14 / 21
第一章 アッシー始めました
第十三話
しおりを挟む
翌朝、日の昇り始めた頃に目が覚めた。アルカはまだ寝ているようなので、そっと抜け出し、テントの外に出る。
「リュートさん、おはようございます」
「ん、あぁ、リュート。おはよーさん」
「おはよう。見張り番ご苦労様。朝食でも作るけど、朝から肉でも大丈夫か?」
「そ、そうですね。干し肉よりはマシかと……」
「お、作ってくれるの? 助かるわー」
女性に朝からガッツリ肉料理はキツイかもしれないと思って尋ねてみるも、そこは流石冒険者。そういう事は、あまり気にしないらしい。
前日入手した胡椒に猪肉、それと元からインベントリに入れておいた山菜や果物等で、簡単な肉炒めとスープといった朝食を作る。そこにメナスから人数分提供された黒パンを出して、朝食の完成だ。早々に召喚物が役に立ったな!
「旨そうな匂いがすると思ったら……これリュートが作った、んだよ、な?」
「うほぉ、街の外でこんな豪勢な飯、ひっさしぶりだ!」
「まぁ、私達がこんな料理作るわけないわよね……」
「リュートさん、アルカちゃん起こしてきましたよ」
「皆おはよう、アルカもおはよう」
「んぅ……おあよ……」
朝から賑やかな食事はいつ以来だろうか……。こういうのも悪くない。
木皿に盛り付け、皆でワイワイしながら朝食を摂る。
「そういえば、昨夜。東の方からオークが二匹現れたぞ」
「あ、私達も東から二匹来たわ」
「俺達は、北からゴブリンが四匹、東からオークが一匹だったかな」
「そうか。じゃあ、東で間違いなさそうだな。恐らく偵察か何かだったのだろう」
「だったら急いだ方が良さそうね」
「そうだな。まぁ、もう匂いでバレてるだろうがな」
「あ、そうか。すまない。料理しない方が良かったよな……」
「いやいや、美味かったよ。それに、向こうから来てくれるなら助かるしな」
昨日の晩に続き、朝っぱらから盛大に旨そうな匂いをさせてしまったので、危険を呼び込んだかもしれないと謝るも、思っていたのとは違う返事がくる。
「え、討伐じゃなくて戦力調査じゃないのか?」
「あいつらが集落を作っているなら、当然集落を守る。だから一気にこちらへ攻めて来ることはないだろう? だったら昨日の晩みたいに、各個撃破出来れば楽だし、金にもなるじゃないか。もちろん調査はするけどな」
「なるほどな。じゃあ、飯も食ったし、今日は東の方へ進むって事で良いのか?」
「あぁ、そうしよう。さて、皆さっそく準備して出発だ」
「「「おう」」」
「了解」
「んぅ?」
若干一名会話に取り残されているが、食事に一生懸命だから仕方がないだろう。
皆はテントを片付け、アルカと二人で朝食の後片付けをした後、出発する。
道中、アルカに陣を教えたり、インベントリ内の確認をする。
アルカのインベントリの使い方はまだ完璧ではないらしい。何故ならば、インベントリのリストに良く分からない名前が並んでいるからだ。
そこには“りょうりのせるの”だったり“すわるとらく”等、名前が全てアルカの主観になっている。それらを出してみると、皿と椅子だったりする。
それらを修正していると、オークの集落らしき場所を発見したので、メナスとダフスが偵察に出てくれた。
「ダフス、どうだった?」
「うーん、相手は見える分を数えたら四十匹程だった。リーダーはジェネラル。取り巻きにアーチャーが四、ウォリアーが六、チーフが四、残りはコモンオークだ。戦力的に厳しいな」
「何匹くらいだったら、厳しくないんだ?」
「そうだな……俺達の戦力とアルカの戦力込みだと二十匹ちょっと、じゃないか?」
まぁ、十六匹相手で冷静に防衛戦を行うくらいだから、そのくらいか……。
「アルカ。どのくらい倒せそう?」
