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第4話 俺はインドア派なんだが

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星野に命を狙われる身であることを感じつつ放課後を迎えた。無部(帰宅部、まあどっちでもいいか)である俺は、さっさと下校するために玄関に向かっていた。
今のところ、七海センサーと西園寺センサーに反応はない。ちなみに、七海センサーと西園寺センサーとは空気の変化を早めに察知するという、いわば予感に近いようなものである。

ドタドタドタ

ん?七海センサーと西園寺センサーに反応がないのに嫌な予感がする。
・・・・・もう一つのセンサー反応。アイツか・・・。

「うわわっ!?千尋!?」
突然やって来たソイツは、俺の手前で急ブレーキ・・・を掛けたが、スピードを抑えきれず俺に激突した。

おぶっ。
突然、体に激痛が走り、脳の機能が1秒だけ止まり、俺は足から地に倒れこんだ。

意識が復帰したのは5秒後。ソイツは上から俺を見下ろしていた。

「ごめんごめん、千尋~。速すぎて止まれなかったわ~。」

チッ。てめえはF1レースに出てくるレースカーかよ。

玉村志乃(たまむらしの)。2-Dの生徒。陸上部所属でエース的存在だ。

そして、
「ねえ、本当に千尋も陸上部入ってよ!」
なぜか、俺を陸上部に勧誘している。この際だからはっきり言っておこう。

俺は運動が全くできない。

今、目の前のヤツは俺を陸上部に誘っているが、俺の50m走の記録は8秒7。この歳にしては、かなり遅い。あと、野球はバットの持ち方すらまともにわからないし、サッカーは動くボールを蹴るという行動すら無理だ。


まあ、ともかく話は終わりだ。俺は帰る。

俺が靴を履き替え、昇降口から出ていこうとした、そのとき、玉村が
「わかったわ。なら、勝負しましょう。あなたが勝ったら、私はもうあなたを陸上部に勧誘しない。ただし、私が勝ったら、あなたを陸上部に入れる。どう?」とぬかしてきた。

いいわけがない!
どう考えても、お前が有利だろ!
お前、50m走、6秒くらいだったよな!

まあ、お前がそれで納得するならいい。俺は負けても無視すればいいだけだ。

陸上部の練習場

陸上部が練習している中、勝負は行われることになった。陸上部のヤツら、本当に申し訳ない。

内容は400m走。アイツの得意競技だ。アイツ、そんなに俺を陸上部に入れたいのか?

「約束、忘れないでよね。」
え?何だっけ?うん。破る気満々だから忘れた。

「位置についてー。よーい・・・」

パァン

本当にピストルの音やだわー。心臓が止まりそうになる。

うわ!はえー。
隣のレーンで走る玉村と徐々に距離ができる。200mを走った頃には玉村と50m近い差ができていた。

と、そのとき
ドテッ
前を走っていた玉村が派手に転んだ。足を擦りむいたらしく、膝のあたりから血が出ている。

そして、俺は玉村を

勝手に抜き、そのままゴールした。

・・・・・悪いな、玉村。俺にだって慈悲の心くらい存在する。だが、陸上部に入るのはごめんなんだ!

「うわ、アイツ最低だな・・・」
「玉村ちゃんを助けようとしないの・・・?」

・・・うるせえ陸上部ども。俺は入部したくねえだけなんだよ・・・
いつものオーラで陸上部沈黙。

さて、面倒な用も済んだし、さっさと帰るか。

結局その後、玉村が何か言うことはなかった。

翌日
ふぅ・・・今日も相変わらずだな・・・。いや、玉村が来ないから少しはまともになったのかな。

「いたーーー!千尋ーーー!」
あーあー、噂をすれば来たよ。
「あんた!私を助けないでゴールって何よー!」
やっぱそこかよ。陸上部に入るのはごめんなんだよ。
「罰として、これからも勧誘するからね!」
どんな罰だよ。めんどくさいな。

・・・・・今日も俺は嫌われている。周りから嫌われる存在こそがこの俺。
そんな俺が迷惑に思っているメンバーをこれまで紹介してきた訳だが、次回からは俺が信頼している人たちを紹介しようと思う。

第5話に続く
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