5 / 62
かつて天才と呼ばれたスター
スランプ
しおりを挟む
「翔田選手、吉川選手がヒーローインタビューで翔田選手を挑発する様な事を言いましたが、翔田選手はこのまま二刀流を続けるんでしょうか?」
試合後のロッカールーム前で記者達は翔田に挙って質問した。
「あの…ちょっと今はそれどころじゃないんで」
翔田の表情は険しい。
「吉川選手は翔田選手にピッチャーで勝負しろと言ってます。
今年は野手に専念してますが、場合によっては投手としてマウンドに上がる事は無いんですか?」
「ごめんなさい、ホントに何も思いつかないんで」
急ぐ様に球場を後にした。
99ers対キングダムの第一ラウンドは99ersに凱歌が上がった。
キングダムはこの敗戦で5位に転落。
球界の盟主と呼ばれた王国は崖っぷちに立たされた。
一方スカイウォーカーズは、去年投手三冠に輝いた真咲が相変わらずのピッチングで、レボリューションズ打線を僅か1安打に抑える。
スカイウォーカーズ打線はこの日2番に入ったスーパールーキー森高が3安打1ホーマー4打点と大活躍。
守備でも、5回に結城弟のホームラン性の当たりをフェンス際でジャンプ一番キャッチするなど、攻守にわたりチームを引っ張る。
森高の活躍で5対0とスカイウォーカーズが完封勝利を飾った。
早くも新人王候補として森高に注目が集まる。
試合後のロッカールームでは、
「よーよー、スーパールーキー」
財前が声を掛ける。
「あ、財前さんお疲れ様です」
財前はキャンプインの時と変わらず、シルバーアッシュのヘアーに左右色別のカラコン、シルバーアクセサリーのチョーカーにブレスレットと野球選手とは言い難い格好をしている。
「なかなかやるじゃんか!
明日からお前が4番を打てよ。
そうすりゃ、このチームも少しは得点能力が上がるだろ」
財前はこの日4安打1ホーマー1打点。
打率0.437 ホームラン10 打点18と3部門でリーグトップに立つ。
開幕戦でサイクルホームランという日米初の偉業を成し遂げ、ヒーローインタビューで今年三冠王を獲ると宣言。
もし三冠王を逃した場合、現役を引退すると発表。
ビッグマウスもここまでくれば却って清々しいものだ。
「いやぁ~、自分はまだ新人だし、それに4番は鬼束さんがいるじゃないですか」
ルーキーらしく謙遜する。
「何言ってんだよ、ウチの4番がからっきしダメだし、調子の良いお前が4番になればいいんだよ!
なぁ、そうだろ4番バッター様よ?」
今日ノーヒットの鬼束に同意を求める。
「えっ…いや、ハハハ…」
開幕からいま一つピリッとしない鬼束は今シーズン初アーチを記録したものの、打率は2割台前半でチャンスに凡退する場面が多い。
「ハハハじゃねぇだろ!テメーが打たなきゃチームは機能しねぇんだよ!
これじゃ、いくらオレが打っても何の意味も無いだろ」
「す、すいません…」
翔田ほどでは無いが、鬼束もスランプに陥ってる。
すると奥から結城の声が。
「財前さん、そんなに鬼束くんを責めないで下さい!鬼束くん、誰だってノーヒットの時はあるんだ。
気持ちを切り替えて明日頑張ろう」
結城が助け舟を出した。
「あ、ハイ…ありがとうございます」
大きな身体を小さくして恐縮している。
「バカか、オメーは!コイツは気にしなきゃダメなんだよ!
4番がチャンスに何度も凡退してどうすんだ!
コイツが今より少しでも打てば、チームの勝ちは増えるんだよ!
聞いてんのか、おいっ!」
更に鬼束を叱責する。
「アンタ…いい加減にしろよ」
一部始終を見ていた唐澤が突っかかる。
「おい、トーマ止めろ!」
「唐澤くん、熱くなるな!」
鬼束と結城が止めに入る。
「横から口挟んでくるんじゃねぇよ、クソガキ!