「んぅー……ぜんぶ?」
「はははっ、強気だな。陣足りるか?」
「たりない」
「じゃあ、駄目じゃん! 今、陣って何枚ある?」
「ん」
「にのしの……全部で十六枚か。何とかなりそうだな」
「ん。やる」
炎風の盾はこちらを不思議な目で眺めているが、気にしない。アルカは、美味しいご飯の為に殺る気を出しているので、何とかしてあげたい。ここで、アルカから魔力を貰って正面の空間を一気に断裂させれば、その一撃だけで片が付くところではあるが、それだとアルカの前の主人と同類のようで自分が許せなくなるだろうから、危険が迫る以外では、アルカに任せて俺はアルカの足に専念しよう。
どうせ、俺のレベルは上がらないし……。
「作戦がある。聞いてくれるか?」
「なんだ? 別に危険を冒してまで、殲滅しないといけないって事はないんだぞ?」
「それはそうなんだが、ウチのお姫様が殺る気なんでな……。別にダフス達は、見ているだけでも良いよ。とりあえず、話すから、参加するなら参加してくれ」
「……分かった。それで、作戦って?」
「俺達が、集落の北側で騒ぎを起こす。というか、あっちから順に始末していく。当然、北側に寄ってくるだろうから、暫くして西、もしくは南側から挟撃してくれ」
「……大丈夫なのか?」
「分からん。でも、危なくなったら逃げるし、何とかなると思う。だから、そっち四人は森の調査もあるだろうし、見ているだけでもいいし、ここでお別れでも良い」
「おいおい、ここまで来てお別れはねーぜ?」
「アルカちゃんを危険な目に合わせるくらいなら!」
カールとルーナはやる気のようだが、ダフスはリーダーなだけあって、あまり乗り気ではないらしい。危険だしな、当然だろう。そこでメナスがこちらを見据えて口を開く。
「逃げる手段はあるのか?」
「ある。だから俺達の事は気にしないでくれ。危なくなったら逃げてくれ」
「……じゃ、私達も危なくなったら逃げる。ダフス、いいよね?」
「はぁ……分かったよ。よし、撤退の合図はルーナ、お前に任せる」
「むぅ……分かりました。いつも通り、魔力が三分の一を切ったら、ですね?」
「おう、頼むぜ? お前さん達も俺達が逃げたら、逃げろよ?」
「分かった。アルカも皆が逃げたら俺達も逃げるって事で良いか?」
「ん」
「じゃあ、作戦開始だ。行ってくる!」
「了解」
アルカを肩から下ろし、正面に抱く形で草木に隠れて移動する。
その間、陣を節約兼、一撃で数匹を討伐出来るよう集めるため、俺が相手を引き付け、合図したらその方向に魔法を発動する、という作戦をアルカに説明しておく。
「よし、それじゃあ、行くぞ?」
「んっ!」
アルカを肩に乗せ、武器である棒を手に集落へと足を踏み入れる。
「うぉぉぉぉ! 掛かって来いやぁぁぁ!」
――ブォ!?
――ブォアァァァァ!
こちらに気が付いたオークが一斉に雄叫びを上げ、棍棒を片手に走ってくる。
その様子を見ながら、魔法が当たり易い一直線になるよう、走って逃げる。
「よし、そこ!」
「ん! えあはんまー!」
「もういっちょ、そっち」
「ん! えあかった!」
――ッパァドドド!
――ズッバボボボボッ!
エアーハンマーが四匹の腹を貫通し、エアーカッターが五匹を上下に分断する。
「アルカ、あいつ!」
「ん! えあーはんま!」
次々に指差し魔法を放つ方向を指定する。
「あいつも!」
「ん! えあはんま!」
――ダァンッ!
――ッパァン!
迫ってきているオークとは別に、弓を持っているオークを優先的に始末する。
矢がアルカを狙うと危険なので、肩から下ろし、正面を向けて抱きかかえ、走る。
「よし、あそこだ!」
「ん! えあーかったー!」
――ズッバッ、バボッ、ババッ!
