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ペナント真っ只中
酷い解説
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【1回の表、名古屋99ersの攻撃は…1番サード比嘉。背番号1】
「トップバッターの比嘉が素振りを二度、三度して右打席に入ります。
バットの先端をピッチャーに向ける独特のフォーム、これをスコーピオン打法と呼ばれてますが、この体勢から鋭いスイングで長打を放つ、まさにサソリの様な一撃を見舞う選手です!」
試合はスタートした。
「マウンド上の冴島は上体を屈めて毒島のサインを見ている。
サインが決まり、第1球を投げた!
真ん中低めへストレートが決まる!」
「今の打とうと思ったら打てる球だろ」
「待球戦法でしょうかね?初球は146km/hのストレートが決まり、ワンストライク!」
「このピッチャーはローテーション入りしてないのか?」
「冴島は今日が初先発ですから、ローテーション入りはしてないみたいですね」
櫻井は冴島をローテーションの一角に入れなかった。
何か秘策でもあるのだろうか。
「何せ、8球団が指名した程のピッチャーだからな。
左で155を出せるのは強みだよな」
左ピッチャーで150を超えるのは、翔田、中澤、那須川、冴島の4人のみ。
全てネプチューンリーグのピッチャーだが、アポロリーグには150はおろか、140も出せるかどうかの軟投派左腕しかいない。
「初球を見送った比嘉。
バットを頭上に持ち、先端を冴島に向けるスコーピオン打法で迎え打つ!」
「少年野球でも、コイツの真似するガキが多いそうじゃねぇか」
「少年ファンはプロの真似をしたがりますからね。
玉井尻さんも、少年の頃は誰かの真似をしたんじゃないですか?」
「オレか?オレは…そうだな、もう無くなったチームだけど、埼玉ギャランドゥの宇棚珍太郎のバッティングフォームを真似したっけなぁ」
「宇棚珍太郎というと、この99ersを昨年まで率いていた監督、ナダウ・ヤマオカの本名ですね」
ちなみに、ヤマオカは監督を退いて99ersのシニアディレクターに就任している。
GMは息子のひろしが就任3年目になる。
と言っても、相変わらず意味不明な言動で周囲を困惑させるだけなのだが。
「でもよぉ、コイツのフォームを真似したって打てねえだろ!
近頃のガキはろくでもねぇ事ばっか覚えるからな」
更に抗議の電話が殺到した。
【あんなふざけた解説者はクビにしろ!】
お怒りもごもっともだ。
「次は何を投げるのか…
サインが決まり、2球目を投げた!
今度はインコースへのスライダー!比嘉は微動だにせず、ボールの判定!」
「ボール球で振らせようとしたんだろうが、比嘉の選球眼は一流だぜ。
もう少し精度のある変化球を投げなきゃ、比嘉は打ち取れないぞ」
「冴島は今の様な大きく曲がるスライダーと、小さく縦に変化するスライダーの2種類を投げ分ける事ができますが、どっちの方が有効的でしょうか?」
「今は大きく変化する球より、ツーシームやカットボール、スプリットみたいに手元で微妙に変化する球が主流だろ?
芯を外して打たせるピッチングをするなら、微妙に変化する球が有効だよな」
「99ersで言えば、那須川のフロントドア、バックドアというツーシームとカットボールですね」
所謂、グラウンドボールピッチャー呼ばれるタイプだ。
「でも、冴島は打たせて取るピッチングじゃなく、三振を獲るタイプだろ?
三振を獲るには、手元で微妙な変化する球より、大きく曲がったり落ちたりする球の方がいいんじゃないのか」
「なる程…冴島は大学時代、ドクターKと呼ばれる程の奪三振率が高いピッチャーでした」
どんな球投げようが、抑える事が出来ればそれでいいじゃないか、と思うんだが。
「まぁ、球種が多いのは武器にもなるし、それはそれでいいんだけどな」
「マスクを被る毒島はどんな球を要求するか。
比嘉はスコーピオンの構えのまま、獲物を狙うかのような鋭い目つきで冴島を捕らえる!」
「オレはさぁ、外崎がナンバーワンキャッチャーって言われてるけど、毒島もそれに匹敵するキャッチャーだと思うけどな」
「玉井尻さんイチオシのキャッチャーというワケですね」
「何でコイツをサードにコンバートしたのかなぁ…あのままキャッチャーやってたら、間違いなく外崎より評価は高くなってたハズだぜ」
毒島をサードにコンバートしたのは前監督の榊だ。
「去年トレードでドジャースに移籍した保坂を正捕手にする為サードにコンバートしたんですよね」
「あの榊ってヤツは、ホントにバカだよな!
結局、保坂だってトレードで放出したじゃん!」
「サードを守っている吉岡との交換トレードで梁屋と共にドジャースにしました」
「めちゃくちゃなトレードだよな、元チームメイトを獲るのに正捕手と投手再転向のヤツを放出するんだから、その場しのぎの補強じゃねぇか」
言いたい放題だ。
すると、放送席の扉がガチャっと開き、榊が乱入した。
「おぉーっと、榊GMが放送席に乱入!監督時代には何度かあった光景ですが、GMになってからは初の乱入です!」
「ま、また来やがったのか、コイツは!」
しかもカメラにバッチリ映っている。
「やい、タマキン!テメー、さっきから聞いてりゃ、好き勝手言いやがって!テレビ局に抗議の電話が殺到してんだぞ!」
カメラ目線で捲し立てる。
「な、何ぉー!オレの解説の何が悪いんだ」
榊と玉井尻はキングダム時代のチームメイトだが、榊はエース、玉井尻はレギュラーではなくベンチ要員でしかもパシリ役だった。
「テメーみたいなインチキ解説者はこうしてやる!」
そう言うと、榊は玉井尻を持ち上げツームストンパイルドライバーで脳天から垂直に落とした。
ドガッ!!
「ウギャッ…」
玉井尻は頭から床に突き刺さったまま失神KO。
「ウワハハハハハハ!抗議の電話をした視聴者の諸君!キミたちの代わりに私が成敗してやったぞ!」
カメラ目線でポーズを決める。
「えぇー、一旦CMです!」
「トップバッターの比嘉が素振りを二度、三度して右打席に入ります。
バットの先端をピッチャーに向ける独特のフォーム、これをスコーピオン打法と呼ばれてますが、この体勢から鋭いスイングで長打を放つ、まさにサソリの様な一撃を見舞う選手です!」
試合はスタートした。
「マウンド上の冴島は上体を屈めて毒島のサインを見ている。
サインが決まり、第1球を投げた!
真ん中低めへストレートが決まる!」
「今の打とうと思ったら打てる球だろ」
「待球戦法でしょうかね?初球は146km/hのストレートが決まり、ワンストライク!」
「このピッチャーはローテーション入りしてないのか?」
「冴島は今日が初先発ですから、ローテーション入りはしてないみたいですね」
櫻井は冴島をローテーションの一角に入れなかった。
何か秘策でもあるのだろうか。
「何せ、8球団が指名した程のピッチャーだからな。
左で155を出せるのは強みだよな」
左ピッチャーで150を超えるのは、翔田、中澤、那須川、冴島の4人のみ。
全てネプチューンリーグのピッチャーだが、アポロリーグには150はおろか、140も出せるかどうかの軟投派左腕しかいない。
「初球を見送った比嘉。
バットを頭上に持ち、先端を冴島に向けるスコーピオン打法で迎え打つ!」
「少年野球でも、コイツの真似するガキが多いそうじゃねぇか」
「少年ファンはプロの真似をしたがりますからね。
玉井尻さんも、少年の頃は誰かの真似をしたんじゃないですか?」
「オレか?オレは…そうだな、もう無くなったチームだけど、埼玉ギャランドゥの宇棚珍太郎のバッティングフォームを真似したっけなぁ」
「宇棚珍太郎というと、この99ersを昨年まで率いていた監督、ナダウ・ヤマオカの本名ですね」
ちなみに、ヤマオカは監督を退いて99ersのシニアディレクターに就任している。
GMは息子のひろしが就任3年目になる。
と言っても、相変わらず意味不明な言動で周囲を困惑させるだけなのだが。
「でもよぉ、コイツのフォームを真似したって打てねえだろ!
近頃のガキはろくでもねぇ事ばっか覚えるからな」
更に抗議の電話が殺到した。
【あんなふざけた解説者はクビにしろ!】
お怒りもごもっともだ。
「次は何を投げるのか…
サインが決まり、2球目を投げた!
今度はインコースへのスライダー!比嘉は微動だにせず、ボールの判定!」
「ボール球で振らせようとしたんだろうが、比嘉の選球眼は一流だぜ。
もう少し精度のある変化球を投げなきゃ、比嘉は打ち取れないぞ」
「冴島は今の様な大きく曲がるスライダーと、小さく縦に変化するスライダーの2種類を投げ分ける事ができますが、どっちの方が有効的でしょうか?」
「今は大きく変化する球より、ツーシームやカットボール、スプリットみたいに手元で微妙に変化する球が主流だろ?
芯を外して打たせるピッチングをするなら、微妙に変化する球が有効だよな」
「99ersで言えば、那須川のフロントドア、バックドアというツーシームとカットボールですね」
所謂、グラウンドボールピッチャー呼ばれるタイプだ。
「でも、冴島は打たせて取るピッチングじゃなく、三振を獲るタイプだろ?
三振を獲るには、手元で微妙な変化する球より、大きく曲がったり落ちたりする球の方がいいんじゃないのか」
「なる程…冴島は大学時代、ドクターKと呼ばれる程の奪三振率が高いピッチャーでした」
どんな球投げようが、抑える事が出来ればそれでいいじゃないか、と思うんだが。
「まぁ、球種が多いのは武器にもなるし、それはそれでいいんだけどな」
「マスクを被る毒島はどんな球を要求するか。
比嘉はスコーピオンの構えのまま、獲物を狙うかのような鋭い目つきで冴島を捕らえる!」
「オレはさぁ、外崎がナンバーワンキャッチャーって言われてるけど、毒島もそれに匹敵するキャッチャーだと思うけどな」
「玉井尻さんイチオシのキャッチャーというワケですね」
「何でコイツをサードにコンバートしたのかなぁ…あのままキャッチャーやってたら、間違いなく外崎より評価は高くなってたハズだぜ」
毒島をサードにコンバートしたのは前監督の榊だ。
「去年トレードでドジャースに移籍した保坂を正捕手にする為サードにコンバートしたんですよね」
「あの榊ってヤツは、ホントにバカだよな!
結局、保坂だってトレードで放出したじゃん!」
「サードを守っている吉岡との交換トレードで梁屋と共にドジャースにしました」
「めちゃくちゃなトレードだよな、元チームメイトを獲るのに正捕手と投手再転向のヤツを放出するんだから、その場しのぎの補強じゃねぇか」
言いたい放題だ。
すると、放送席の扉がガチャっと開き、榊が乱入した。
「おぉーっと、榊GMが放送席に乱入!監督時代には何度かあった光景ですが、GMになってからは初の乱入です!」
「ま、また来やがったのか、コイツは!」
しかもカメラにバッチリ映っている。
「やい、タマキン!テメー、さっきから聞いてりゃ、好き勝手言いやがって!テレビ局に抗議の電話が殺到してんだぞ!」
カメラ目線で捲し立てる。
「な、何ぉー!オレの解説の何が悪いんだ」
榊と玉井尻はキングダム時代のチームメイトだが、榊はエース、玉井尻はレギュラーではなくベンチ要員でしかもパシリ役だった。
「テメーみたいなインチキ解説者はこうしてやる!」
そう言うと、榊は玉井尻を持ち上げツームストンパイルドライバーで脳天から垂直に落とした。
ドガッ!!
「ウギャッ…」
玉井尻は頭から床に突き刺さったまま失神KO。
「ウワハハハハハハ!抗議の電話をした視聴者の諸君!キミたちの代わりに私が成敗してやったぞ!」
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