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赤ちゃん編
屋敷の中を冒険です
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魔力強化。これは俺が最初に使った魔法である。
魔力操作の鍛錬を積んで早三ヶ月、やっとの思いで俺は初めて魔法を使うことが出来たのだ。
俺の魔力はあまりにも少なかった。この小さな身体の中にポツンと、まるで風前の灯のような力。それはとても運用出来るほどの量ではなかった。
しかし操作を続ける度にそれは大きくなり、今ではこうして身体強化出来るまでは大きくなっている。
最初は変化に大差がないので気付かなかったが、今ではこうして成長を実感できる。あれだ、塵も積もれば山となるだ。
けど最近は加速的に大きくなってきたような気がする。
元の力の大きさが分からないので断言はできないのだが、それでも力の大きさは理解出来た。
とまあ、魔力の成長具合は以上だ。そして今ではこうして魔力で身体を強化して歩くことが出来る。
けど外出は真夜中に控えている。もし見つかったら大騒ぎだからな。
「お-」
ハイハイしながら周囲を見渡す。
本当にこの屋敷はデカイ。まるでギリシャの神殿にでも迷ったかのようだ。
俺が小さいというのも原因の一つだろう。
子共の視点からと大人と視点からでは当然世界の見え方は違う。だから大人にとっては小さな家の中でも、赤ん坊から見れば未開地のようである。
ハイハイして屋敷の探索を続行する。
今は歩かない。そんなことしたらすぐに魔力切れになっちまうからな。せいぜいハイハイしながらの強化だ。
「……お?」
コトリと、何か音がした。
目を向けると、前方から影が伸びている。……まさか見張りか?
この屋敷には定期的に見張りが巡回する。俺はそれを回避するために何度も調査したんだが……ズレたか?
「そこにいるのは誰だ?」
「……」
聞こえたのは我がお父様の声だ。
腹の底から響くような低い声。そこには覇気のような有無を言わさない凄みがあった。
父さんのこんな声は初めて聞いた。
いつもは笑って妙な声を出す父さん。しかし今の彼はこの屋敷の主に相応しいものであった。
俺は咄嗟に隠れた。
折角ここまで冒険したのに見つかってたまるか。ここをやり過ごして冒険及び訓練を続行するのだ。
俺の体は小さいため隠れる場所は多い。そして幸いなことに、ここは物が多かった
早速銅像の影に隠れてやり過ごす。大の大人では隠れることの出来ないサイズだ。そして角度的に父さんからは見えない。
これは勝ったな。そう思っていた矢先……。
「そこか。……ずいぶん小さいな」
父さんは俺の場所を見つけた。……何故だ!?気配は完全に消したはずなのに!?
種はすぐに分かった。父さんは魔力をまるでソナーのように広げ、それで俺の居場所を突き止めたのだ。
俺が魔法を使えたから当然他の人たちも使えるのは予測していた。まだ生まれたばかりで魔力の使い方も最近覚えた俺と比べたら桁が違うのも承知していた。
しかし実際に目の当たりにしたら驚くのが人情。俺は魔力のソナーに触れられたのにびっくりしてつい魔力を漏らしてしまった。
「まさか気配遮断の魔術を無意識に使うとは……。これは大物になるかもな」
「あぅぁ~」
俺はただの赤ん坊のフリをする。
まさか気配遮断の魔術をこんなあっさりバレるとは。いや逆に使ったからバレたのか?
「それにしてもまったく。こんな時間に抜け出して歩き回るとは。油断の隙もない子だな」
父さんは俺を寝室へと運んで寝かせる。こうして俺の冒険と訓練は幕を閉じてしまった……。
魔力操作の鍛錬を積んで早三ヶ月、やっとの思いで俺は初めて魔法を使うことが出来たのだ。
俺の魔力はあまりにも少なかった。この小さな身体の中にポツンと、まるで風前の灯のような力。それはとても運用出来るほどの量ではなかった。
しかし操作を続ける度にそれは大きくなり、今ではこうして身体強化出来るまでは大きくなっている。
最初は変化に大差がないので気付かなかったが、今ではこうして成長を実感できる。あれだ、塵も積もれば山となるだ。
けど最近は加速的に大きくなってきたような気がする。
元の力の大きさが分からないので断言はできないのだが、それでも力の大きさは理解出来た。
とまあ、魔力の成長具合は以上だ。そして今ではこうして魔力で身体を強化して歩くことが出来る。
けど外出は真夜中に控えている。もし見つかったら大騒ぎだからな。
「お-」
ハイハイしながら周囲を見渡す。
本当にこの屋敷はデカイ。まるでギリシャの神殿にでも迷ったかのようだ。
俺が小さいというのも原因の一つだろう。
子共の視点からと大人と視点からでは当然世界の見え方は違う。だから大人にとっては小さな家の中でも、赤ん坊から見れば未開地のようである。
ハイハイして屋敷の探索を続行する。
今は歩かない。そんなことしたらすぐに魔力切れになっちまうからな。せいぜいハイハイしながらの強化だ。
「……お?」
コトリと、何か音がした。
目を向けると、前方から影が伸びている。……まさか見張りか?
この屋敷には定期的に見張りが巡回する。俺はそれを回避するために何度も調査したんだが……ズレたか?
「そこにいるのは誰だ?」
「……」
聞こえたのは我がお父様の声だ。
腹の底から響くような低い声。そこには覇気のような有無を言わさない凄みがあった。
父さんのこんな声は初めて聞いた。
いつもは笑って妙な声を出す父さん。しかし今の彼はこの屋敷の主に相応しいものであった。
俺は咄嗟に隠れた。
折角ここまで冒険したのに見つかってたまるか。ここをやり過ごして冒険及び訓練を続行するのだ。
俺の体は小さいため隠れる場所は多い。そして幸いなことに、ここは物が多かった
早速銅像の影に隠れてやり過ごす。大の大人では隠れることの出来ないサイズだ。そして角度的に父さんからは見えない。
これは勝ったな。そう思っていた矢先……。
「そこか。……ずいぶん小さいな」
父さんは俺の場所を見つけた。……何故だ!?気配は完全に消したはずなのに!?
種はすぐに分かった。父さんは魔力をまるでソナーのように広げ、それで俺の居場所を突き止めたのだ。
俺が魔法を使えたから当然他の人たちも使えるのは予測していた。まだ生まれたばかりで魔力の使い方も最近覚えた俺と比べたら桁が違うのも承知していた。
しかし実際に目の当たりにしたら驚くのが人情。俺は魔力のソナーに触れられたのにびっくりしてつい魔力を漏らしてしまった。
「まさか気配遮断の魔術を無意識に使うとは……。これは大物になるかもな」
「あぅぁ~」
俺はただの赤ん坊のフリをする。
まさか気配遮断の魔術をこんなあっさりバレるとは。いや逆に使ったからバレたのか?
「それにしてもまったく。こんな時間に抜け出して歩き回るとは。油断の隙もない子だな」
父さんは俺を寝室へと運んで寝かせる。こうして俺の冒険と訓練は幕を閉じてしまった……。
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