44 / 62
シーズン中盤
独り占めは許さん!
しおりを挟む
「もしもし~、オーナー?試合見てた?」
榊の弾んだ声が部屋中に響く。
【見たぬー!初戦は我が軍の勝利じゃないかぬ!監督、この調子で首位を奪還してくれだぬ】
ここはナゴヤ99ドーム近くのホテルの一室。
スカイウォーカーズはこのホテルに宿泊している。
「そのつもりだよ、オーナー!
ところで、例のヤツなんだが…」
早速本題に持ち込む。
【例のヤツ…とは何だぬ?】
「ヤダな、オーナー!忘れたなんて言わせないよ!アレだよ、アレ!オーナー賞ってヤツ?」
【にゃんと!その事かぬ?勿論、あちきは覚えているぬーーーん!】
榊は頭の中で勘定を始めた。
賞金マッチで得た金額は約三千万円。
その金額で球場のペアシートチケットを100席購入し、残りの金額を車椅子やランドセルを購入し、寄贈した。
それとは別に、オーナーのポケットマネーから配られる、オーナー賞を独り占めしようとしている。
概算でも、100万は下らないという計算をしている。
「さすがオーナー!オレも良いチームの監督になれて嬉しいよ!」
【ムヒョヒョヒョヒョ!ユーの采配は素晴らしいぬ!このままずっと監督を続けて欲しいぐらいだぬーーーん!】
「ワハハハハハハハハハ!あいよ~っ、何なら死ぬまで監督やっちゃおうかな」
【ムヒョヒョヒョヒョ!頼もしいかぎりだぬ!】
「でさ、オーナー賞の受け渡しなんだけど」
急に声を潜めた。
【ぬ?横に誰かいるのかぬ?】
「ん?いや、誰もいないよ。オレ一人だけど」
【ならば、何故急に声を潜めるんだぬ?】
「ん、あぁ…ホラ、こういう話ってあんまり大っぴらに出来ないじゃん?ついクセでこうなっちゃうんだよ」
【にゃるほど、にゃるほど。で、受け渡し方法をどうするかという事だぬ?】
「そうそうそう!」
多分榊の両目には【¥】の文字が浮かんでいる事だろう。
【あちきは振り込みがいいと思うんだが、監督の口座に振り込めばいいのかぬ?】
「ん~、振り込みも良いんだけど…やっぱ、こういうのはさ、現金で貰った方が皆の士気が上がるというか…ヤル気も違ってくるじゃん?」
もっともらしい言い訳をしている。
【ほーほー、確かに振り込みよりも、現金の方が有難みがありそうな感じがするぬ】
「でしょ、でしょ?だからさ、この三連戦が終わったら、オレがオーナーの所まで受け取りに行くってのはどうだろう?」
【にゃんと!わざわざ監督が来るのかぬ?それなら、あちきの秘書に届けるよう手配するが】
「秘書…?」
榊はしばし考えた。
仮にオーナーの秘書が球場に来て、受け渡す場面を選手やコーチに見られたらどうしようか、と。
(いや、面倒だけどここはオレがオーナーの所に行くしかないな)
「あぁ、いいよいいよ!オレが直接オーナーの所に行ってさ、ほら、色々と話したい事もあるじゃん!」
【色々かぬ?】
「そうそう!勝ったという報告と、今後の戦略なんかを話せばいいかなぁ、なんて」
【にゃんと!そこまで策を練っているのかぬ?】
「まぁ…ホラ、オレ監督だし、軍の総大将じゃん?」
【素晴らしい!まさに、勝って兜の緒を締めよって事だぬ】
「まぁ、そんな事かな。だから、そっちに戻ったら真っ先にオーナーんとこに行くから、悪いけど用意しておいてくれよ」
【了解だぬ!監督、残りの二戦も勝ってくれだぬ!】
「あいよ、その代わりオーナー賞も三勝分用意しておいてくれよ!」
【分かったぬーーーん!では、監督頼んだぬ!】
「あいあーい、んじゃまたね~っ!」
電話を切った。
「あぁ、しまった!金額を聞くのを忘れてた」
もう一度掛け直そうと思ったのだが、わざわざ聞くのも野暮だし、どうせ独り占めにするんだから、直接会って聞けばいいやと思い、掛けるのを止めた。
同じ頃、榊の部屋から少し離れた部屋で、櫻井と中田はその会話を盗聴していた。
「あのヤロー、やっぱりオーナー賞独り占めするつもりだ!」
「中田さん、何で盗聴器なんて持ってるんですか?」
中田は色んな意味で策士だ。
普段から榊と行動を共にしているせいか、やたらと準備が良い。
中田は一足先にホテルに戻り、フロントに榊が泊まる部屋のルームキーを借りて中に入り、盗聴器を仕掛けた。
「ヨシ、こうなったらアイツがオーナーから金を受け取った後、スタンガンで気絶させて金を奪い取ろう!」
「ス、スタンガン?」
櫻井の声が裏返る。
「ヒロト!お前も一緒にやるんだよ」
「え、えぇ~っ!ボクもですか?」
「勿論だよ!アイツは金が絡むと、尋常ではない強さを発揮するんだよ!
