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オールスター前
マジバトル!
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「さぁ、財前さん…やるかやらないか?
ボクの事をひ弱な坊ちゃんだと思ってるんじゃないですか?」
「テメー、何もんだよ」
「何者でも無いですよ。ただのプロ野球選手ですよ」
「…タイマンとか言ったな…もし、その勝負にオレが勝ったらどうする?」
「勝ったら…?ん~、今まで通りの振る舞いでいいですよ」
「ほぅ…で、テメーが勝ったらどうするつもりだ?」
「ボクが勝ったら…金輪際、無礼な振る舞いを止めて、チームの皆と仲良くしてもらいましょうか」
結城の口調は穏やかだが、目付きが完全にヤンキーバージョンの三角目になっている。
「ハッ、少しは腕に憶えがあるようだが、オレはアメリカで本場のヤンキー相手に一歩も引かなかったんだぜ!ハッタリかどうか、その身体に分からせてやろうか」
「いつもそうでした…」
「あん?」
結城は言葉を続けた。
「最初は皆、そうやって威勢がいいんですよ…
でも、いざ始まると、【オレが悪かった、勘弁してくれ】って、命乞いするんですよ…
財前さん…アナタもその類いですか?」
「…っ、随分と自信があるようだな。
近いうちにって言ったけど、いつやるんだ?」
「いつでもいいですよ…今でもいいし、明日でもいいし、アナタの好きな時にどうぞ」
「面白え…だったら、今すぐここでやってやろうじゃねえかっ!」
「財前さん、ここはダメですって!」
毒島が止めに入った。
「うるせえ、どけ!」
毒島を振り払い、結城の顔面目掛けて右のストレートを繰り出す。
「遅い…」
バキッ!
「がはっ…」
結城の左が一瞬早く財前の顔面を捕らえた。
まるでクロスカウンターの様に、財前の膝がストーンと落ち、崩れるように倒れた。
「結城さん…止めましょうよ、もう」
「鬼束くん…」
「は、はい…」
「これはケンカじゃない、チームが良くなる為の手段なんだ」
「しゅ、手段…ですか?」
鬼束はビビっている。
「そう…ボクは財前さんの良からぬ行いを正す為にタイマンを申し込んだ。
ボクがこの勝負に勝つ事によって、彼の中から邪悪な気が抜け、真っ当な心が取り戻せるんだ」
何だか、宗教めいた事を言ってる。
大丈夫なのだろうか。
「…く、くそっ、今のは油断しただけだ」
財前が立ち上がった。
「さすがですね…でも、アナタはボクに勝てませんよ」
「ふざけんな、コノヤロー!」
再び財前が突っかかる。
だが、結城は無防備な財前の顔目掛け、左足を振り抜く。
ドガッ!
「グェッ…」
ハイキックをモロに食らい、再びダウン。
「おい、もしかして財前さんってケンカ弱いんじゃないのか」
「散々エラソーな事言っておいて、イザとなったらからっきし弱いじゃん」
「ダッセ~」
口々にナインがその様子を見て、ヒソヒソと話をしている。
「さぁ…もう終わりですか?」
結城は無キズだ。
「クッ…どうやらオレも、本気でやらなきゃならないところまで来たのか」
財前がファイティングポーズをとった。
「フッ…所詮は付け焼き刃に過ぎない…」
「それはどうかな?」
財前が右ストレートを出す。
「ムダだと…」
「バカめっ」
グギっ!!
「ぐゎっ…」
右ストレートはフェイントで、財前は身をかがめるようにして低空ドロップキックを結城の膝に見舞った。
ガクン、と結城の身体が崩れ落ち、膝を押さえて苦悶の表情を浮かべている。
「うぁっ…グッ…」
「今度はコッチの番だ」
左脚を取り、右脇で抱えるように締めた。
「んがぁ…」
「ホレホレ、痛えだろ!」
アキレス腱固めでグイグイ締め上げる。
「クソがっ…」
右脚でガンガンと蹴りつけるが、財前はお構い無しにさらに力を込める。
「おい、ギブアップした方がいいんじゃないのか」
「誰がこんな技で…」
「あっそ、じゃあ知らなーい」
財前はその体勢から踵を抱える様に捻りあげた。
結城の左膝がミシミシっと音を立てて捻られた。
「ぐぁぁぁぁ~っ!!」
アキレス腱固めよりも更に破壊力のあるヒールホールドで締め上げた。
踵を抱えて締め上げると、膝が捻られ最悪の場合、靭帯が断裂する恐れがある。
「おい、ギブアップしねえと野球どころか、日常生活にも支障をきたすようになるぞ」
「んぐぁ…」
結城はギブアップしない。
だが、これ以上締め上げると膝が壊れてしまう。
「く…くそがァ!」
右脚を振り上げ、かかと落としの要領で財前の大腿部に振り下ろした。
ガツっ!
