54 / 61
オールスターゲーム
心中
しおりを挟む
ちょうどその頃、休養宣言して指揮を財前に譲った櫻井は自宅のテレビでオールスターゲームを観戦していた。
「…オールスターゲームか…本来ならば、ボクがネプチューンリーグの監督で采配してたんだよなぁ」
今は何も考えたくない。
とは言うものの、どうしても思い出してしまうのは野球の事ばかりだ。
ヘッドコーチ時代は斬新な選手起用でチームを優勝に導いたが、監督になってからはその采配が空回りしていた。
「やっぱりボクは監督に向いてないんだろうな」
天才と謳われた櫻井だが、必ずしも名選手が名監督にはならない。
辞意は表明してないが事実上の辞任で、リフレッシュしたら復帰するという名目だが、これでは何時になったら復帰出来るのか。
このまま辞意を表明して次期監督を誰かに任せた方がいいのか、それとも復帰して再び指揮を執るか。
どっちが正解なのか。
それが分からずにモヤモヤしたまま一日が過ぎてゆく。
「決めた…オールスター明けにでも意志を伝えよう」
櫻井の肚は決まった。
さて、オールスターゲームは5回が終わって3対0でアポロリーグがリードしている。
ネプチューンリーグ先発の天海は2イニングを投げて無安打無失点、2奪三振の好投を見せたが、二番手ピッチャー、レッズの金が4回にランナー二塁の場面で高橋にツーランを打たれ、5回の表には三番手ピッチャー、99ersの松井が陽凪にソロホームランを打たれ3点を献上。
それに対してアポロリーグのピッチャーは小橋―猪木―澁谷と繋いでネプチューンリーグの強打者を0点に抑える。
6回の表、アポロリーグの攻撃は途中出場の2番斐川から。
この回からマウンドにはGlanzの片山が上がっている。
片山はオールスター初出場。
外崎は初回からマスクを被る。
【6回の表、アポロリーグの攻撃は…2番ライト斐川 背番号3 北九州ドジャース】
左対左という場面だが、斐川はアポロリーグを代表するヒットメーカー。
野球の能力は超一流だが、人間的にはゲスな部類に入る。
吉岡をパワハラで虐め、それが原因で無期限の二軍降格を命じられた。
もう少し考えを改めないといけないんだが、この性格ではムリな気がする。
「…」
「おぅ、何だお前か!これならアウト一つ貰ったようなもんだ」
「何っ!」
片山の挑発に斐川がムキになる。
「お前じゃオレの球は打てねえよ」
「もし打ったらどうする?」
「ん~、そうだなぁ…何でも言う事聞いてやるよ」
「おい、絶対だな?」
「ウソは言わねえよ」
片山は自信満々で答えた。
(ヨシ、どんな形であれヒットはヒットだ…となると、アレしかないよな)
斐川は打席でほくそ笑む。
(何やってんだ、コイツら)
2人のやり取りを他所に外崎がサインを出した。
しかし片山は首を振る。
(首振るなって言ったろ!)
しかし外崎も同じサインを出す。
またしても片山が首を振る。
(あのヤロー)
じゃあ、これはどうだと別のサインを出した。
片山は頷き、初球を投げた。
インコースベルトの高さへストレートが。
「へっ、貰った」
斐川は咄嗟にバントの構えをした。
「バカが!」
しかし、ボールは内側に食い込み、バントの構えをひていた斐川の脇腹を直撃。
「グボォ…」
片山はツーシームをインコースギリギリに投げていた。
苦悶の表情を浮かべる斐川、しかし球審のコールはストライク。
「…おい、ちょっと待て…オレは当たったんだぞ!それなのに、何でストライクなんだ!」
「バントの構えでボールに当たらなきゃストライクだろ!そんな事すらも分からないのか!」
「あぁ~あ、バカだねぇ全く…」
球審にドヤされ、顔を真っ赤にしている。
「ルールすら分からないのかよ…ったく、どうしようもねぇヤツだな」
斐川はその後も打席に立ったが、3球目のチェンジアップを引っ掛けセカンドゴロでアウト。
続いて3番ボーンが左打席に入る。
「この次は鬼束さんか…そうなると、ここでアウトにしておかないと」
初球ボール、2球目スライダーが決まりストライク。
3球目は縦のカーブでツーストライクと追い込み、4球目は高めの釣り球でツーナッシング。
5球目は外に沈むチェンジアップを引っ掛けてサードゴロでツーアウト。
【4番セカンド鬼束 背番号5 新潟パイレーツ】
この試合まだノーヒットの鬼束が右打席に入った。
オールスターゲームでの成績は13打数2安打と良くない。
結局鬼束は初球のストレートを打ち損じ、ライトフライでツーアウト。
5番上田は空振りの三振でスリーアウトチェンジ。
6回の裏、ネプチューンリーグの攻撃は3番浅倉から。
マウンドには四番手ピッチャー、マリナーズの中継ぎ黒沢にスイッチ。