オレ一人じゃどうにもならないから、お前も手伝え」
「中田さぁん、止めましょうよ…ボクは別にオーナー賞なんて必要無いですし」
「バカヤロ!お前がよくても、オレは許さないんだよ!」
「そんな~っ…」
その晩、二人はどうやって榊から金を奪うか策を練っていた。
そのせいで寝不足になり、午前中は半分寝た状態だった。
榊の弾んだ声が部屋中に響く。
【見たぬー!初戦は我が軍の勝利じゃないかぬ!監督、この調子で首位を奪還してくれだぬ】
ここはナゴヤ99ドーム近くのホテルの一室。
スカイウォーカーズはこのホテルに宿泊している。
「そのつもりだよ、オーナー!
ところで、例のヤツなんだが…」
早速本題に持ち込む。
【例のヤツ…とは何だぬ?】
「ヤダな、オーナー!忘れたなんて言わせないよ!アレだよ、アレ!オーナー賞ってヤツ?」
【にゃんと!その事かぬ?勿論、あちきは覚えているぬーーーん!】
榊は頭の中で勘定を始めた。
賞金マッチで得た金額は約三千万円。
その金額で球場のペアシートチケットを100席購入し、残りの金額を車椅子やランドセルを購入し、寄贈した。
それとは別に、オーナーのポケットマネーから配られる、オーナー賞を独り占めしようとしている。
概算でも、100万は下らないという計算をしている。
「さすがオーナー!オレも良いチームの監督になれて嬉しいよ!」
【ムヒョヒョヒョヒョ!ユーの采配は素晴らしいぬ!このままずっと監督を続けて欲しいぐらいだぬーーーん!】
「ワハハハハハハハハハ!あいよ~っ、何なら死ぬまで監督やっちゃおうかな」
【ムヒョヒョヒョヒョ!頼もしいかぎりだぬ!】
「でさ、オーナー賞の受け渡しなんだけど」
急に声を潜めた。
【ぬ?横に誰かいるのかぬ?】
「ん?いや、誰もいないよ。オレ一人だけど」
【ならば、何故急に声を潜めるんだぬ?】
「ん、あぁ…ホラ、こういう話ってあんまり大っぴらに出来ないじゃん?ついクセでこうなっちゃうんだよ」
【にゃるほど、にゃるほど。で、受け渡し方法をどうするかという事だぬ?】
「そうそうそう!」
多分榊の両目には【¥】の文字が浮かんでいる事だろう。
【あちきは振り込みがいいと思うんだが、監督の口座に振り込めばいいのかぬ?】
「ん~、振り込みも良いんだけど…やっぱ、こういうのはさ、現金で貰った方が皆の士気が上がるというか…ヤル気も違ってくるじゃん?」
もっともらしい言い訳をしている。
【ほーほー、確かに振り込みよりも、現金の方が有難みがありそうな感じがするぬ】
「でしょ、でしょ?だからさ、この三連戦が終わったら、オレがオーナーの所まで受け取りに行くってのはどうだろう?」
【にゃんと!わざわざ監督が来るのかぬ?それなら、あちきの秘書に届けるよう手配するが】
「秘書…?」
榊はしばし考えた。
仮にオーナーの秘書が球場に来て、受け渡す場面を選手やコーチに見られたらどうしようか、と。
(いや、面倒だけどここはオレがオーナーの所に行くしかないな)
「あぁ、いいよいいよ!オレが直接オーナーの所に行ってさ、ほら、色々と話したい事もあるじゃん!」
【色々かぬ?】
「そうそう!勝ったという報告と、今後の戦略なんかを話せばいいかなぁ、なんて」
【にゃんと!そこまで策を練っているのかぬ?】
「まぁ…ホラ、オレ監督だし、軍の総大将じゃん?」
【素晴らしい!まさに、勝って兜の緒を締めよって事だぬ】
「まぁ、そんな事かな。だから、そっちに戻ったら真っ先にオーナーんとこに行くから、悪いけど用意しておいてくれよ」
【了解だぬ!監督、残りの二戦も勝ってくれだぬ!】
「あいよ、その代わりオーナー賞も三勝分用意しておいてくれよ!」
【分かったぬーーーん!では、監督頼んだぬ!】
「あいあーい、んじゃまたね~っ!」
電話を切った。
「あぁ、しまった!金額を聞くのを忘れてた」
もう一度掛け直そうと思ったのだが、わざわざ聞くのも野暮だし、どうせ独り占めにするんだから、直接会って聞けばいいやと思い、掛けるのを止めた。
同じ頃、榊の部屋から少し離れた部屋で、櫻井と中田はその会話を盗聴していた。
「あのヤロー、やっぱりオーナー賞独り占めするつもりだ!」
「中田さん、何で盗聴器なんて持ってるんですか?」
中田は色んな意味で策士だ。
普段から榊と行動を共にしているせいか、やたらと準備が良い。
中田は一足先にホテルに戻り、フロントに榊が泊まる部屋のルームキーを借りて中に入り、盗聴器を仕掛けた。
「ヨシ、こうなったらアイツがオーナーから金を受け取った後、スタンガンで気絶させて金を奪い取ろう!」
「ス、スタンガン?」
櫻井の声が裏返る。
「ヒロト!お前も一緒にやるんだよ」
「え、えぇ~っ!ボクもですか?」
「勿論だよ!アイツは金が絡むと、尋常ではない強さを発揮するんだよ!
オレ一人じゃどうにもならないから、お前も手伝え」
「中田さぁん、止めましょうよ…ボクは別にオーナー賞なんて必要無いですし」
「バカヤロ!お前がよくても、オレは許さないんだよ!」
「そんな~っ…」
その晩、二人はどうやって榊から金を奪うか策を練っていた。
そのせいで寝不足になり、午前中は半分寝た状態だった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ゾンビ発生が台風並みの扱いで報道される中、ニートの俺は普通にゾンビ倒して普通に生活する
黄札
ホラー
朝、何気なくテレビを付けると流れる天気予報。お馴染みの花粉や紫外線情報も流してくれるのはありがたいことだが……ゾンビ発生注意報?……いやいや、それも普通よ。いつものこと。
だが、お気に入りのアニメを見ようとしたところ、母親から買い物に行ってくれという電話がかかってきた。
どうする俺? 今、ゾンビ発生してるんですけど? 注意報、発令されてるんですけど??
ニートである立場上、断れずしぶしぶ重い腰を上げ外へ出る事に──
家でアニメを見ていても、同人誌を売りに行っても、バイトへ出ても、ゾンビに襲われる主人公。
何で俺ばかりこんな目に……嘆きつつもだんだん耐性ができてくる。
しまいには、サバゲーフィールドにゾンビを放って遊んだり、ゾンビ災害ボランティアにまで参加する始末。
友人はゾンビをペットにし、効率よくゾンビを倒すためエアガンを改造する。
ゾンビのいることが日常となった世界で、当たり前のようにゾンビと戦う日常的ゾンビアクション。ノベルアッププラス、ツギクル、小説家になろうでも公開中。
表紙絵は姫嶋ヤシコさんからいただきました、
©2020黄札
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる