の攻撃に見えなかったらしい。鞘に納めた剣でナーガの鼻筋をホームランでも打つかのようにスイングした。。
「ぐうぅあ!!」
鼻から血を流しながら倒れる狼男。俺は追撃をかけようと剣を振りかざそうとする。
「……ん?なんだ、もう終わりか」
しかし、敵の反応がなかったので攻撃を中断。倒れている狼男に近づき、剣でツンツン付いてみた。
反応はない。どうやら本当に気絶したらしい。
「……あ、あっけないな」
鞘を腰に納めてラミアの少女に振り向く。しかし、そこには誰もいなかった。
「………仕方ないか」
せっかくの手がかりを見逃すのは癪だが、逃げてしまったものは仕方ない。
俺は森の調査をやめて家に戻った。
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