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7月 オールスターゲーム
覇気がない
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マウンド上のルーガーは吉川を見ると「fufufu…」と楽しそうに笑った。
そしてベンチでは唐澤と白石が神妙な面持ちで話をしている。
「お前が悪いったって…いくら何でも、後半戦は無期限の二軍落ちって有り得ないだろ!」
「でも、監督はそういう風に捉えたんでしょうね…」
白石の横顔はどこか諦めな表情にも見える。
すると スタンドが大いに沸いた。
「ん?」
「ストレート勝負するみたいですね」
吉川に投じた初球は152km/hの真っ直ぐだった。
今年36才になるルーガーだが ストレートの威力はまだ衰えていない。
吉川は苦笑いを浮かべながら素振りを二度 三度と行い
バットを長く持った。
直球対フルスイング…当たればオーバーフェンスだが
ルーガーのストレートは見た目以上に速く感じる。
「この打席、どっちが勝つと思いますか?」
白石が聞いた。
「ウーン…吉川さんには悪いけど、ルーガーの勝ちかな…」
「同じですね。確かに吉川さんはスゴいバッターだけど、この打席ではルーガーのストレートの威力が上回ってますね」
2人の天才がルーガーの勝ちだと予想する。
その言葉通り ルーガーは2球目もストレートでグイグイ押した。
「ボールワンっ!」
僅かに外れたボールは151km/hと表示されたが ノビ キレ共に申し分無い程のストレートだった。
「あんな球がコースギリギリに決まったら手も出ないでしょうね」
「あのピッチャー、スライダーに注目されがちだけど、それを活かすストレートのキレがハンパないからな」
2人は食い入るように勝負を見つめる。
「なぁ…」
「ハイ…」
グラウンドを見ながら話しかけた。
「お前、ウチに来ないか?」
「…Glanzは雰囲気が良さそうですよね。オレもそんなチームでプレーしたいですよ」
穏やかな笑みを浮かべた。
「お前がその気ならば、監督やGMに言って移れるように手配出来るけど…」
「唐澤さん、ありがとうございます…」
白石は頭を下げ 話を続けた。
「ですが、コレばっかりは我々の力じゃどうにもならない事ですし、それに、こんな場所で選手同士が話すようなモンじゃ無いですから…とりあえず、気にかけてくださってありがとうございますとしか言えません」
白石の言う通りだ。
オールスターゲームの最中に選手同士がこんな話をして外部に漏れたら大事だ。
仮に白石が「チームを出たい」からと言って「ハイ、どうぞ」と球団がすんなりOKを出すワケが無い。
球界の至宝と呼ばれる白石が移籍するとなれば 無償で獲得なんてワケにはいかない。
「あ…やっぱ三振だったか」
吉川はフルカウントまで粘ったが 6球目のインハイのストレートを豪快に空振り三振。
球速は154km/hと表示された。
1回の表 ネプチューンリーグの攻撃は三者凡退で終了した。
1回の裏 アポロリーグの攻撃。
1番バッターは東京KINGDOMの浅倉。
マウンド上は東北マーリンズのエースでパーフェクトピッチャーと呼ばれる天海昴が立つ。
今年が12回目の出場で現役選手では結城の14回目に次いで2番目に多い。
打席の浅倉は昨年のオールスターでホームスチールを成功させMVPに輝いた。
「天海さん、今日は何キロ出すんだろうか?」
「お祭り好きな人ですからね。こういう時はいつも以上に張り切るから、記録を更新するんじゃないですか」
チームメイトの白石は天海の性格を熟知している。
その言葉通り 天海は初球からバレットと呼ばれる高速のストレートで浅倉を圧倒する。
結局浅倉は天海に翻弄され 3球目を打ち上げてセカンドフライに倒れた。
「白石くん、今日は代打で出る予定なのか?」
「ハイ?」
ふと顔を上げると 名古屋99ersの比嘉が隣に座った。
横顔が日本人離れした彫りの深い顔立ちで 鍛え上げられた上半身は胸板が厚く 二の腕は丸太ん棒の様だ。
「どうも…さっきから見てるけど、キミは退屈そうな顔してるね」
「そ、そうですか?そんな事は無いんですけど」
言葉を濁す。
それでも比嘉はやや虚ろな目付きをしている白石に興味を持った。
「キミは去年に比べて、今年は覇気がないように感じるのだが…気のせいかな」
「…」
見抜かれていた。
分かる人には分かるのだろう。
「何があったのかは知らないけど、これはオールスターゲームなんだ。年に一度のお祭りなんだし、目一杯楽しんだらどうだ?」
比嘉は穏やかな口調で話しかけた。
「ハイ…ありがとうございます。ゲームを楽しんでみますね」
白石は頭を下げ 「さぁ、この回抑えて次の回から打ちまくろうぜ!」と声を張り上げた。