更に四匹のオークを始末し、これで十五匹。そこでダフス達も戦闘に参加したらしく、少し離れたところで、数匹倒しているのを確認。
走り回って、斧持ちや剣持ちオークを数匹倒して方向転換。落ちているドロップ品を回収しつつ走ってきた道を引き返す。
そこから、集落の中心部に向けて走り、残ったオークを処理していると、逃げ出そうとしているオークを発見。他とは違う大きなオークで、鎧を着ている。恐らくはあの個体がここのボスで、オークジェネラルという奴だろう。
「アルカ、あいつがボスみたいだ。狙えるか?」
「やる! えあかたー!」
アルカの詠唱したエアーカッターで仕留められるかと思ったが、距離があったせいか、手前に居たオークを切り裂いただけで、ジェネラルには届かなかった。
次弾を打つべく走って移動しようとしたところで、転んでしまう。
「いいっ、いってぇええええ!」
「りゅーと!」
良く見ると足に矢が刺さっていた。
オークジェネラルを見つめていた視界外から、アーチャーに撃たれたらしい。
「いっつつ! くそっ! アルカ、あいつだ!」
「りゅーと! あし!」
咄嗟に向きを変えて転んだので、抱き締めていたアルカには傷一つ無い。
良かった……。
「くっ、い、いい、俺は良いから! あいつを殺れ!」
「りゅっ……ん、えあはんまっ!」
――パァァンッ!
「いってて……良くやった。偉いぞアルカ!」
「りゅーと! あし! あし!」
アルカが腕から這い出し、刺さっている矢をどうしたものか、アワアワしていたので、頭を撫でて落ち着かせた後、インベントリからポーションを取り出し、足に刺さっている矢を抜きつつ、傷口にポーションを流す。
「いっつつ……大丈夫だって。心配すんな。ほら、治ったから、な?」
「ほんと? りゅーと、あしいたくない? だいじょぶ?」
「大丈夫、大丈夫。見てみろ、治っただろう?」
「ん……」
「ふぅ。よっと……逃がしちまったな、あの野郎……」
傷に問題が無い事をアピールするため、アルカを再度肩に乗せ、立ち上がる。
雑貨屋に感謝だな。街に帰ったら、いくつかポーションを買おう……。
そこから、陣を使い切るまで残党を討伐し、ダフス達と合流する。
「皆無事みたいだな。良かった」
「お前さんは脚に傷があるみたいだが、大丈夫……なのか?」
「あぁ、これはポーションで回復した後だから、もう大丈夫だ。それよりも、すまない。ジェネラルを逃してしまった……」
「そうか。こちらも数匹逃してしまった。だが、この集落を燃やし尽せば、あの程度なら問題は無いだろう。しかし、ジェネラルは仕留めたかったな……」
「南の方に逃げたから、森の調査がてら追うか?」
「そうだな。それよりもまず、ここを燃やそう。ルーナ、頼む」
「はーい」
炎風の盾は、カールとメナスの防具類に小さな掠り傷がいくつかある程度で、ダフスとルーナは無傷だった。負傷したのは俺だけか……レベル1だもの、仕方がないよね?
それよりも、遠距離の攻撃には注意が必要だな。今回は俺の足だったから良かったが、あれがアルカだったとしたら恐ろしい。的が小さいとはいえ、とても危険だ。
防具を固めると重くて移動に差し支えるし、そもそも金属鎧なんて着た事が無い。
アルカには防御系の魔法も習得してもらおうか?
攻撃魔法や珍しい魔法にしか興味が無いようだけど、こればかりは仕方がない。まずは身を守る魔法だな。アルカ任せというのは情けないけれど、これもアルカの為。我慢して覚えてもらおう。
ルーナがオークの建てた小屋を燃やし尽してくれている間、ドロップ品に取りこぼしが無いかを確認して回り、南に向けて再出発する。
「リュートさん、おはようございます」
「ん、あぁ、リュート。おはよーさん」
「おはよう。見張り番ご苦労様。朝食でも作るけど、朝から肉でも大丈夫か?」
「そ、そうですね。干し肉よりはマシかと……」
「お、作ってくれるの? 助かるわー」
女性に朝からガッツリ肉料理はキツイかもしれないと思って尋ねてみるも、そこは流石冒険者。そういう事は、あまり気にしないらしい。
前日入手した胡椒に猪肉、それと元からインベントリに入れておいた山菜や果物等で、簡単な肉炒めとスープといった朝食を作る。そこにメナスから人数分提供された黒パンを出して、朝食の完成だ。早々に召喚物が役に立ったな!
