The Baseball 主砲の一振 続編4

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ペナント再開

作戦

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交流戦を優勝したスカイウォーカーズは、再びペナントレースに突入する。


その初戦は、ヘッドコーチに就任した小倉のいる東京キングダムとの3連戦。


キングダムの本拠地、東京ボールパークではホーム用の淡いグリーンのユニフォームに身を包んだ小倉が報道陣と談笑している。


「おい…あのハゲ、キングダムのユニフォームが似合わねぇな」


中田が小倉を指さしてゲラゲラと笑う。


「うゎ~…何か、一人だけ浮いてるなぁ…」


櫻井も笑いを堪える。


「ぬ?おぉー、誰かと思えば…ええっと、誰だったかぬ?」


小倉はこちらを見ると、満面の笑みを浮かべて近づく。


「コッチ来んなハゲ!テメーが来るとツキが逃げるだろ!」


「お久しぶりですね!そうだ、ちょっとお願いがあるんですが」


そう言うと、櫻井はポケットから100円を取り出す。


「ぬ?この100円は何だぬ?」


小倉が首を傾げる。


「ちょうどいいところに来た。おい、ハゲ!喉乾いたから、ダッシュでコーラ買ってこい!」


「ふざけんじゃないぬ!何で、あちきがユーのコーラ買わなきゃなんないんだぬ!」


「うるせえな、ハゲ!さっさと買ってこいよ!」


ドガッ!


「痛てぇっ!あちきを蹴ったな!」


「ギャーギャーうるせぇんだよ、ハゲ!残りの毛むしるぞ、オラッ!」


中田は小倉の帽子を取ると、残り少ない頭髪をむしろうとしている。


「ギャあ、抜ける抜ける!あちきの毛をむしるんじゃないぬ!」



「やかましい、いいから早く買ってこい!」


バキ、ドカッ!


2人でツープラトンのサンドイッチラリアットをかました。



とまぁ、試合前のお遊びはここまでにして、今日の先発はスカイウォーカーズが中5日のエース中邑。

対するキングダムは交流戦3勝を挙げ、勢いに乗る登坂。


先行スカイウォーカーズのスタメンは、

1レフト藤村
2ショート石川
3センター唐澤
4セカンド森高
5サード吉岡
6ライト鬼束
7ファースト結城
8指名打者ジョーンズ
9キャッチャー滝沢

ピッチャー中邑



スカイウォーカーズは現時点のベストメンバーで挑む。


後攻キングダムのスタメンは、


1 セカンド湯原
2 ライト稲葉
3 センター浅倉
4 ファーストロドリゲス
5 サード棚橋
6 レフトアーロン
7 指名打者坂上
8 ショート倉澤
9 キャッチャー小室


ピッチャー登坂



キングダムで今一番怖いバッターは、5番に座る棚橋。


昨年まで高校生だったルーキーは交流戦で4本塁打を放ち、打率も3割をマーク。


将来のキングダムを背負って立つ逸材として、監督の翔田が一番期待する存在。



「ムヒョヒョヒョヒョヒョ!今日こそはアイツらをギャフンと言わせてやるんだぬーーーーん!」


「今日から王国再建のスタートだ」


小倉をヘッドコーチに招いた翔田。


一体どんな策があるというのか。



「藤村くん」


「あ、ハイ」


櫻井が藤村を呼び止める。


「今日の登坂くんはスライダーのキレが良い…」


「分かってますよ、スライダーを捨ててストレートに狙い球を絞れって事でしょ?」


すると櫻井は首を振る。


「フフフ…その逆だよ。
ストレートは捨てて、スライダーを狙うんだ」


「エッ、フツー逆じゃないんじゃないんすか…」


「スライダーを捨ててストレートを打っても、登坂くんを攻略したとは言えない…相手投手の決め球を打って初めて攻略したと言えるんだ」


藤村は首を傾げる。


「じゃあ、追い込まれてストレートを投げてきたらどうするんですか?」


「…見逃せばいい」


「だって…それじゃ、三振しちゃいますよ!」


櫻井の意図が分からない。


「構わないよ…とにかく、キミは登坂くんのスライダーに絞って打つんだ、いいね?」


「は、はい」


藤村は要領を得ないまま、打席に向かった。


「登坂のスライダーはリーグでも1,2を争う程のキレだぞ?藤村にそれを打てって、難しいんじゃないのか?」


中田は隣で腕を組んでいる。


「最強のリードオフマンになるには、相手のウイニングショットを打ち返す事が条件…難しいでしょうが、藤村くんならやってくれると信じていますよ」


「そりゃそうなんだが…アイツにそんな事が出来るのかなぁ」


「フフ、やってくれなきゃ困るんですよ」


櫻井の表情には余裕が見える。


「そうだ、中邑くん!ちょっといいかな?」


ベンチ前でキャッチボールをしている中邑を呼び寄せた。


「ハイ、監督」



「滝沢くんもちょっといいかな」


「ハイ」


滝沢も加わり、2人に作戦を指示した。



「今日キミたちが警戒しなきゃいけないバッターは誰だと思う?」


「誰って…棚橋じゃないですか?」


「ハイ、自分もそう思います」


櫻井は何度も首を振る。


「違う違う…彼には全球ストライクで勝負するんだ」


「ぜ、全球ストライクですか?」


「ウン…打たれてもいいから、全てストライクゾーンの球で勝負だ…」


「打たれてもいいって…どういう事ですか?」


中邑はポカーンとしている。


「相手は今をときめくゴールデンルーキーだ。
生かさず殺さず…そんなところかな」


「ハァ…」


どんな策があるというのか。


スライダーのみを狙えと言われた藤村は困惑したまま打席に立つ。


登坂はスライダーに絶対の自信を持つ。


「プレイボール!」


午後6時、試合はスタートした。


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