The Baseball 主砲の一振 続編4

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交流戦 終盤

鬼神の如く

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「殺っちまえ!」


3度目の乱闘が始まった。


「止めろ!何度言えば分かるんだ!」


結城はボロボロになりながらも、何度も止めに入る。


「うるせぇ、黙ってろボケ!」


ヤンキースの選手が結城を突き飛ばす。


「止めるんだ、この試合没収になるぞ!」


「うるせぇ!」


もう止まらない。


気づけば、グラウンドのあちこちで取っ組み合いが始まっている。


唐澤は久住と、財前は上田と、藤村は与那嶺相手にケンカをしている。


そこへJINや南野が乱闘に加わり、収拾がつかない状態となった。


それでも結城は身体を張って仲裁する。


「皆、止めろ!こんな醜態を晒していいのか、止めるんだ!」


しかし、誰も聞いちゃいない。


「結城くん、危ない!」


マウンドに駆け寄った櫻井が声を上げる。


「エッ…」


振り向いた瞬間、久住の右ストレートが顔面を捕らえた。


バキッ…


「ガハッ…」


不意打ちを食らい、結城はバタンと倒れた。


「ケッ、うるせぇんだよ!1人だけいい子ブリやがって、何が球界のジェントルマンだ!」


久住は知らない。


結城のもう一つの顔を。



「あぁ、ヤバい…」


「結城さんにあんな事するなんて…」




「アァ?何がヤベェんだよ!コイツ殴ったらどうヤベェってんだよ、なぁ!」


そう言うと、結城の背中を踏みつける。



「うゎ…」


「アイツ終わったな…」



「さっきから何、グダグダ言ってんだ!コイツはオレに殴られてダウンしてるじゃねぇか!」


「誰がダウンしてるって…?」


「アァ?」


久住は後ろを振り返った。


「…な、お前、いつの間に…」


じゃあ、今踏みつけてるのは誰だ?


久住はゆっくりと視線を落とした。


「ゲッ!!上田さん…」


「グッ…うぅ」

久住が足で踏みつけている相手は結城ではなく、チームメイトの上田だった。


「…っ、な、何だよオイ…また殴られてぇのか…」


言葉とは裏腹に、表情が強ばる。


口から血を流し、鬼のような形相をした結城がユラ~っとした状態から、目にも留まらぬ速さで久住を吹っ飛ばす。


バコォ…



「グヘッ…」


結城のワンパン(ワンパンチ)で久住の意識は飛んだ。


「グヮァァァ!!」


「ヤバい、結城さんがキレたぞ!」


唐澤の顔が恐怖で引つる。


ヤンキーモードに入った結城は怒り狂い、目の前の相手をバタバタと薙ぎ倒す。


「グェっ」


「ガハッ…」


「グゥ…」


「グハッ!」


あっという間に数人をKO、もう誰も結城を止められない。



「オラッ、テメーも舞え!」


バキッ、ドカッ、ボコッ!


一瞬のうちに揉み合っている連中を倒した。


「うわぁぁぁ、逃げろ!」


「待て、ゴラァ!!」


逃げる相手を捕まえては倒し、捕まえては倒す。


いくらケンカが強いヤンキースの選手でも、結城の前では赤子同然。



たった一人で暴走族を壊滅した程の強さを誇る。


「結城さん、止めて下さい!もう、全員倒れてます!」


唐澤が止めに入るが、結城は攻撃の手を止めない。


「どけ、オラァ!!」


バコッ!


「ギャァ…」


結城の左ストレートを食らい、唐澤は失神KO。



「チサト、仲間を倒してどうすんだ!落ち着けって!」


「うるせぇ!」


「ぐあぁ…」


財前が背後から羽交い締めにするが、結城はその体勢から財前を投げ飛ばした。



「怒りが収まるまで誰も止める事が出来ない…」


「味方のオレらまで殺られるのかよ…」


藤村とJINは、恐怖のあまり立ちすくむ。



「テメーら、一人残らずぶち殺してやらぁ!!」



まるで鬼神の如く。


すると、ヘッドコーチの陳が結城の前に立ちはだかる。


「よくもウチの選手をやってくれたナ!」


台湾で習得した中国拳法で迎え撃つ。



「失せろ、チャイナ!!」


ドガッ!


「ぐあぁ…」


まともにラリアットを食らい、陳は一回転して地面に叩きつけられた。



「青幇っ…テメー、よくも青幇を殺りやがったな!!」



守山が剛腕を力任せに振り抜く。


バキッ!


守山の右拳が結城の顔面にクリーンヒットした。


「この、老いぼれが!テメーのパンチなんざ、効いちゃいねえんだよっ!!」


結城はまともに食らったが、倒れるどころか、守山に襲いかかる。


すると、


「どけっ、ボス猿!」


という声が。


「何でお前がここにいるんだ!」


スーツ姿の榊が間に割って入った。


「テメーもぶっ飛べっ!!」


結城は榊目掛けてロシアンフックを炸裂!


しかし、榊はこれを読んで上手くかわし、一瞬にして結城の背後をとった。


「これで大人しくしてろっ…」


その体勢から、得意のヘソで投げるバックドロップで結城を叩きつけた。


ズダーン!!

と強かに頭部を打ち付け、結城の動きは止まった。


「ヨシ、今だ!」


榊は覆い被さるように、背後からスリーパーホールドで頸動脈を締め上げた。


「グッ…ガハッ…ッグ…」


バタバタともがいていたが、最後は榊が結城を絞め落とした。



「まるで台風が過ぎ去った様に、物が散乱してるじゃねぇか」


「一人で相手チームを倒してしまった…」


ホントにそんな感じだ。




結局、両チーム合わせて6名が退場となり、試合はスカイウォーカーズが怒涛の攻撃で8点を奪い勝利した。


翌日の試合は、前日とは打って変わってマナーの良い試合運びだったが、両チーム共決定打を欠いて0対0の引き分けに終わり、交流戦は同率でヤンキースとスカイウォーカーズの同時優勝となった。


MVPは打率0.384 本塁打3 打点18 盗塁6をマークした唐澤が受賞。


尚、ヤンキースはこれを機にラフプレーがかなり減少したそうな。

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