テメーは早くウチに帰って、母ちゃんと一緒に風呂入って寝ろ!」
「何だと、テメー!」
「止めろっ!トーマ、悪いのはオレだ!財前さん、ホントに申し訳ありません」
唐澤を制し、深々と頭を下げた。
「ったく…打てねえんなら、監督に言って替えてもらえ!」
バタン!と乱暴にロッカーの扉を閉め、真っ先にロッカーを出た。
「はぁ…いつになったら、このチームは一丸となるんだろうか」
結城はため息混じりに呟く。
気にするなと言われたが、鬼束の心中は決して穏やかではない。
長いシーズンでは、不調で成績を落とす事など日常茶飯事だ。
とは言え、スランプを脱出するまでの期間は心身ともに疲弊する。
バッティング技術に関しては、右打者最高のプレイヤーと呼ばれる鬼束だが、今年は特に重症だ。
チームが勝利しても、自分は貢献していない。
それどころか、皆の足を引っ張ってるんじゃないかと。
「鬼束さん…誰だって打てない時はあるんです。
ボクもそうだし、結城さんだってノーヒットの時もえるんです…
あんなヤツの言う事なんて真に受ける事無いですよ」
「そうだ鬼束くん。
あまり深く考えるとプレーに支障が出る。
大丈夫、キミはスランプを脱出出来るよ」
唐澤と結城の二人は鬼束をフォローする。
「でも…このまま4番を打つ訳にはいかないし」
「鬼束くん、誰が何と言おうと4番はキミだ。
キミはキミのバッティングをすればいいんだ。
凡打を気にせず、思いきってバットを振るんだ」
結城は鬼束を庇うが、当の本人は燻った状態のままだ。
試合後のロッカールーム前で記者達は翔田に挙って質問した。
「あの…ちょっと今はそれどころじゃないんで」
翔田の表情は険しい。
「吉川選手は翔田選手にピッチャーで勝負しろと言ってます。
今年は野手に専念してますが、場合によっては投手としてマウンドに上がる事は無いんですか?」
「ごめんなさい、ホントに何も思いつかないんで」
急ぐ様に球場を後にした。
99ers対キングダムの第一ラウンドは99ersに凱歌が上がった。
キングダムはこの敗戦で5位に転落。
球界の盟主と呼ばれた王国は崖っぷちに立たされた。
一方スカイウォーカーズは、去年投手三冠に輝いた真咲が相変わらずのピッチングで、レボリューションズ打線を僅か1安打に抑える。
スカイウォーカーズ打線はこの日2番に入ったスーパールーキー森高が3安打1ホーマー4打点と大活躍。
守備でも、5回に結城弟のホームラン性の当たりをフェンス際でジャンプ一番キャッチするなど、攻守にわたりチームを引っ張る。
森高の活躍で5対0とスカイウォーカーズが完封勝利を飾った。
早くも新人王候補として森高に注目が集まる。
試合後のロッカールームでは、
「よーよー、スーパールーキー」
財前が声を掛ける。
「あ、財前さんお疲れ様です」
財前はキャンプインの時と変わらず、シルバーアッシュのヘアーに左右色別のカラコン、シルバーアクセサリーのチョーカーにブレスレットと野球選手とは言い難い格好をしている。
「なかなかやるじゃんか!
明日からお前が4番を打てよ。
そうすりゃ、このチームも少しは得点能力が上がるだろ」
財前はこの日4安打1ホーマー1打点。
打率0.437 ホームラン10 打点18と3部門でリーグトップに立つ。
開幕戦でサイクルホームランという日米初の偉業を成し遂げ、ヒーローインタビューで今年三冠王を獲ると宣言。
もし三冠王を逃した場合、現役を引退すると発表。
ビッグマウスもここまでくれば却って清々しいものだ。
「いやぁ~、自分はまだ新人だし、それに4番は鬼束さんがいるじゃないですか」
ルーキーらしく謙遜する。
「何言ってんだよ、ウチの4番がからっきしダメだし、調子の良いお前が4番になればいいんだよ!
なぁ、そうだろ4番バッター様よ?」
今日ノーヒットの鬼束に同意を求める。
「えっ…いや、ハハハ…」
開幕からいま一つピリッとしない鬼束は今シーズン初アーチを記録したものの、打率は2割台前半でチャンスに凡退する場面が多い。
「ハハハじゃねぇだろ!テメーが打たなきゃチームは機能しねぇんだよ!
