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オールスター前

先制点

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試合が始まった。


マーリンズ先発の天海は絶好調。

トップの唐澤を165km/hのバレットで見逃しの三振に打ち取ると、2番筧を158km/hのツーシームでファーストゴロに打ち取る。


3番財前には縦に割れるカーブでセンターフライに抑える。


スカイウォーカーズ先発の降谷は縦のスライダーを駆使して凡打の山を築く。



「玉井尻さん。ここまで両チーム無得点のままですがどうご覧になられます?」


「どうって…単に打てないだけだろ」


「4回を終わって天海が被安打1、対する降谷は被安打2の1四球。
両チームとも凡打が目立ちます」


「あのストレートはちょっとやそっとじゃ打てないだろ」


「バレットと呼ばれる天海のストレートは非常に回転数が高く、芯で捕らえる事が難しいと言われています」



「ありゃ打席だと170ぐらいに感じるんじゃないかな…それだけ天海のストレートは速くてスゴいってワケなんだが」


「体感速度は170km/hですか?」


「投げた瞬間、もうボールが目の前に迫ってくる様な感じじゃないのかな」


天海のストレートの回転数は約2600回転。

日本はおろか、メジャーでもトップクラスの回転数だ。


このバレットをどう攻略するか。


両投手投げ合いゲームは早いテンポで既に6回の表に。


この回は7番ショート白石から。



「さぁ、試合は早くも6回の表。
スカイウォーカーズ先発の降谷はここまで被安打2、無四球の4奪三振という内容。
玉井尻さん、ここまで降谷の投球内容はどうでしょうか?」


「フォアボール1個も出てないんだろ。
上出来じゃないか。
ただ、味方が点を取れないってのがストレスになるんじゃないのかなぁ」


「なる程、精神的プレッシャーというワケですね。
さぁ、マーリンズの攻撃は7番の白石から。
白石は第一打席ショート真正面のライナーでアウトになりましたが、当たりは良かったですよね?」


「コイツはこの前までファームにいたんだろ?
中々良いバッティングするよな」


マーリンズのショートを守る佐竹はオープン戦でクロスプレーの際、右足首を故障。

くるぶしの骨折により、シーズン前半は絶望的となった。


代わりにファームから4年目の白石に白羽の矢が立った。


「マーリンズのテリー監督は白石の潜在能力の高さを見込んで一軍に上げたそうですが、玉井尻さんから見て、この白石はどういう選手でしょうか?」


「コイツは近い将来、日本を代表するショートストップとして名を馳せるんじゃないのかな」


「へぇ~、玉井尻さんが絶賛する程の選手という事ですが、具体的にどの部分がスゴいんでしょうか?」


「どの部分って…全部だよ全部。
打つ方も、守る方も、走る方も全てに於いて秀でてる選手だよ」



シンプルでスタンダードなフォームから流れる様なスウィングは一切のムダが無い。



ショートの守備も捕ってから投げるまでの動作にムダが無く、肩も強くコントロールも良い。


「マウンド上の降谷、第一球を投げた!
インサイドへボール。
ストレートがやや外れた」


「降谷も150越えてるよな」


「えぇ、今のストレートは153km/hですね。
降谷は初回から150を越えるストレートを連発してますが、どうでしょう?」


「いや、悪くないよ。悪くは無いんだが、何せ相手のピッチャーが天海だからな…
天海が相手だと、どうしても霞んで見えちゃうんだよなぁ」


「それだけ天海のピッチングは次元が違うという事でしょうか?」


「そういう事かなぁ」



三塁側ベンチでは、天海がキャッチボールをしている。


「降谷第二球を投げた!
今度はアウトコースへスライダーが決まりストライク」


カウントはワンボール、ワンストライク。


「このバッター今の球に見向きもしなかったな」


「白石は何を狙ってるんでしょうかね?」


「さぁな…ただ、このバッターからは打ちそうな雰囲気があるよな」


「玉井尻さんの予想通り、白石が打つのか?それとも降谷が抑えるのか?
第三球を投げた!
…白石が打った!これは大きいっ!!」


「こりゃ行ったぜ…」


「レフト森高バック!懸命にバックするが打球はその上を行ってスタンドに入った~っ!」


降谷の決め球である、縦のスライダーを捕らえてスタンドに叩き込んだ。


「白石の第5号ソロホームランで、マーリンズが1点を先制!」



「あの球を狙ってたのか」



「降谷の縦のスライダーを上手く捕らえてレフトスタンドに運びました!」


「アイツ、球種を読んでたんじゃねえか」


白石は縦のスライダーを読んでいた。


降谷はインコース低めに投げる際、縦のスライダーを投げるケースが多い。


それを読んで、躊躇なくスウィングした結果、ホームランとなった。


「白石今ホームイン!マーリンズ待望の1点です!」


「ヘタしたら、この1点で決まっちまうぞ」


「スカイウォーカーズはこの1点を返せるのか?」



玉井尻の予想通り、白石のホームランが決勝点となり、初戦は1対0の完封負けを喫した。


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