「うぎゃぁぁぁぁああああ!!」
ちょうど腿の筋の部分に当たり、財前はのたうち回る。
ヒールホールドが解け、結城は左脚を押さえながら立ち上がる。
「立てや、コラ…」
「ヤバい、完全にイッちゃってる…」
「えぇ、そりゃやべーよ!」
ヤンキーモードとなった結城は馬乗りになって左右の拳を連打する。
「グハッ、…」
財前は両手でガードするが、躊躇なくマウントパンチを振り下ろす。
「脳ミソぶちまけろや、おいっ!」
目が血走ってる。
「ウルァ~っ!!」
財前は急所をパンチした。
「ガっ…」
結城の動きが止まり、マウントポジションから脱出した。
「んのヤロー…」
財前の顔は腫れ上がり、血に染っていた。
「立て、コラっ」
無理矢理結城を立たせ、左右のエルボーを叩き込む。
バキッ、ドカッ!!
「グァ…」
結城は再びダウン。
「これで終わりだ!」
今度は財前がマウントポジションをとり、前腕を結城の喉仏に押し当てた。
「カハッ…」
ギロチンチョークを食らい、バタバタともがいている。
「タップしろや!テメーに勝ち目はねえんだ!
タップしねえと、息の根止めるぞ!」
「…っ!!」
「ゆ…結城さんが…ダメだもう…」
堪らず鬼束がタオルを投げた。
「あぁ…結城さんが負けた」
ナインは落胆の表情を浮かべる。
「へっ…」
財前が立ち上がるが、先程のマウントパンチのダメージが強いのか、ドタン、と大の字に倒れた。
「あっ、財前さんも倒れた!」
「この勝負、引き分けか?」
「両者ノックダウンって事で、引き分けなんじゃないか」
結城VS財前のタイマン勝負は両者KOで幕を閉じた。
ボクの事をひ弱な坊ちゃんだと思ってるんじゃないですか?」
「テメー、何もんだよ」
「何者でも無いですよ。ただのプロ野球選手ですよ」
「…タイマンとか言ったな…もし、その勝負にオレが勝ったらどうする?」
「勝ったら…?ん~、今まで通りの振る舞いでいいですよ」
「ほぅ…で、テメーが勝ったらどうするつもりだ?」
「ボクが勝ったら…金輪際、無礼な振る舞いを止めて、チームの皆と仲良くしてもらいましょうか」
結城の口調は穏やかだが、目付きが完全にヤンキーバージョンの三角目になっている。
「ハッ、少しは腕に憶えがあるようだが、オレはアメリカで本場のヤンキー相手に一歩も引かなかったんだぜ!ハッタリかどうか、その身体に分からせてやろうか」
「いつもそうでした…」
「あん?」
結城は言葉を続けた。
「最初は皆、そうやって威勢がいいんですよ…
でも、いざ始まると、【オレが悪かった、勘弁してくれ】って、命乞いするんですよ…
財前さん…アナタもその類いですか?」
「…っ、随分と自信があるようだな。
近いうちにって言ったけど、いつやるんだ?」
「いつでもいいですよ…今でもいいし、明日でもいいし、アナタの好きな時にどうぞ」
「面白え…だったら、今すぐここでやってやろうじゃねえかっ!」
「財前さん、ここはダメですって!」
毒島が止めに入った。
「うるせえ、どけ!」
毒島を振り払い、結城の顔面目掛けて右のストレートを繰り出す。
「遅い…」
バキッ!
「がはっ…」
結城の左が一瞬早く財前の顔面を捕らえた。
まるでクロスカウンターの様に、財前の膝がストーンと落ち、崩れるように倒れた。
「結城さん…止めましょうよ、もう」
「鬼束くん…」
「は、はい…」
「これはケンカじゃない、チームが良くなる為の手段なんだ」
「しゅ、手段…ですか?」
鬼束はビビっている。
「そう…ボクは財前さんの良からぬ行いを正す為にタイマンを申し込んだ。
ボクがこの勝負に勝つ事によって、彼の中から邪悪な気が抜け、真っ当な心が取り戻せるんだ」
何だか、宗教めいた事を言ってる。
大丈夫なのだろうか。
「…く、くそっ、今のは油断しただけだ」
財前が立ち上がった。
「さすがですね…でも、アナタはボクに勝てませんよ」
「ふざけんな、コノヤロー!」
再び財前が突っかかる。
だが、結城は無防備な財前の顔目掛け、左足を振り抜く。
ドガッ!
「グェッ…」
ハイキックをモロに食らい、再びダウン。
「おい、もしかして財前さんってケンカ弱いんじゃないのか」
「散々エラソーな事言っておいて、イザとなったらからっきし弱いじゃん」
「ダッセ~」
口々にナインがその様子を見て、ヒソヒソと話をしている。
「さぁ…もう終わりですか?」
結城は無キズだ。
「クッ…どうやらオレも、本気でやらなきゃならないところまで来たのか」
財前がファイティングポーズをとった。
「フッ…所詮は付け焼き刃に過ぎない…」
「それはどうかな?」
財前が右ストレートを出す。
「ムダだと…」
「バカめっ」
グギっ!!
「ぐゎっ…」
右ストレートはフェイントで、財前は身をかがめるようにして低空ドロップキックを結城の膝に見舞った。
ガクン、と結城の身体が崩れ落ち、膝を押さえて苦悶の表情を浮かべている。
「うぁっ…グッ…」
「今度はコッチの番だ」
左脚を取り、右脇で抱えるように締めた。
「んがぁ…」
「ホレホレ、痛えだろ!」
アキレス腱固めでグイグイ締め上げる。
「クソがっ…」
右脚でガンガンと蹴りつけるが、財前はお構い無しにさらに力を込める。
「おい、ギブアップした方がいいんじゃないのか」
「誰がこんな技で…」
「あっそ、じゃあ知らなーい」
財前はその体勢から踵を抱える様に捻りあげた。
結城の左膝がミシミシっと音を立てて捻られた。
「ぐぁぁぁぁ~っ!!」
アキレス腱固めよりも更に破壊力のあるヒールホールドで締め上げた。
踵を抱えて締め上げると、膝が捻られ最悪の場合、靭帯が断裂する恐れがある。
「おい、ギブアップしねえと野球どころか、日常生活にも支障をきたすようになるぞ」
「んぐぁ…」
結城はギブアップしない。
だが、これ以上締め上げると膝が壊れてしまう。
「く…くそがァ!」
右脚を振り上げ、かかと落としの要領で財前の大腿部に振り下ろした。
ガツっ!
「うぎゃぁぁぁぁああああ!!」
ちょうど腿の筋の部分に当たり、財前はのたうち回る。
ヒールホールドが解け、結城は左脚を押さえながら立ち上がる。
「立てや、コラ…」
「ヤバい、完全にイッちゃってる…」
「えぇ、そりゃやべーよ!」
ヤンキーモードとなった結城は馬乗りになって左右の拳を連打する。
「グハッ、…」
財前は両手でガードするが、躊躇なくマウントパンチを振り下ろす。
「脳ミソぶちまけろや、おいっ!」
目が血走ってる。
「ウルァ~っ!!」
財前は急所をパンチした。
「ガっ…」
結城の動きが止まり、マウントポジションから脱出した。
「んのヤロー…」
財前の顔は腫れ上がり、血に染っていた。
「立て、コラっ」
無理矢理結城を立たせ、左右のエルボーを叩き込む。
バキッ、ドカッ!!
「グァ…」
結城は再びダウン。
「これで終わりだ!」
今度は財前がマウントポジションをとり、前腕を結城の喉仏に押し当てた。
「カハッ…」
ギロチンチョークを食らい、バタバタともがいている。
「タップしろや!テメーに勝ち目はねえんだ!
タップしねえと、息の根止めるぞ!」
「…っ!!」
「ゆ…結城さんが…ダメだもう…」
堪らず鬼束がタオルを投げた。
「あぁ…結城さんが負けた」
ナインは落胆の表情を浮かべる。
「へっ…」
財前が立ち上がるが、先程のマウントパンチのダメージが強いのか、ドタン、と大の字に倒れた。
「あっ、財前さんも倒れた!」
「この勝負、引き分けか?」
「両者ノックダウンって事で、引き分けなんじゃないか」
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