浅倉はフルカウントまで粘り、フォアボールで出塁。
4番ロドリゲスの打席で二盗を敢行。
間一髪セーフとなり、ロドリゲスが3球目の高めに入ったストレートを捕え、レフトスタンドへツーランホームランを放ち1点差にする。
その後は両チーム無得点のまま、最終回となる。
9回の裏、ネプチューンリーグの攻撃は2番白石から。
ここで財前監督代行がベンチを出て、バッターの交代を告げた。
ネクストバッターズサークルには唐澤が素振りをしている。
【ネプチューンリーグ、選手の交代をお知らせします!バッター白石に代わり、唐澤。3番ショート唐澤 背番号1 SAITAMA Glanz】
歓声が沸き起こり、唐澤が打席に入った。
マウンド上はドジャースの守護神橘。
唐澤は初球勝負と読み、真ん中高め153km/hのストレートを弾き返した。
打球は右中間を深々と破るツーベースヒット。
3番浅倉はここまでノーヒットだが、財前監督代行は代打を出さず浅倉に託した。
その浅倉は4球目のチェンジアップを上手く捕え、センターオーバーのタイムリースリーベースヒットで同点に追いつく。
土壇場で同点に追いつき、尚もチャンスは続く。
一打サヨナラの場面でバッターは先程ツーランホームランを打ったロドリゲス。
ここは敬遠策をとり、ロドリゲスを歩かせる。
だが、浅倉はこの敬遠を虎視眈々と狙っていた。
2球目にアウトコース高めに大きく外れた敬遠球のスキにホームスチールを敢行。
キャッチャー保坂が咄嗟にタッチするが、判定はセーフ。
サヨナラホームスチールでネプチューンリーグが逆転勝利をおさめた。
場内割れんばかりの歓声で、ベンチも狂喜乱舞している。
MVPは勿論、ホームスチールを成功させた浅倉が受賞。
賞金300万をゲットした。
かくしてオールスターゲームは盛況のうちに終了し、4日後からペナントレースが再開する。
Glanzの初戦は京都スーパーフェニックスとの三連戦だ。
「…オールスターゲームか…本来ならば、ボクがネプチューンリーグの監督で采配してたんだよなぁ」
今は何も考えたくない。
とは言うものの、どうしても思い出してしまうのは野球の事ばかりだ。
ヘッドコーチ時代は斬新な選手起用でチームを優勝に導いたが、監督になってからはその采配が空回りしていた。
「やっぱりボクは監督に向いてないんだろうな」
天才と謳われた櫻井だが、必ずしも名選手が名監督にはならない。
辞意は表明してないが事実上の辞任で、リフレッシュしたら復帰するという名目だが、これでは何時になったら復帰出来るのか。
このまま辞意を表明して次期監督を誰かに任せた方がいいのか、それとも復帰して再び指揮を執るか。
どっちが正解なのか。
それが分からずにモヤモヤしたまま一日が過ぎてゆく。
「決めた…オールスター明けにでも意志を伝えよう」
櫻井の肚は決まった。
さて、オールスターゲームは5回が終わって3対0でアポロリーグがリードしている。
ネプチューンリーグ先発の天海は2イニングを投げて無安打無失点、2奪三振の好投を見せたが、二番手ピッチャー、レッズの金が4回にランナー二塁の場面で高橋にツーランを打たれ、5回の表には三番手ピッチャー、99ersの松井が陽凪にソロホームランを打たれ3点を献上。
それに対してアポロリーグのピッチャーは小橋―猪木―澁谷と繋いでネプチューンリーグの強打者を0点に抑える。
6回の表、アポロリーグの攻撃は途中出場の2番斐川から。
この回からマウンドにはGlanzの片山が上がっている。
片山はオールスター初出場。
外崎は初回からマスクを被る。
【6回の表、アポロリーグの攻撃は…2番ライト斐川 背番号3 北九州ドジャース】
左対左という場面だが、斐川はアポロリーグを代表するヒットメーカー。
野球の能力は超一流だが、人間的にはゲスな部類に入る。
吉岡をパワハラで虐め、それが原因で無期限の二軍降格を命じられた。
もう少し考えを改めないといけないんだが、この性格ではムリな気がする。
「…」
「おぅ、何だお前か!これならアウト一つ貰ったようなもんだ」
「何っ!」
片山の挑発に斐川がムキになる。
「お前じゃオレの球は打てねえよ」
「もし打ったらどうする?」
「ん~、そうだなぁ…何でも言う事聞いてやるよ」
「おい、絶対だな?」
「ウソは言わねえよ」
片山は自信満々で答えた。
(ヨシ、どんな形であれヒットはヒットだ…となると、アレしかないよな)
斐川は打席でほくそ笑む。
(何やってんだ、コイツら)
2人のやり取りを他所に外崎がサインを出した。
しかし片山は首を振る。
(首振るなって言ったろ!)
