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ペナント真っ只中
秘策
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試合は6回の表が終わって0対0のまま。
ヒットの数はGlanzが僅か1安打に対し、ブレーブスは4安打。
しかも、Glanzのヒットは中山の内野安打のみ。
ブレーブスは結城の2安打を含む4安打を放つが、得点には到らず。
ブレーブス先発高山はここまで5奪三振。
唐澤に対しては、第1打席はショートゴロ、第2打席は縦のスライダーで三振を奪う。
結城は試合前、高山に唐澤の攻略法を授けた。
「高山くん、今日の試合は唐澤くんをノーヒットに抑えるんだ」
「エッ…唐澤さんをですか?」
左対左だが、相手は日本を代表する天才バッター、片や高山はプロの道を歩みだしたばかり。
「唐澤さんを抑えるって…」
「ウン…キミなら出来る。
唐澤くんはこれと言った弱点は無い。
でも大丈夫…最後はド真ん中に投げればいいんだ」
「ド真ん中?それじゃ打たれますよ!」
打たれるに決まってる、高山はそう思った。
「それが違うんだな…いいか、相手は天才バッターだ。
その天才に対してド真ん中を投げるピッチャーなんていると思うか?」
「いませんよ、そんな無謀なピッチャーなんて」
「そりゃそうだ。
でも、いないからこそ、敢えてド真ん中に放ってみるのも一つの方法なんじゃないかな」
高山は半信半疑だったが、ド真ん中で抑える事が出来た。
【6回の裏ぁ、ブレーブスの攻撃はぁ、3番指名打者ぁ、原田ぁ】
この球場のウグイス嬢はワザと語尾を伸ばしているのだろうか、それとも無理に個性を出そうとしてるのか。
そんな事はさておき、この回先頭の原田が打席に入った。
Glanz先発の寶井はここまで63球を投げている。
最速137km/hの浮き上がるストレートに、スライダー、カーブを交え、決め球のスクリューボールで打ち取るピッチングで無得点に抑える。
「寶井くんはそろそろかもな…」
「どうする、ヒロト。
この回踏ん張ってもらって、7回からはアクーニャを出した方がいいかもな」
「う~ん、それもいいんですけど…もう少し捻りが欲しいトコなんですよね」
櫻井は次の回誰をマウンドに上げようか迷っている。
すると、横で聞いていた助監督兼任の財前が待ってましたとばかりに提案する。
「カントクさんよ、次の回は真咲のアニキがいいと思うぜ」
「真咲っ?だって、アイツはブルペンで…」
その案に櫻井は乗った。
「面白いね!真咲くんなら、ブレーブス打線を翻弄出来そうだし」
「いいのかよ、ヒロト」
「初戦が大事なんですよ、中田さん。
それに、結城くんに真咲くんをぶつけてみるのもいいかなぁって思ってるんです」
櫻井は嬉しそうな顔をしている。
「そうでしょ、カントク!こうなりゃ、アイツ(寶井)は次のチサトの打席で交代させてみようよ!」
「えぇーっ!結城の打席って…そりゃ、いくら何でも…」
「いいね、それ!よし、結城くんの打席で真咲くんに交代しよう」
「大丈夫なのかよ、ホントに…」
中田は不安な顔をしている。
「大丈夫だって!真咲のアニキなら、相手がチサトでもカンタンに抑えるって!」
「お前なぁ…」
そんなベンチの状況を知ってか知らずか、寶井は原田をツーストライクに追い込んだ。
右バッターの原田に対して、毒島は決め球のスクリューボールを要求した。
寶井が大きく頷き、地面スレスレの位置からボールをリリースした。
フワッと浮き上がった球はアウトコース低めに沈んだ
。
原田のバットが空を切る。
「ストライクアウト!」
先ずはアウトを一つ。
寶井は初先発のプレッシャーからか、疲労の色が隠せない。
「ヨシ、ここで交代だぁ」
「財前くん、キミも準備してくれ」
「エッ、オレ?」
財前が驚いた顔をする。
「勿論だよ、この試合何がなんでも勝ちにいくから、勝負所で代打に送るつもりさ」
「マジ?」
「大マジ」
そう言うと、櫻井はベンチを出て審判に交代を告げた。
【Glanzぅ、ピッチャーの交代をお知らせまぁす!ピッチャー寶井に代わりましてぇ、真咲ぃ、ピッチャー真咲ぃ、背番号32ぃ】
このコール何とかならないものか。
ライトポール際のフェンスの扉が開いた。
中から真咲が登場した。
まるで近所へ散歩するかの様な足取りでゆっくりとマウンドに向かう。
「緊張感の無ぇ登場の仕方だなぁ」
監督、助監督、ヘッドコーチの3人がマウンドで真咲を待つ。
「やぁやぁ、お待たせ!おぅ、ヒデ!初先発は疲れるだろ」
寶井を見てニヤッと笑う。
「はァ…1球1球が異様に疲れます」
寶井は疲労困憊の様子だ。
「後は任せろ、よく頑張った!」
寶井の背中をバンと叩いた。
「すいません…後はお願いします」
寶井はベンチに下がった。
「アニキ、この試合何がなんでも勝つってカントクが言ってるから、チサトを抑えてくれよな」
「ほぅ、何がなんでもね…という事はタカヒロ(財前)、お前の出番もあるっていうワケだな」
真咲はハハハッと笑いながら答える。
「アンタとオレで勝つんだとさ」
「りょーかいっ、こりゃ重大な任務だな」
緊張感の無い真咲だが、これが真咲というピッチャーだ。
ヒットの数はGlanzが僅か1安打に対し、ブレーブスは4安打。
しかも、Glanzのヒットは中山の内野安打のみ。
ブレーブスは結城の2安打を含む4安打を放つが、得点には到らず。
ブレーブス先発高山はここまで5奪三振。
唐澤に対しては、第1打席はショートゴロ、第2打席は縦のスライダーで三振を奪う。
結城は試合前、高山に唐澤の攻略法を授けた。
「高山くん、今日の試合は唐澤くんをノーヒットに抑えるんだ」
「エッ…唐澤さんをですか?」
左対左だが、相手は日本を代表する天才バッター、片や高山はプロの道を歩みだしたばかり。
「唐澤さんを抑えるって…」
「ウン…キミなら出来る。
唐澤くんはこれと言った弱点は無い。
でも大丈夫…最後はド真ん中に投げればいいんだ」
「ド真ん中?それじゃ打たれますよ!」
打たれるに決まってる、高山はそう思った。
「それが違うんだな…いいか、相手は天才バッターだ。
その天才に対してド真ん中を投げるピッチャーなんていると思うか?」
「いませんよ、そんな無謀なピッチャーなんて」
「そりゃそうだ。
でも、いないからこそ、敢えてド真ん中に放ってみるのも一つの方法なんじゃないかな」
高山は半信半疑だったが、ド真ん中で抑える事が出来た。
【6回の裏ぁ、ブレーブスの攻撃はぁ、3番指名打者ぁ、原田ぁ】
この球場のウグイス嬢はワザと語尾を伸ばしているのだろうか、それとも無理に個性を出そうとしてるのか。
そんな事はさておき、この回先頭の原田が打席に入った。
Glanz先発の寶井はここまで63球を投げている。
最速137km/hの浮き上がるストレートに、スライダー、カーブを交え、決め球のスクリューボールで打ち取るピッチングで無得点に抑える。
「寶井くんはそろそろかもな…」
「どうする、ヒロト。
この回踏ん張ってもらって、7回からはアクーニャを出した方がいいかもな」
「う~ん、それもいいんですけど…もう少し捻りが欲しいトコなんですよね」
櫻井は次の回誰をマウンドに上げようか迷っている。
すると、横で聞いていた助監督兼任の財前が待ってましたとばかりに提案する。
「カントクさんよ、次の回は真咲のアニキがいいと思うぜ」
「真咲っ?だって、アイツはブルペンで…」
その案に櫻井は乗った。
「面白いね!真咲くんなら、ブレーブス打線を翻弄出来そうだし」
「いいのかよ、ヒロト」
「初戦が大事なんですよ、中田さん。
それに、結城くんに真咲くんをぶつけてみるのもいいかなぁって思ってるんです」
櫻井は嬉しそうな顔をしている。
「そうでしょ、カントク!こうなりゃ、アイツ(寶井)は次のチサトの打席で交代させてみようよ!」
「えぇーっ!結城の打席って…そりゃ、いくら何でも…」
「いいね、それ!よし、結城くんの打席で真咲くんに交代しよう」
「大丈夫なのかよ、ホントに…」
中田は不安な顔をしている。
「大丈夫だって!真咲のアニキなら、相手がチサトでもカンタンに抑えるって!」
「お前なぁ…」
そんなベンチの状況を知ってか知らずか、寶井は原田をツーストライクに追い込んだ。
右バッターの原田に対して、毒島は決め球のスクリューボールを要求した。
寶井が大きく頷き、地面スレスレの位置からボールをリリースした。
フワッと浮き上がった球はアウトコース低めに沈んだ
。
原田のバットが空を切る。
「ストライクアウト!」
先ずはアウトを一つ。
寶井は初先発のプレッシャーからか、疲労の色が隠せない。
「ヨシ、ここで交代だぁ」
「財前くん、キミも準備してくれ」
「エッ、オレ?」
財前が驚いた顔をする。
「勿論だよ、この試合何がなんでも勝ちにいくから、勝負所で代打に送るつもりさ」
「マジ?」
「大マジ」
そう言うと、櫻井はベンチを出て審判に交代を告げた。
【Glanzぅ、ピッチャーの交代をお知らせまぁす!ピッチャー寶井に代わりましてぇ、真咲ぃ、ピッチャー真咲ぃ、背番号32ぃ】
このコール何とかならないものか。
ライトポール際のフェンスの扉が開いた。
中から真咲が登場した。
まるで近所へ散歩するかの様な足取りでゆっくりとマウンドに向かう。
「緊張感の無ぇ登場の仕方だなぁ」
監督、助監督、ヘッドコーチの3人がマウンドで真咲を待つ。
「やぁやぁ、お待たせ!おぅ、ヒデ!初先発は疲れるだろ」
寶井を見てニヤッと笑う。
「はァ…1球1球が異様に疲れます」
寶井は疲労困憊の様子だ。
「後は任せろ、よく頑張った!」
寶井の背中をバンと叩いた。
「すいません…後はお願いします」
寶井はベンチに下がった。
「アニキ、この試合何がなんでも勝つってカントクが言ってるから、チサトを抑えてくれよな」
「ほぅ、何がなんでもね…という事はタカヒロ(財前)、お前の出番もあるっていうワケだな」
真咲はハハハッと笑いながら答える。
「アンタとオレで勝つんだとさ」
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