「旨そうな匂いがすると思ったら……これリュートが作った、んだよ、な?」
「うほぉ、街の外でこんな豪勢な飯、ひっさしぶりだ!」
「まぁ、私達がこんな料理作るわけないわよね……」
「リュートさん、アルカちゃん起こしてきましたよ」
「皆おはよう、アルカもおはよう」
「んぅ……おあよ……」
朝から賑やかな食事はいつ以来だろうか……。こういうのも悪くない。
木皿に盛り付け、皆でワイワイしながら朝食を摂る。
「そういえば、昨夜。東の方からオークが二匹現れたぞ」
「あ、私達も東から二匹来たわ」
「俺達は、北からゴブリンが四匹、東からオークが一匹だったかな」
「そうか。じゃあ、東で間違いなさそうだな。恐らく偵察か何かだったのだろう」
「だったら急いだ方が良さそうね」
「そうだな。まぁ、もう匂いでバレてるだろうがな」
「あ、そうか。すまない。料理しない方が良かったよな……」
「いやいや、美味かったよ。それに、向こうから来てくれるなら助かるしな」
昨日の晩に続き、朝っぱらから盛大に旨そうな匂いをさせてしまったので、危険を呼び込んだかもしれないと謝るも、思っていたのとは違う返事がくる。
「え、討伐じゃなくて戦力調査じゃないのか?」
「あいつらが集落を作っているなら、当然集落を守る。だから一気にこちらへ攻めて来ることはないだろう? だったら昨日の晩みたいに、各個撃破出来れば楽だし、金にもなるじゃないか。もちろん調査はするけどな」
「なるほどな。じゃあ、飯も食ったし、今日は東の方へ進むって事で良いのか?」
「あぁ、そうしよう。さて、皆さっそく準備して出発だ」
「「「おう」」」
「了解」
「んぅ?」
若干一名会話に取り残されているが、食事に一生懸命だから仕方がないだろう。
皆はテントを片付け、アルカと二人で朝食の後片付けをした後、出発する。
道中、アルカに陣を教えたり、インベントリ内の確認をする。
アルカのインベントリの使い方はまだ完璧ではないらしい。何故ならば、インベントリのリストに良く分からない名前が並んでいるからだ。
そこには“りょうりのせるの”だったり“すわるとらく”等、名前が全てアルカの主観になっている。それらを出してみると、皿と椅子だったりする。
それらを修正していると、オークの集落らしき場所を発見したので、メナスとダフスが偵察に出てくれた。
「ダフス、どうだった?」
「うーん、相手は見える分を数えたら四十匹程だった。リーダーはジェネラル。取り巻きにアーチャーが四、ウォリアーが六、チーフが四、残りはコモンオークだ。戦力的に厳しいな」
「何匹くらいだったら、厳しくないんだ?」
「そうだな……俺達の戦力とアルカの戦力込みだと二十匹ちょっと、じゃないか?」
まぁ、十六匹相手で冷静に防衛戦を行うくらいだから、そのくらいか……。
「アルカ。どのくらい倒せそう?」
「んぅー……ぜんぶ?」
「はははっ、強気だな。陣足りるか?」
「たりない」
「じゃあ、駄目じゃん! 今、陣って何枚ある?」
「ん」
「にのしの……全部で十六枚か。何とかなりそうだな」
「ん。やる」
炎風の盾はこちらを不思議な目で眺めているが、気にしない。アルカは、美味しいご飯の為に殺る気を出しているので、何とかしてあげたい。ここで、アルカから魔力を貰って正面の空間を一気に断裂させれば、その一撃だけで片が付くところではあるが、それだとアルカの前の主人と同類のようで自分が許せなくなるだろうから、危険が迫る以外では、アルカに任せて俺はアルカの足に専念しよう。
どうせ、俺のレベルは上がらないし……。
「作戦がある。聞いてくれるか?」
「なんだ? 別に危険を冒してまで、殲滅しないといけないって事はないんだぞ?」
「それはそうなんだが、ウチのお姫様が殺る気なんでな……。別にダフス達は、見ているだけでも良いよ。とりあえず、話すから、参加するなら参加してくれ」
「……分かった。それで、作戦って?」
「俺達が、集落の北側で騒ぎを起こす。というか、あっちから順に始末していく。当然、北側に寄ってくるだろうから、暫くして西、もしくは南側から挟撃してくれ」
「……大丈夫なのか?」
「分からん。でも、危なくなったら逃げるし、何とかなると思う。だから、そっち四人は森の調査もあるだろうし、見ているだけでもいいし、ここでお別れでも良い」
「おいおい、ここまで来てお別れはねーぜ?」
「アルカちゃんを危険な目に合わせるくらいなら!」
カールとルーナはやる気のようだが、ダフスはリーダーなだけあって、あまり乗り気ではないらしい。危険だしな、当然だろう。そこでメナスがこちらを見据えて口を開く。
「逃げる手段はあるのか?」
「ある。だから俺達の事は気にしないでくれ。危なくなったら逃げてくれ」
「……じゃ、私達も危なくなったら逃げる。ダフス、いいよね?」
「はぁ……分かったよ。よし、撤退の合図はルーナ、お前に任せる」
「むぅ……分かりました。いつも通り、魔力が三分の一を切ったら、ですね?」
「おう、頼むぜ? お前さん達も俺達が逃げたら、逃げろよ?」
「分かった。アルカも皆が逃げたら俺達も逃げるって事で良いか?」
「ん」
「じゃあ、作戦開始だ。行ってくる!」
「了解」
アルカを肩から下ろし、正面に抱く形で草木に隠れて移動する。
その間、陣を節約兼、一撃で数匹を討伐出来るよう集めるため、俺が相手を引き付け、合図したらその方向に魔法を発動する、という作戦をアルカに説明しておく。
「よし、それじゃあ、行くぞ?」
「んっ!」
アルカを肩に乗せ、武器である棒を手に集落へと足を踏み入れる。
「うぉぉぉぉ! 掛かって来いやぁぁぁ!」
――ブォ!?
――ブォアァァァァ!
こちらに気が付いたオークが一斉に雄叫びを上げ、棍棒を片手に走ってくる。
その様子を見ながら、魔法が当たり易い一直線になるよう、走って逃げる。
「よし、そこ!」
「ん! えあはんまー!」
「もういっちょ、そっち」
「ん! えあかった!」
――ッパァドドド!
――ズッバボボボボッ!
エアーハンマーが四匹の腹を貫通し、エアーカッターが五匹を上下に分断する。
「アルカ、あいつ!」
「ん! えあーはんま!」
次々に指差し魔法を放つ方向を指定する。
「あいつも!」
「ん! えあはんま!」
――ダァンッ!
――ッパァン!
迫ってきているオークとは別に、弓を持っているオークを優先的に始末する。
矢がアルカを狙うと危険なので、肩から下ろし、正面を向けて抱きかかえ、走る。
「よし、あそこだ!」
「ん! えあーかったー!」
――ズッバッ、バボッ、ババッ!
更に四匹のオークを始末し、これで十五匹。そこでダフス達も戦闘に参加したらしく、少し離れたところで、数匹倒しているのを確認。
走り回って、斧持ちや剣持ちオークを数匹倒して方向転換。落ちているドロップ品を回収しつつ走ってきた道を引き返す。
そこから、集落の中心部に向けて走り、残ったオークを処理していると、逃げ出そうとしているオークを発見。他とは違う大きなオークで、鎧を着ている。恐らくはあの個体がここのボスで、オークジェネラルという奴だろう。
「アルカ、あいつがボスみたいだ。狙えるか?」
「やる! えあかたー!」
アルカの詠唱したエアーカッターで仕留められるかと思ったが、距離があったせいか、手前に居たオークを切り裂いただけで、ジェネラルには届かなかった。
次弾を打つべく走って移動しようとしたところで、転んでしまう。
「いいっ、いってぇええええ!」
「りゅーと!」
良く見ると足に矢が刺さっていた。
オークジェネラルを見つめていた視界外から、アーチャーに撃たれたらしい。
「いっつつ! くそっ! アルカ、あいつだ!」
「りゅーと! あし!」
咄嗟に向きを変えて転んだので、抱き締めていたアルカには傷一つ無い。
良かった……。
「くっ、い、いい、俺は良いから! あいつを殺れ!」
「りゅっ……ん、えあはんまっ!」
――パァァンッ!