これじゃ、いくらオレが打っても何の意味も無いだろ」
「す、すいません…」
翔田ほどでは無いが、鬼束もスランプに陥ってる。
すると奥から結城の声が。
「財前さん、そんなに鬼束くんを責めないで下さい!鬼束くん、誰だってノーヒットの時はあるんだ。
気持ちを切り替えて明日頑張ろう」
結城が助け舟を出した。
「あ、ハイ…ありがとうございます」
大きな身体を小さくして恐縮している。
「バカか、オメーは!コイツは気にしなきゃダメなんだよ!
4番がチャンスに何度も凡退してどうすんだ!
コイツが今より少しでも打てば、チームの勝ちは増えるんだよ!
聞いてんのか、おいっ!」
更に鬼束を叱責する。
「アンタ…いい加減にしろよ」
一部始終を見ていた唐澤が突っかかる。
「おい、トーマ止めろ!」
「唐澤くん、熱くなるな!」
鬼束と結城が止めに入る。
「横から口挟んでくるんじゃねぇよ、クソガキ!
テメーは早くウチに帰って、母ちゃんと一緒に風呂入って寝ろ!」
「何だと、テメー!」
「止めろっ!トーマ、悪いのはオレだ!財前さん、ホントに申し訳ありません」
唐澤を制し、深々と頭を下げた。
「ったく…打てねえんなら、監督に言って替えてもらえ!」
バタン!と乱暴にロッカーの扉を閉め、真っ先にロッカーを出た。
「はぁ…いつになったら、このチームは一丸となるんだろうか」
結城はため息混じりに呟く。
気にするなと言われたが、鬼束の心中は決して穏やかではない。
長いシーズンでは、不調で成績を落とす事など日常茶飯事だ。
とは言え、スランプを脱出するまでの期間は心身ともに疲弊する。
バッティング技術に関しては、右打者最高のプレイヤーと呼ばれる鬼束だが、今年は特に重症だ。
チームが勝利しても、自分は貢献していない。
それどころか、皆の足を引っ張ってるんじゃないかと。
「鬼束さん…誰だって打てない時はあるんです。
ボクもそうだし、結城さんだってノーヒットの時もえるんです…
あんなヤツの言う事なんて真に受ける事無いですよ」
「そうだ鬼束くん。
あまり深く考えるとプレーに支障が出る。
大丈夫、キミはスランプを脱出出来るよ」
唐澤と結城の二人は鬼束をフォローする。
「でも…このまま4番を打つ訳にはいかないし」
「鬼束くん、誰が何と言おうと4番はキミだ。
キミはキミのバッティングをすればいいんだ。
凡打を気にせず、思いきってバットを振るんだ」
結城は鬼束を庇うが、当の本人は燻った状態のままだ。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ゾンビ発生が台風並みの扱いで報道される中、ニートの俺は普通にゾンビ倒して普通に生活する
黄札
ホラー
朝、何気なくテレビを付けると流れる天気予報。お馴染みの花粉や紫外線情報も流してくれるのはありがたいことだが……ゾンビ発生注意報?……いやいや、それも普通よ。いつものこと。
だが、お気に入りのアニメを見ようとしたところ、母親から買い物に行ってくれという電話がかかってきた。
どうする俺? 今、ゾンビ発生してるんですけど? 注意報、発令されてるんですけど??
ニートである立場上、断れずしぶしぶ重い腰を上げ外へ出る事に──
家でアニメを見ていても、同人誌を売りに行っても、バイトへ出ても、ゾンビに襲われる主人公。
何で俺ばかりこんな目に……嘆きつつもだんだん耐性ができてくる。
しまいには、サバゲーフィールドにゾンビを放って遊んだり、ゾンビ災害ボランティアにまで参加する始末。
友人はゾンビをペットにし、効率よくゾンビを倒すためエアガンを改造する。
ゾンビのいることが日常となった世界で、当たり前のようにゾンビと戦う日常的ゾンビアクション。ノベルアッププラス、ツギクル、小説家になろうでも公開中。
表紙絵は姫嶋ヤシコさんからいただきました、
©2020黄札
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる