I Love Baseball 主砲の一振り 6

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8月灼熱の後半戦

先制アーチ

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午後6時 主審の手が挙がり試合はスタート。

【1番ライトルイス…背番号39】


リードオフマンに固定されたルイスが十字架のネックレスを手にし 十字を切ってから打席に入った。

ここまでの成績は 打率.294 本塁打8 打点36 盗塁28
出塁率は.337でOPSは.831と1番バッターの役割を十分に果たしている。


寡黙なクリスチャンは左打席のベース寄りに立ち 少し前傾の構えでバットのグリップを寝かせ気味にしている。


対するマウンド上の畝は 現在8勝3敗 防御率は3.58でリーグ3位の83個の奪三振をマーク。


かつてはメジャーリーグ アトランタ・セインツのエースとして地区優勝に貢献。

メジャー時代にマークした154km/hのストレートは怪我の影響で投げられなくなったが それでも140km/h中盤のストレートとスライダー カッター カーブ スプリットをコーナーに投げ分ける投球術で三振を奪う能力は健在。



マスクを被る外崎はルイスの構えを見て配球を組み立てている。


(このバッターはインハイが得意だ。しかし、これだけベース寄りだとインハイは打てないハズ…いや、これはブラフかも)


試合開始直後の第1球は渾身のストレートを投げさせたいところだが ここは敢えて変化球をインハイに要求した。


サインを見た畝は大きく頷き スリークォーター気味のオーバースローから初球を投げた。


インハイから更に内側に食い込むカットボール ルイスは当たると思い 咄嗟に身体を反転させた。


「ボールワンっ!」


一歩間違えれば肩口に当たりそうなコースだったが
このぐらいならば簡単に避けるだろうと予想しての配球だ。


避けたルイスは一度マウンドの方へ視線を向けたが
再度十字架のネックレスを手にして精神を落ち着かせている。


(次はこれでどうだ?)


外崎がサインを出す。


マウンド上の畝は二度頷き テンポ良く2球目を投げた。


今度はアウトコース寄りの低めに138km/hのツーシームが決まった。


「ストライクワンっ!」


ボールは大きな音を立ててキャッチャーミットに吸い込まれた。


捕球音でキレの良いボールだという事が分かる。


ルイスはバットを動かさずに球筋をよく見ていた。



続いて3球目。縦に割れるカーブが僅かに外れてボール。


4球目はインコースへスライダーが決まり ツーナッシングと追い込んだ。



ルイスは動じず 狙い球を一つに絞っている。

畝のウイニングショットは140前半の鋭く落ちるスプリット。


変化量は小さいが キレは抜群。


もう1球外してフルカウントから勝負をしてもいいが
外崎は1球外しをあまり好まない。


有利なカウントなのに わざわざ一度ボールにしてから勝負をするのはおかしいという考えだ。


ここは畝の得意なスプリットで勝負しかない とばかりにスプリットのサインを出した。


畝はそれを見て大きく頷き 5球目を投げた。


真ん中低めから見送ればボールになるスプリット
しかしルイスはこれを待ってましたとばかりに
コンパクトながらアッパー気味のスイングで捕らえた。


ボールの曲がりっぱなを上手く打ち返した打球はグーン とライトへ痛烈なライナーのまま スタンド最前列へ飛び込んだ。



「オイオイ、入ったよ」


「マジかよ!」


「先頭打者本塁打じゃん!」


ルイスの先頭打者本塁打でベンチは早くも大盛り上がりをしている。



「クソっ、あのスプリットを上手く弾き返すとは」


淡々とした表情でベースを回るルイスを憎々しげな眼差しで見る。


ルイスの第9号先頭打者本塁打でGlanzが早くも1点を先制。


ルイスがホームインして 打席に向かう白石とハイタッチを交わす。


「Nice batting!(ナイスバッティング!)」


「Thank you. It's your turn.(ありがとう、次は君の番だよ)」


そう言うとルイスはウインクをして ベンチ前で出迎える選手達とハイタッチをしてからベンチに下がった。


「このムードに水を差すワケにはいかないよな」


白石は大きく息を吐いて やや緊張の面持ちで右打席に入った。
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