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9月・優勝争いの混沌とした戦い
首位攻防戦 その2
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試合はスタートした。
ヤンキース先発小橋は変化球主体のピッチングでGlanz打線を抑える。
一方 今年は最多勝争いも射程圏内の片山は初回を三者凡退で抑える。
試合は投手戦のまま4回の裏へ。
【え~っ…マジだリィ…3番、キャッチャー与那嶺…】
ウグイス嬢までもがヤンキーというこの球場。
しかも やる気ゼロという不穏なスタンス。
その与那嶺はノソノソと億劫気味に歩き打席に入った。
第1打席はショートゴロに倒れたが 今シーズンは打率.288 本塁打23 打点73
出塁率.362 長打率.557 OPS.919とバッティングは勿論 守備でも巧みなリードと強肩で投手陣を牽引。
ヤンキースが優勝ならばMVPは与那嶺という声も多い。
マウンド上の片山はここまで2安打 無四球の内容。
奪三振はまだ0だが ゴロを打たせるピッチングでここまで僅か24球という省エネスタイルでヤンキース打線を抑える。
右打席でバットを肩口の高さで寝かせて構える。
独特なフォームだが ここからお手本の様なレベルスイングで長打を放つところに非凡さを感じる。
初球は縦に割れるカーブが僅かに外れてボールワン。
マスクを被る滝沢はもう1球とサインを出した。
ダイナミックなモーションから2球目を投げた。
先程よりもスピードを遅くしたカーブが弧を描いてインコース低めへ。
与那嶺は素早いスイングで捕らえるが 打球は快音を残して三塁側スタンドへ飛び込んだ。
「スイングが早すぎたか」
タイミングを外されたせいで
上手くかわされた。
カウントはワンボール ワンストライク。
滝沢がサインを出す。
片山はそれを見て一旦首を振った。
もう一度サインを出した。
またもや首を振る。
滝沢の出したサインは決め球でもある縦のスライダーだが
片山はまだ早いと判断したのだろうか。
ならばと 滝沢は別の球種のサインを出す。
片山は大きく頷き3球目を投げた。
インコースへ鋭く食い込むカットボールだ。
差し込まれる前に与那嶺は腰の回転を生かしたスイングでボールを捕らえた。
打球は片山の横を通過し あっという間にセンター前へ。
球足の速いセンター前ヒットでノーアウトからランナーが出た。
「アレを打ち返すとはな…」
打たれた片山の口元には笑みが。
打たれたがまだまだ余裕だという表情だ。
【え~っと…4番、しめいだしゃ…コレ、しめいだしゃって読むんだっけ?まぁ、いいや…指名打者、上田ぁ】
漢字もロクに読めないウグイス嬢とはかなり不穏だ。
ヤンキースで1番怖いバッター上田が威風堂々とした佇まいで左打席に入った。
リーグ3位の32本塁打をマーク。
打率は.263とイマイチだが 長打率はリーグトップの.613
通算本塁打374は現役最多の風間の403本に次いで2位。
しかも左ピッチャーを苦にしない。
「アキオさん、ここはムリに勝負にいかないで次のバッターで勝負しましょうよ」
マウンドに駆け寄った滝沢は上田との勝負を避けるべきと言う。
内野陣もマウンドに集まった。
「ここで歩かせたら、ノーアウト一塁、二塁だぜ。
どっちがヤバいかって言えば、歩かせた方がヤバいだろ」
「でも…」
「大丈夫だ、何とかなるって」
「…」
「さぁ、早く守備につくんだ!」
「は、はぁ」
内野陣が守備についた。
打席では上田が虎視眈々とバットを構えている。
左対左だが 細心の注意を払って配球を組み立てたいところ。
片山は腰を少し屈めて滝沢の出すサインを見る。
すると横から「アウトっ!」という審判の声が響いた。
「ハハハッ、やったぜ!」
その声を聞いて片山はグラブをポンと叩いて小さくガッツポーズをした。
一塁ランナー与那嶺が隠し球に引っかかりアウト。
「クッソ…」
与那嶺は顔を真っ赤にして悔しがる。
するとスタンドからはヤンキー達の怒声が鳴り響く。
【汚ぇぞ、正々堂々と勝負しろ!】
【随分舐めたマネしてんじゃねぇか!】
【殺せ、ぶっ殺せっ!】
隠し球という作戦が卑怯に思えたのだろう。
ヤンキー達はエキサイトしている。
「ハッハッハッハッ!卑怯だろうが、何だろうが、そんなチンケなトラップに引っかかるヤツがマヌケなんだろうが!」
片山はマウンド上で観客を煽る。
【テメー、いい度胸してんじゃねぇか!】
【殺れ、殺っちまえ!】
【あのヤローを生きて帰らすな!】
しかし片山はエキサイトどころか 飄々とした表情のままだ。
ヤンキース先発小橋は変化球主体のピッチングでGlanz打線を抑える。
一方 今年は最多勝争いも射程圏内の片山は初回を三者凡退で抑える。
試合は投手戦のまま4回の裏へ。
【え~っ…マジだリィ…3番、キャッチャー与那嶺…】
ウグイス嬢までもがヤンキーというこの球場。
しかも やる気ゼロという不穏なスタンス。
その与那嶺はノソノソと億劫気味に歩き打席に入った。
第1打席はショートゴロに倒れたが 今シーズンは打率.288 本塁打23 打点73
出塁率.362 長打率.557 OPS.919とバッティングは勿論 守備でも巧みなリードと強肩で投手陣を牽引。
ヤンキースが優勝ならばMVPは与那嶺という声も多い。
マウンド上の片山はここまで2安打 無四球の内容。
奪三振はまだ0だが ゴロを打たせるピッチングでここまで僅か24球という省エネスタイルでヤンキース打線を抑える。
右打席でバットを肩口の高さで寝かせて構える。
独特なフォームだが ここからお手本の様なレベルスイングで長打を放つところに非凡さを感じる。
初球は縦に割れるカーブが僅かに外れてボールワン。
マスクを被る滝沢はもう1球とサインを出した。
ダイナミックなモーションから2球目を投げた。
先程よりもスピードを遅くしたカーブが弧を描いてインコース低めへ。
与那嶺は素早いスイングで捕らえるが 打球は快音を残して三塁側スタンドへ飛び込んだ。
「スイングが早すぎたか」
タイミングを外されたせいで
上手くかわされた。
カウントはワンボール ワンストライク。
滝沢がサインを出す。
片山はそれを見て一旦首を振った。
もう一度サインを出した。
またもや首を振る。
滝沢の出したサインは決め球でもある縦のスライダーだが
片山はまだ早いと判断したのだろうか。
ならばと 滝沢は別の球種のサインを出す。
片山は大きく頷き3球目を投げた。
インコースへ鋭く食い込むカットボールだ。
差し込まれる前に与那嶺は腰の回転を生かしたスイングでボールを捕らえた。
打球は片山の横を通過し あっという間にセンター前へ。
球足の速いセンター前ヒットでノーアウトからランナーが出た。
「アレを打ち返すとはな…」
打たれた片山の口元には笑みが。
打たれたがまだまだ余裕だという表情だ。
【え~っと…4番、しめいだしゃ…コレ、しめいだしゃって読むんだっけ?まぁ、いいや…指名打者、上田ぁ】
漢字もロクに読めないウグイス嬢とはかなり不穏だ。
ヤンキースで1番怖いバッター上田が威風堂々とした佇まいで左打席に入った。
リーグ3位の32本塁打をマーク。
打率は.263とイマイチだが 長打率はリーグトップの.613
通算本塁打374は現役最多の風間の403本に次いで2位。
しかも左ピッチャーを苦にしない。
「アキオさん、ここはムリに勝負にいかないで次のバッターで勝負しましょうよ」
マウンドに駆け寄った滝沢は上田との勝負を避けるべきと言う。
内野陣もマウンドに集まった。
「ここで歩かせたら、ノーアウト一塁、二塁だぜ。
どっちがヤバいかって言えば、歩かせた方がヤバいだろ」
「でも…」
「大丈夫だ、何とかなるって」
「…」
「さぁ、早く守備につくんだ!」
「は、はぁ」
内野陣が守備についた。
打席では上田が虎視眈々とバットを構えている。
左対左だが 細心の注意を払って配球を組み立てたいところ。
片山は腰を少し屈めて滝沢の出すサインを見る。
すると横から「アウトっ!」という審判の声が響いた。
「ハハハッ、やったぜ!」
その声を聞いて片山はグラブをポンと叩いて小さくガッツポーズをした。
一塁ランナー与那嶺が隠し球に引っかかりアウト。
「クッソ…」
与那嶺は顔を真っ赤にして悔しがる。
するとスタンドからはヤンキー達の怒声が鳴り響く。
【汚ぇぞ、正々堂々と勝負しろ!】
【随分舐めたマネしてんじゃねぇか!】
【殺せ、ぶっ殺せっ!】
隠し球という作戦が卑怯に思えたのだろう。
ヤンキー達はエキサイトしている。
「ハッハッハッハッ!卑怯だろうが、何だろうが、そんなチンケなトラップに引っかかるヤツがマヌケなんだろうが!」
片山はマウンド上で観客を煽る。
【テメー、いい度胸してんじゃねぇか!】
【殺れ、殺っちまえ!】
【あのヤローを生きて帰らすな!】
しかし片山はエキサイトどころか 飄々とした表情のままだ。
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