しかし外崎も同じサインを出す。
またしても片山が首を振る。
(あのヤロー)
じゃあ、これはどうだと別のサインを出した。
片山は頷き、初球を投げた。
インコースベルトの高さへストレートが。
「へっ、貰った」
斐川は咄嗟にバントの構えをした。
「バカが!」
しかし、ボールは内側に食い込み、バントの構えをひていた斐川の脇腹を直撃。
「グボォ…」
片山はツーシームをインコースギリギリに投げていた。
苦悶の表情を浮かべる斐川、しかし球審のコールはストライク。
「…おい、ちょっと待て…オレは当たったんだぞ!それなのに、何でストライクなんだ!」
「バントの構えでボールに当たらなきゃストライクだろ!そんな事すらも分からないのか!」
「あぁ~あ、バカだねぇ全く…」
球審にドヤされ、顔を真っ赤にしている。
「ルールすら分からないのかよ…ったく、どうしようもねぇヤツだな」
斐川はその後も打席に立ったが、3球目のチェンジアップを引っ掛けセカンドゴロでアウト。
続いて3番ボーンが左打席に入る。
「この次は鬼束さんか…そうなると、ここでアウトにしておかないと」
初球ボール、2球目スライダーが決まりストライク。
3球目は縦のカーブでツーストライクと追い込み、4球目は高めの釣り球でツーナッシング。
5球目は外に沈むチェンジアップを引っ掛けてサードゴロでツーアウト。
【4番セカンド鬼束 背番号5 新潟パイレーツ】
この試合まだノーヒットの鬼束が右打席に入った。
オールスターゲームでの成績は13打数2安打と良くない。
結局鬼束は初球のストレートを打ち損じ、ライトフライでツーアウト。
5番上田は空振りの三振でスリーアウトチェンジ。
6回の裏、ネプチューンリーグの攻撃は3番浅倉から。
マウンドには四番手ピッチャー、マリナーズの中継ぎ黒沢にスイッチ。
浅倉はフルカウントまで粘り、フォアボールで出塁。
4番ロドリゲスの打席で二盗を敢行。
間一髪セーフとなり、ロドリゲスが3球目の高めに入ったストレートを捕え、レフトスタンドへツーランホームランを放ち1点差にする。
その後は両チーム無得点のまま、最終回となる。
9回の裏、ネプチューンリーグの攻撃は2番白石から。
ここで財前監督代行がベンチを出て、バッターの交代を告げた。
ネクストバッターズサークルには唐澤が素振りをしている。
【ネプチューンリーグ、選手の交代をお知らせします!バッター白石に代わり、唐澤。3番ショート唐澤 背番号1 SAITAMA Glanz】
歓声が沸き起こり、唐澤が打席に入った。
マウンド上はドジャースの守護神橘。
唐澤は初球勝負と読み、真ん中高め153km/hのストレートを弾き返した。
打球は右中間を深々と破るツーベースヒット。
3番浅倉はここまでノーヒットだが、財前監督代行は代打を出さず浅倉に託した。
その浅倉は4球目のチェンジアップを上手く捕え、センターオーバーのタイムリースリーベースヒットで同点に追いつく。
土壇場で同点に追いつき、尚もチャンスは続く。
一打サヨナラの場面でバッターは先程ツーランホームランを打ったロドリゲス。
ここは敬遠策をとり、ロドリゲスを歩かせる。
だが、浅倉はこの敬遠を虎視眈々と狙っていた。
2球目にアウトコース高めに大きく外れた敬遠球のスキにホームスチールを敢行。
キャッチャー保坂が咄嗟にタッチするが、判定はセーフ。
サヨナラホームスチールでネプチューンリーグが逆転勝利をおさめた。
場内割れんばかりの歓声で、ベンチも狂喜乱舞している。
MVPは勿論、ホームスチールを成功させた浅倉が受賞。
賞金300万をゲットした。
かくしてオールスターゲームは盛況のうちに終了し、4日後からペナントレースが再開する。
Glanzの初戦は京都スーパーフェニックスとの三連戦だ。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる