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主砲

挨拶

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間もなくここ武蔵野ボールパークでスカイウォーカーズ対99ersの一戦がスタートする。


武蔵野ボールパークは右翼がやや広く左打者不利の球場と言われているが、基本的には右打者も不利な球場だ。

所謂パークファクターと呼ばれる数値では、毎年1.0を越えることが無いらしい。


パークファクターの算出方法なのだが、これは非常に難しく、しかもかなり面倒いので割愛する。

というより、作者はそこまで知らないのである。

(知ったかぶりなので)


本来ならば、セイバーメトリクスに倣ってBABIPやら、WARという数値で表示したいのだが、これも算出方法が面倒く、しかも複雑なのであまり使わないようにしている。


(というか、ただ単によく知らないだけである)




閑話休題






とにかく、武蔵野ボールパークはホームランが出にくい球場だという事だ。

反対に、12球団で一番ホームランが出やすい球場は、東京キングダムの本拠地、東京ボールパークだ。


ここは開閉屋根式のドーム球場にもかかわらず、普段から屋根は閉まった状態にしている。


一説によると、気圧の関係で打球が飛びやすく、他の球場ならば外野フライという当たりもホームランになってしまう程で、圧倒的に打者有利の球場でもある。


その証拠に、キングダムの選手はホームとビジターでの成績を比べると、極端に違いが顕著に表れている。


例えば、2番を打っているキャッチャーの丸藤は、昨年ホームでは打率0.304に対し、ビジターの打率は0.238

この事からキングダムの野手は東京ボールパークの恩恵を受けており、ビジターの成績こそが本来の成績だと主張する者も少なくない。


「それならば、キングダムの本拠地を別の場所に移せばいいだろ」


という声も上がるのだが、東京ボールパークは12球団唯一の完全自前球場でもある為、文句は言えないらしい。


さすが金満球団といったところか。





更に閑話休題



今日から登録抹消していた主砲の鬼束が一軍に復帰。


これで4番を誰にするかという悩みは解消された…はず。


試合前、監督の榊をはじめとするコーチ陣が一斉に三塁側ベンチに出向き、かつての監督だったヤマオカに挨拶をしている。


「よぉ、とっつぁん!今日はお手柔らかに頼むぜ!」


いつもの様に榊は軽口を叩く。


「おぅ、こちらこそシクヨロな!榊、お前もようやく監督らしくなったな」


ヤマオカは榊とガッチリ握手を交わす。


「監督…ご無沙汰しております」


ヘッドコーチの櫻井が帽子を取って深々と頭を下げた。


「おぅ、櫻井!久しぶりだな…お前もすっかりオジサンになったなぁ」


数ある教え子の中で一番優秀だった櫻井と再会し、ヤマオカは笑顔で握手した。


「監督、お久しぶりです!今日はよろしくお願いします」

中田野手総合コーチが直立不動で挨拶する。


「中田~っ!元気そうだな、おい。
今年から一軍でコーチか。
頑張れよ」


握手をして肩をポンと叩いた。


「ヤマオカ監督、ご無沙汰です。
今日は監督の胸を借りて頑張りたいと思います」


投手総合コーチの高峰は緊張の面持ちで挨拶した。


「ケースケ!久しぶりだな。それにしても、現役の時と同じ体型じゃないか!
よろしく頼むよ」


両手でガッチリと握手を交わす。


「カントク~、お久しぶりです!
お願いだから、今日と明日と明後日は敗けて下さい!」


投手コーチの水卜が茶目っ気たっぷりの口調で挨拶した。


「何っ、この三連戦敗けろだと?
おい、舞!
敗けてやる代わりに、ウチのコーチになれ!」


嬉しそうに水卜と再会をハグをする。



皆とは遅れてGMの高梨もベンチに出向いた。


「ヤマオカ監督…名古屋99ers監督就任おめでとうございます!
今年から敵味方に別れましたが、何卒よろしくお願いします」


スーツの襟をただし、姿勢の良いお辞儀をした。


「よっ、高梨!こちらこそよろしくな。
ところで、オレが以前テレビで言ってた賞金マッチの件だが…プロ野球人気を盛り上げる為にいっちょやってみないか?」


ヤマオカは開幕前に出演したスポーツニュースのコーナーで、スカイウォーカーズ対99ersの試合に勝ったチームは、その日の試合の売上10%を賞金に充てる事を提案した。


「いや~、カントク!
私は経営に関してはタッチしてないので…」

これには高梨も言葉を濁すしかない。


「何でだよ、オレはオーナーにOKを貰ったぞ!
お前もオーナーに掛け合ってみたらどうだ?」


何がなんでも賞金マッチを実現しようとするみたいだ。



「でも…世間は何て言うか」


「そんな事気にしてどうする!
我々はプロなんだ。
プロは稼いでナンボの世界だ。
そのプロが金の話はNGって、どういう事だ」


この言葉に榊が素早く反応した。


「やろうぜ、とっつぁん!オレは賞金マッチ大賛成だ!
世間の目だぁ?んな事は関係ねえ!
やったもん勝ちだぜ、こういうのは」


「そうか、そうか!
じゃあ、榊!お前がソッチのオーナーに掛け合ってくれないか?」


「あいよ、何なら試合は中ちゃんとヒロトに任せて今からオーナーんとこに行って、OKしてもらおう」



「ダメですよ、そんな事で試合を休むなんて」



「いいじゃねえかよ!たかが1試合休むだけだろ?」


「ダメですっ!!」


高梨の猛反対で却下された。
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