ゲームには出れないけど ベンチで声を出す事なら出来る。
せめて声出しだけでも一生懸命やろうと思った。
そしてベンチでは唐澤と白石が神妙な面持ちで話をしている。
「お前が悪いったって…いくら何でも、後半戦は無期限の二軍落ちって有り得ないだろ!」
「でも、監督はそういう風に捉えたんでしょうね…」
白石の横顔はどこか諦めな表情にも見える。
すると スタンドが大いに沸いた。
「ん?」
「ストレート勝負するみたいですね」
吉川に投じた初球は152km/hの真っ直ぐだった。
今年36才になるルーガーだが ストレートの威力はまだ衰えていない。
吉川は苦笑いを浮かべながら素振りを二度 三度と行い
バットを長く持った。
直球対フルスイング…当たればオーバーフェンスだが
ルーガーのストレートは見た目以上に速く感じる。
「この打席、どっちが勝つと思いますか?」
白石が聞いた。
「ウーン…吉川さんには悪いけど、ルーガーの勝ちかな…」
「同じですね。確かに吉川さんはスゴいバッターだけど、この打席ではルーガーのストレートの威力が上回ってますね」
2人の天才がルーガーの勝ちだと予想する。
その言葉通り ルーガーは2球目もストレートでグイグイ押した。
「ボールワンっ!」
僅かに外れたボールは151km/hと表示されたが ノビ キレ共に申し分無い程のストレートだった。
「あんな球がコースギリギリに決まったら手も出ないでしょうね」
「あのピッチャー、スライダーに注目されがちだけど、それを活かすストレートのキレがハンパないからな」
2人は食い入るように勝負を見つめる。
「なぁ…」
「ハイ…」
グラウンドを見ながら話しかけた。
「お前、ウチに来ないか?」
「…Glanzは雰囲気が良さそうですよね。オレもそんなチームでプレーしたいですよ」
穏やかな笑みを浮かべた。
「お前がその気ならば、監督やGMに言って移れるように手配出来るけど…」
「唐澤さん、ありがとうございます…」
白石は頭を下げ 話を続けた。
「ですが、コレばっかりは我々の力じゃどうにもならない事ですし、それに、こんな場所で選手同士が話すようなモンじゃ無いですから…とりあえず、気にかけてくださってありがとうございますとしか言えません」
白石の言う通りだ。
オールスターゲームの最中に選手同士がこんな話をして外部に漏れたら大事だ。
仮に白石が「チームを出たい」からと言って「ハイ、どうぞ」と球団がすんなりOKを出すワケが無い。
球界の至宝と呼ばれる白石が移籍するとなれば 無償で獲得なんてワケにはいかない。
「あ…やっぱ三振だったか」
吉川はフルカウントまで粘ったが 6球目のインハイのストレートを豪快に空振り三振。
球速は154km/hと表示された。
1回の表 ネプチューンリーグの攻撃は三者凡退で終了した。
1回の裏 アポロリーグの攻撃。
1番バッターは東京KINGDOMの浅倉。
マウンド上は東北マーリンズのエースでパーフェクトピッチャーと呼ばれる天海昴が立つ。
今年が12回目の出場で現役選手では結城の14回目に次いで2番目に多い。
打席の浅倉は昨年のオールスターでホームスチールを成功させMVPに輝いた。
「天海さん、今日は何キロ出すんだろうか?」
「お祭り好きな人ですからね。こういう時はいつも以上に張り切るから、記録を更新するんじゃないですか」
チームメイトの白石は天海の性格を熟知している。
その言葉通り 天海は初球からバレットと呼ばれる高速のストレートで浅倉を圧倒する。
結局浅倉は天海に翻弄され 3球目を打ち上げてセカンドフライに倒れた。
「白石くん、今日は代打で出る予定なのか?」
「ハイ?」
ふと顔を上げると 名古屋99ersの比嘉が隣に座った。
横顔が日本人離れした彫りの深い顔立ちで 鍛え上げられた上半身は胸板が厚く 二の腕は丸太ん棒の様だ。
「どうも…さっきから見てるけど、キミは退屈そうな顔してるね」
「そ、そうですか?そんな事は無いんですけど」
言葉を濁す。
それでも比嘉はやや虚ろな目付きをしている白石に興味を持った。
「キミは去年に比べて、今年は覇気がないように感じるのだが…気のせいかな」
「…」
見抜かれていた。
分かる人には分かるのだろう。
「何があったのかは知らないけど、これはオールスターゲームなんだ。年に一度のお祭りなんだし、目一杯楽しんだらどうだ?」
比嘉は穏やかな口調で話しかけた。
「ハイ…ありがとうございます。ゲームを楽しんでみますね」
白石は頭を下げ 「さぁ、この回抑えて次の回から打ちまくろうぜ!」と声を張り上げた。
ゲームには出れないけど ベンチで声を出す事なら出来る。
せめて声出しだけでも一生懸命やろうと思った。
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