The Baseball 主砲の一振 続編4

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交流戦 中盤

バットを後ろに

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櫻井の采配は見事的中した。


レフト結城、ファーストジョーンズ共に危なげない守備でウォーリアーズ打線を0点に抑える。


守備が良くなると、攻撃にもリズムが出てくる。


3回にジョーンズが第6号ソロホームランで1点を追加すると、4回にはランナー二塁という場面で結城が右中間突破のタイムリーツーベースで更に1点追加。


6回には、ジョーンズがランナー三塁、一塁の場面でセンター前で4点目を挙げ、7回には財前が第14号ツーランでトドメを刺した。


先発マクダウェルは5回にシュミットのソロアーチで1点を失うものの、僅か94球で完投。

5勝目を挙げた。


試合前、藤村を散々コケにした工藤だが、藤村のホームランをアシストした挙句、マクダウェルの前に4打数ノーヒットと散々な結果に終わった。


この不甲斐なさに札幌のファンは罵声を浴びせた。


【工藤っ!テメー、オウンゴール決めてノーヒットとはどういうつもりだ!】


【お前、スカイウォーカーズの回し者か!】


【お前のせいで敗けたんだぞ!少しは責任感じろ!】


この敗戦を機に、工藤は長いスランプに突入した。



翌日の2戦目、スカイウォーカーズは先発が中5日の中邑。

ウォーリアーズが左の橋本が先発。


スタメンはスカイウォーカーズが、


1レフト庵野
2ショート石川
3ライト唐澤
4セカンド森高
5サード鬼束
6ファースト結城
7キャッチャー滝沢
8ピッチャー中邑
9センター財前


ウォーリアーズのスタメンは、

1センター友永
2サード三原
3レフト工藤
4ファーストブライアン
5ライトシュミット
6ショート佐藤
7セカンド原田
8キャッチャー池田
9ピッチャー橋本

ウォーリアーズのスタメンに変更は無し。


そして、ベンチ裏では藤村が畑中コーチとマンツーマンでフォームを矯正を行っている。


「おら~、また前屈みになってるぞ!」


「は、はい…はぁ、はぁ」


試合前から今までずっと素振りをしている。


既に何百回とスイングしているが、どうしても姿勢が前傾になってしまう。


手はマメだらけで、バットを握る度に激痛が走る。


「おいおい、もうバテたのか?」


「いや、まだっす…」


「お前、アイスホッケーのクセが抜けきれないのは仕方ないとして、もう少し野球寄りの考えでスイングしてみろよ」


「野球寄り…って言うのは?」


そんな事言われてもピンと来ない。


「ホッケーの時は前傾でシュート打つだろ?」


「まぁ…そう言われれば、背筋伸ばしてシュート打つより前傾の方が打ちやすいっすね」


「例えばだ…お前はスイングがアッパー気味になってるんだよ。
今は落ちる球主流だから、アッパースイングでも構わないけど、高めの球打つのにアッパーで打てるか?」


「ムリっす」


「前屈みで高めの球打てるか?」


「ムリっす」


「お前を抑えるには、高めの球投げときゃ簡単に打ち取れるんだよ」


前傾でしかもバットを真正面で垂直に持っているフォームでは高めの球は打ちにくい。


「お前、バットを垂直じゃなく、後ろで寝かせ気味に構えてみろよ」


言われた通り、バットを後ろにして少し寝かせ気味に持った。


「そこからスイングしてみろよ」


「こうかな…」


ビュッ!


「あ、今までと違う!」


「そりゃそうだよ!お前は今まで身体の正面でバットを構えてたよな?それだと、一旦後ろに引いてそれからスイングを始動するだろ?
後ろに構えると、その状態からスイング出来るじゃん?ムダな動作が省けるんだよ」


バットを後ろに構えると、その体勢から流れるようなスイングが出来る。

今までは一度後ろに引いて、そこから始動するので手間がかかるし、差し込まれる場合も多い。


長打が出ないのはこのせいでもある。


「その構えで打ってみろ。いくぞ?」


畑中がボールをトスした。


カコン!


鋭い打球がネットに突き刺さる。


「あ、スゲー!」


どうやら手応えを感じたらしい。


「分かったろ?垂直に持つより、後ろで寝かせ気味に構えた方が打ちやすいだろ」


「確かに…スムーズにバットを出せる…」


畑中は更に欠点を指摘した。


「後もう一つ。お前、何でバットを目一杯長く持ってんだ?」


藤村はグリップを目一杯長く持つ。


「言われてみれば…気が付かなかったけど、バットを長く持ってたんだ…」


「バット短く持っても、飛距離は大して変わらないぞ」


「そうですかね?」


畑中の言われた通り、バットを短く持ってスイングした。


ブォン!


「あ、スゲー音した!」


「だろ?お前はバットを短く持って、素早くスイングすればいいんだ。
それだけスイングが速けりゃ、短く持ってもオーバーフェンス出来るんだぞ!」


「知らなかった…」


知らないワケが無い。


藤村は頭ごなしに左で打てと言われただけに、コーチの聞く耳を全く持ってなかった。


「もう1球行くぞ?ホレ」

教えられた通りの構えから、トップスピードでバットを取られた。



ガコーン!


さっきよりも痛烈なライナーがネットに突き刺さる。


「分かっただろ?前屈みで垂直に持てば、身体に力が入り過ぎてスイングがぎこちないんだよ。
その点、後ろに構えれば鋭いスイングが出来るんだよ」


「…なる程」


「なる程じゃねぇ!今教えた通り、それでバットを振れ!」


モノになるにはもう少し掛かりそうだ。


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