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幼少編

読心術使えるのか??

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『いやはや、読心術の使い手がまだいようとは思いもしなかった。やはり長生きはするものだな』

 あの後、俺は黒王号改め、シュヴァルツェスに拘束された。
 俺はふかふかの草の上で俺は座り、シュヴァルツェスは横になっている。なんかいつでも蹴りが飛んできそうなのが怖い。

『某がヤマトと共に戦って早三十年、本当にいろんなことがあった。そしてその息子が読心を使えようとは。これもまた運命か』
「ん?あんた、父さんの愛馬なのか!?」
『然り。某はヤマトの愛馬、シュバルツェスである』

 本日二度目の驚きである。まさか父さんがこんな黒王号みたいなユニコーンに乗っていたとは。……いや、あの巨体から見ると案外似合うかも。
 家では母さんの尻に敷かれ、子供の前では親バカな面をみせる父さんがこんなご立派様と共に戦場を駆け抜けるなんて…‥。少し信じられない。

『大体考えていることが読めるぞ。あの親バカで恐妻家の父が本当に吾輩を乗りこなせるのかとな』
「げっ!? まさかそっちからもわかるのか!?」
『いや、某はただ貴殿の思ってそうなことを言っただけだ。某からは貴殿の心が読めん』

 そうか、それはよかった。もし失礼なこと考えたら蹴り殺されかねないからな。
 いや、話しているあたり落ち着きがあるのだが、どうもこの見た目が……。

『そもそも貴殿の読心術は不完全だ。動物などの単純な感情をなんとなく知る程度、或いは魔物の伝えようとする意思を読み取る程度であろう?』
「あ、たしかに」
『やはりな。心を読む術は習得が難しい。心を読まれていい気のする者などいないのだから当然であろう』

 たしかに。俺も感情を大体分かってもらえるのはいいのだが、考えていることを読まれるのはイヤだ。俺なら近づこうとすらしないであろう。

「じゃあなんで感情は曖昧だけど読めるんだ?」
『それは隠したり拒絶する意思がないからであろう。知って欲しいという意思があれば読みやすくなると聞いたことがある。話術で相手の心を開かせたり、読心術の練度を上げれば話は別だが』

 なるほど。つまり拒絶というロックがあるから読めないのか。しかし逆を言えばそのロックさえ解除できれば読める。
 ロックを解除するためには拒絶という鍵を相手から開けてもらったり、術の練度というピッキング技術を上げる必要があると。

『思考は読めずとも、相手の感情を理解できるだけで出来ることは多いであろう。戦闘では苛立ちや不快感などで敵のペースを把握したり弱点を探り、商売などでは感情と言動の違いを認識することで嘘かどうかを見抜くことも出来る。未熟でも使える範囲は多岐に渡る。
 或いは逆に自身の思考を相手に伝えることでテレパシーのように使うことも可能だ。訓練は必要だが思考を読むよりは容易いであろう』
「……なるほど」

 たしかにそのとおりだ。今のままではただの察しの良い人という程度だが、それでも使える範囲は広い。もし使いこなすことが出来れば様々な分野で活用出来るであろう。

『読心術を極めることで貴殿は絶大な力を得られるであろう。す全ての者の思考を読み取り、どんな行動でも予知が可能だ。更に相に自身の思考を伝えることでどんな状況でも指揮することも可能だ。
 されど用心せよ。大きすぎる力は不釣り合いの者に牙を剥く。もし貴殿が王の器でないのならば貴殿は破滅する』
「………」

 そうだ。力とは道具や権利ではあるが、決して玩具ではないのだ。
 俺は転生することで選ばれた人間だと勘違いしていたのかもしれない。俺は他の人間とは違うと。俺には将来が約束されていると。まるで何かの主人公になったつもりでいた。
 だがそんな保証がどこにある? たしかに特別な力を手に入れたかもしえないがそれだけだ。俺は決して将来を約束されたわけではないのだ。

 気を引き締めなければならない。ドラゴンナイトとなるにはそんな弛んだ気持ちでは決してなれない。

「ライト~。そろそろ帰るわよ~!」

 姉が俺を呼ぶ声が聞こえた。

『もうそんな時間か。……ヤマトの息子ライトよ。貴殿が父を超えるような男になることを期待しているぞ』
「…‥ああ!」

 馬小屋から出て姉へと駆け寄る。
 俺はドラゴンナイトになってみせる!














「ライトちゃ~ん。ごはんよ~。起きなさ~い」
「は~い」

 翌日、俺は母さんによって起こされて食堂に向かった。
 今日の献立はスクランブルエッグに白パン、あと簡単なサラダとベーコンだ。
 塩のみで味付けされた卵と肉にドレッシングのかかったサラダ。質素な味だからこそ素材の味がうまく自己主張している。
 白パンも美味い。柔らかくて食べやすく、他の飯と組み合わせることで更に引き立てていた。

 飯を食いながら俺は読心を使ってみる。
 感じるのは美味いという喜び。楽しそうな感覚が俺の中に流れ込んできた。
 どうやら全員この料理を美味しいと感じて食事を楽しんでいるようだ。

 ではもっと密度を上げてみよう。手を止めて読心に集中してみることにした。対象はステラ姉さんだ。

『ちょっと足りないな~。もうちょっと』

 ああ、予想通りだ。だって姉さんまだ食い足りないって顔してるし。

『あ、ライト寝てる。今がチャンス!』

 あ、やべ。姉貴が俺の飯狙ってる。早く戻らねえと!

「おい姉貴、何勝手に俺の飯食おうとしてんだ?」
「え!? な……なんで気づいたの!?」
「そんな顔してれば誰だって気づくわ!」

 諦めずに力を試してみる。次のターゲットは兄であるステインだ。さて、彼はどんなことを思ってるのかな?

『まあまあだな。しかしもう少し味つけがほしい。出来るならばこの間食べただし巻きとやがいい。砂糖も捨てがたいな』

 ……うん、これも予想の範疇だったわ。

 兄さんは普段から仏頂面だが、内面は意外とおしゃべりだ。それは彼を見ていれば意外と分かる。なんていうか……背中で語る的な。
 流石にここまでは理解出来ないが、この力なしでも兄さんがこの卵に不満みたいなものを抱いているのは眉を見ればすぐにわかる。
 だがこれを理解出来るのは俺らしい。俺以外の家族は皆兄さんの表情に気づかず、よく兄さんはショックを受けている。

 そう、別にこの力を使わなくても大体わかるのだ。
 俺は元から察しが良い方なのか、それともこの能力があるおかげか。その人の顔を見ただけで大体考えていることが分かるのだ。

「(……この能力マジでいるのか?)」

 最初はこの力が俺の特典だと思っていたのだが、もしかして違うのか?
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