「いってて……良くやった。偉いぞアルカ!」
「りゅーと! あし! あし!」
アルカが腕から這い出し、刺さっている矢をどうしたものか、アワアワしていたので、頭を撫でて落ち着かせた後、インベントリからポーションを取り出し、足に刺さっている矢を抜きつつ、傷口にポーションを流す。
「いっつつ……大丈夫だって。心配すんな。ほら、治ったから、な?」
「ほんと? りゅーと、あしいたくない? だいじょぶ?」
「大丈夫、大丈夫。見てみろ、治っただろう?」
「ん……」
「ふぅ。よっと……逃がしちまったな、あの野郎……」
傷に問題が無い事をアピールするため、アルカを再度肩に乗せ、立ち上がる。
雑貨屋に感謝だな。街に帰ったら、いくつかポーションを買おう……。
そこから、陣を使い切るまで残党を討伐し、ダフス達と合流する。
「皆無事みたいだな。良かった」
「お前さんは脚に傷があるみたいだが、大丈夫……なのか?」
「あぁ、これはポーションで回復した後だから、もう大丈夫だ。それよりも、すまない。ジェネラルを逃してしまった……」
「そうか。こちらも数匹逃してしまった。だが、この集落を燃やし尽せば、あの程度なら問題は無いだろう。しかし、ジェネラルは仕留めたかったな……」
「南の方に逃げたから、森の調査がてら追うか?」
「そうだな。それよりもまず、ここを燃やそう。ルーナ、頼む」
「はーい」
炎風の盾は、カールとメナスの防具類に小さな掠り傷がいくつかある程度で、ダフスとルーナは無傷だった。負傷したのは俺だけか……レベル1だもの、仕方がないよね?
それよりも、遠距離の攻撃には注意が必要だな。今回は俺の足だったから良かったが、あれがアルカだったとしたら恐ろしい。的が小さいとはいえ、とても危険だ。
防具を固めると重くて移動に差し支えるし、そもそも金属鎧なんて着た事が無い。
アルカには防御系の魔法も習得してもらおうか?
攻撃魔法や珍しい魔法にしか興味が無いようだけど、こればかりは仕方がない。まずは身を守る魔法だな。アルカ任せというのは情けないけれど、これもアルカの為。我慢して覚えてもらおう。
ルーナがオークの建てた小屋を燃やし尽してくれている間、ドロップ品に取りこぼしが無いかを確認して回り、南に向けて再出発する。
0
お気に入りに追加
137
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
異世界無知な私が転生~目指すはスローライフ~
丹葉 菟ニ
ファンタジー
倉山美穂 39歳10ヶ月
働けるうちにあったか猫をタップリ着込んで、働いて稼いで老後は ゆっくりスローライフだと夢見るおばさん。
いつもと変わらない日常、隣のブリっ子後輩を適当にあしらいながらも仕事しろと注意してたら突然地震!
悲鳴と逃げ惑う人達の中で咄嗟に 机の下で丸くなる。
対処としては間違って無かった筈なのにぜか飛ばされる感覚に襲われたら静かになってた。
・・・顔は綺麗だけど。なんかやだ、面倒臭い奴 出てきた。
もう少しマシな奴いませんかね?
あっ、出てきた。
男前ですね・・・落ち着いてください。
あっ、やっぱり神様なのね。
転生に当たって便利能力くれるならそれでお願いします。
ノベラを知らないおばさんが 異世界に行くお話です。
不定期更新
誤字脱字
理解不能
読みにくい 等あるかと思いますが、お付き合いして下さる方大歓迎です。
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
SSS級宮廷錬金術師のダンジョン配信スローライフ
桜井正宗
ファンタジー
帝国領の田舎に住む辺境伯令嬢アザレア・グラジオラスは、父親の紹介で知らない田舎貴族と婚約させられそうになった。けれど、アザレアは宮廷錬金術師に憧れていた。
こっそりと家出をしたアザレアは、右も左も分からないままポインセチア帝国を目指す。
SSS級宮廷錬金術師になるべく、他の錬金術師とは違う独自のポーションを開発していく。
やがて帝国から目をつけられたアザレアは、念願が叶う!?
人生逆転して、のんびりスローライフ!
没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる