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球春到来
モデルチェンジ
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ストレートだと思ったのに、まさかのカーブを投じた金城。
傍から見れば、単に凡退しただけと思われるだろうが、唐澤にとってはこの凡退が尾を引く。
唐澤をサードゴロに抑え、2番の石川を迎える。
石川は現在6打点でチームトップ。
まだ5試合目だが、チャンスの場面に回ってくる機会が多い。
今年の象徴でもある、森高との二遊間に加え、2番という重要な打順を任され、チームの中心選手になりつつある。
石川は打席の後ろに立ち、オーソドックスなフォームながらバットを上段に構える。
つま先を高々と上げ、金城が初球を投げた。
アウトコースギリギリにストレートが決まる。
「ストライク!」
金城のストレートは最速で148km/hと今どきのピッチャーにしては決して速い球ではない。
だが、金城のストレートはクセがあり、ツボにハマると打ち崩すのは相当厄介だ。
(ナチュラルにカットする球だな)
金城が投げるストレート、特にフォーシームは右ピッチャーでありながら、左ピッチャーが投げるストレートによく似ている。
左ピッチャーのシュート回転するストレートそのもので、金城自身もその事を理解して上手く投げている。
大学時代のチームメイト冴島が左の速球派で奪三振能力に長けていたのに対し、金城は球速もそこそこでバットの芯を外すグラウンドボーラータイプのピッチャーだったせいで、どうしても冴島の方に注目が集まる。
「三振獲るより、打たせて取るピッチングの方が優秀なんだ…」
ベンチでは織田が金城のピッチングを見てほくそ笑む。
結局、石川は2球目のツーシームでセンターフライに倒れ、3番結城は落差こそ小さいが、鋭く落ちるスプリットを引っ掛けセカンドゴロでスリーアウトチェンジ。
1回の表、スカイウォーカーズは三者凡退で終了した。
1回の裏、レボリューションズの攻撃は先頭打者の結城司。
マウンド上には、昨年の最多勝真咲が恒例となった柔軟体操をしている。
まるで軟体動物みたいにしなやかで細い手足を有り得ない角度に曲げている。
その動きに観衆は驚きの声を上げる。
「相変わらず柔らかい身体だな…あれじゃヨガのインストラクターよりも柔らかいんじゃないのか」
「真咲くんの身体は先天性の柔らかさもあるんでしょうが、訓練の賜物でもあるんじゃないでしょうか」
櫻井が指摘するように、真咲は生まれつき柔らかい身体を更に柔らかくするよう、訓練を重ねた。
野球選手、特にピッチャーは身体が柔軟だが、真咲の柔らかさは桁違いだ。
この柔軟な身体をフルに使い、左腕をムチの様にしならせる。
【1回の裏、レボリューションズの攻撃は…1番センター結城。背番号3】
そんな真咲にも苦手とするバッターがいる。
それが結城の弟、司だ。
昨年までの対戦成績は39打数22安打、そのうち4本ホームランを打たれている。
いくら攻略法を練っても通用しない。
これは相性の問題なのだろうか。
「ヘッ、のっけからピンチじゃねぇか…この試合、完封なんて100パー有り得ないぜ」
ブルペンでは、モニターを見ながら降谷がニヤッと笑みを浮かべている。
完封が出来なければ、櫻井、高峰、真咲の3人は辞任する事になる。
「サッサと打たれろ、バーカ」
画面に向かって毒づく。
マウンドでは真咲がヤル気の無い表情を浮かべる。
「めんどくせぇな、ったく…コイツを打ち取る為だけにこんな球種を覚えなきゃならないなんて」
昨年のシーズンオフに真咲は新球をマスターするべく、休日を返上して猛特訓した。
「面倒臭いけど、打たれりゃコッチが追い出されちまうからな」
真咲はサインを出した。
真咲が登板する時は、リードを真咲に任せている。
保坂曰く、「あの遅い球を生かすには、本人がリードするのが1番」と言う。
120km/h台のストレートをどう効果的に投げるかは本人が1番よく知っているハズ。
右打席でトレードマークのこけしバットを短く持って司は待ち構える。
全身を躍動させ、テイクバックの小さいモーションから第1球を投げた。
(っ!速い…)
司は手を出すが、球威に押され、打球はバックネット裏に飛んだ。
「ファール!」
「今の何キロ出てたんだ?」
血相を変えて司がバックスクリーンのオーロラビジョンを見る。
【136km/h】
初球のストレートはいつもよりも10km/h程速い球だ。
「あれで136km/h?もっと速く感じるぞ…」
序盤は必ずと言っていい程、120km/h台の遅いストレートを放る。
しかし今日はいつもより速く、体感速度的にもかなり速く感じる。
「あれだけ腕をムチの様にしならせて投げるんだから、打席ではもっと速く感じるハズ…」
真咲は回を重ねる毎に球速を上げていき、最後は140km/h台のストレートで相手バッターをねじ伏せるのが必勝パターンだ。
「この様子じゃ、150km/hのストレートを投げる日もそう遠くないだろうな」
腕の振りが理想的で、尚且つコントロールも良い。
平均速度127km/hのストレートだが、その気になれば140台の速球をコーナーにビシバシと決める。
「120km/h台というけど、あれだけキレのある球ならそうそう打たれないぞ」
降谷が立ち上がり、モニターに釘付けになる。
傍から見れば、単に凡退しただけと思われるだろうが、唐澤にとってはこの凡退が尾を引く。
唐澤をサードゴロに抑え、2番の石川を迎える。
石川は現在6打点でチームトップ。
まだ5試合目だが、チャンスの場面に回ってくる機会が多い。
今年の象徴でもある、森高との二遊間に加え、2番という重要な打順を任され、チームの中心選手になりつつある。
石川は打席の後ろに立ち、オーソドックスなフォームながらバットを上段に構える。
つま先を高々と上げ、金城が初球を投げた。
アウトコースギリギリにストレートが決まる。
「ストライク!」
金城のストレートは最速で148km/hと今どきのピッチャーにしては決して速い球ではない。
だが、金城のストレートはクセがあり、ツボにハマると打ち崩すのは相当厄介だ。
(ナチュラルにカットする球だな)
金城が投げるストレート、特にフォーシームは右ピッチャーでありながら、左ピッチャーが投げるストレートによく似ている。
左ピッチャーのシュート回転するストレートそのもので、金城自身もその事を理解して上手く投げている。
大学時代のチームメイト冴島が左の速球派で奪三振能力に長けていたのに対し、金城は球速もそこそこでバットの芯を外すグラウンドボーラータイプのピッチャーだったせいで、どうしても冴島の方に注目が集まる。
「三振獲るより、打たせて取るピッチングの方が優秀なんだ…」
ベンチでは織田が金城のピッチングを見てほくそ笑む。
結局、石川は2球目のツーシームでセンターフライに倒れ、3番結城は落差こそ小さいが、鋭く落ちるスプリットを引っ掛けセカンドゴロでスリーアウトチェンジ。
1回の表、スカイウォーカーズは三者凡退で終了した。
1回の裏、レボリューションズの攻撃は先頭打者の結城司。
マウンド上には、昨年の最多勝真咲が恒例となった柔軟体操をしている。
まるで軟体動物みたいにしなやかで細い手足を有り得ない角度に曲げている。
その動きに観衆は驚きの声を上げる。
「相変わらず柔らかい身体だな…あれじゃヨガのインストラクターよりも柔らかいんじゃないのか」
「真咲くんの身体は先天性の柔らかさもあるんでしょうが、訓練の賜物でもあるんじゃないでしょうか」
櫻井が指摘するように、真咲は生まれつき柔らかい身体を更に柔らかくするよう、訓練を重ねた。
野球選手、特にピッチャーは身体が柔軟だが、真咲の柔らかさは桁違いだ。
この柔軟な身体をフルに使い、左腕をムチの様にしならせる。
【1回の裏、レボリューションズの攻撃は…1番センター結城。背番号3】
そんな真咲にも苦手とするバッターがいる。
それが結城の弟、司だ。
昨年までの対戦成績は39打数22安打、そのうち4本ホームランを打たれている。
いくら攻略法を練っても通用しない。
これは相性の問題なのだろうか。
「ヘッ、のっけからピンチじゃねぇか…この試合、完封なんて100パー有り得ないぜ」
ブルペンでは、モニターを見ながら降谷がニヤッと笑みを浮かべている。
完封が出来なければ、櫻井、高峰、真咲の3人は辞任する事になる。
「サッサと打たれろ、バーカ」
画面に向かって毒づく。
マウンドでは真咲がヤル気の無い表情を浮かべる。
「めんどくせぇな、ったく…コイツを打ち取る為だけにこんな球種を覚えなきゃならないなんて」
昨年のシーズンオフに真咲は新球をマスターするべく、休日を返上して猛特訓した。
「面倒臭いけど、打たれりゃコッチが追い出されちまうからな」
真咲はサインを出した。
真咲が登板する時は、リードを真咲に任せている。
保坂曰く、「あの遅い球を生かすには、本人がリードするのが1番」と言う。
120km/h台のストレートをどう効果的に投げるかは本人が1番よく知っているハズ。
右打席でトレードマークのこけしバットを短く持って司は待ち構える。
全身を躍動させ、テイクバックの小さいモーションから第1球を投げた。
(っ!速い…)
司は手を出すが、球威に押され、打球はバックネット裏に飛んだ。
「ファール!」
「今の何キロ出てたんだ?」
血相を変えて司がバックスクリーンのオーロラビジョンを見る。
【136km/h】
初球のストレートはいつもよりも10km/h程速い球だ。
「あれで136km/h?もっと速く感じるぞ…」
序盤は必ずと言っていい程、120km/h台の遅いストレートを放る。
しかし今日はいつもより速く、体感速度的にもかなり速く感じる。
「あれだけ腕をムチの様にしならせて投げるんだから、打席ではもっと速く感じるハズ…」
真咲は回を重ねる毎に球速を上げていき、最後は140km/h台のストレートで相手バッターをねじ伏せるのが必勝パターンだ。
「この様子じゃ、150km/hのストレートを投げる日もそう遠くないだろうな」
腕の振りが理想的で、尚且つコントロールも良い。
平均速度127km/hのストレートだが、その気になれば140台の速球をコーナーにビシバシと決める。
「120km/h台というけど、あれだけキレのある球ならそうそう打たれないぞ」
降谷が立ち上がり、モニターに釘付けになる。
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