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6月 ・7月 ペナントレース再開
鉄仮面
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【えー…1回の表、Glanzの攻撃…ったく、1番センター藤村…背番号ヨンロクぅ】
バーチーヤンキースタジアムのアナウンスはウグイス嬢までもが元ヤンでガラが悪い。
日本はおろか メジャーでもあまりいない左投げ右打ちの藤村が右打席に入った。
左の澁谷という事もあってスタメンに起用された。
それだけではなく もしもの乱闘要員として血気盛んな彼をトップバッターに置いた。
しかし
マウンド上の澁谷はそんな事はまるで眼中に無いとばかりに立ちはだかる。
「…いきなりぶつけてくるんじゃねぇだろうな」
身の危険を感じ フェイスガード付きのヘルメットを被った。
「プレーボール!」
主審の手が挙がり試合はスタートした。
「のっけからぶつけるなんてバカなマネはしないだろ。先頭バッターぶつけて危険球で退場じゃ、あまりにもマヌケだろ」
いくらヤンキースと言えども そんな危険な事はしてこないだろう 勅使川原はそう思った。
その澁谷の第1球はインコースへ146km/hのストレートが僅かに外れた。
「ボールワン!」
バッターボックスの外側ギリギリに立ってる藤村はこれを悠然と見送る。
「もしベースギリギリの位置で立ってたら、足当てられていたかもな」
藤村は後ろを向き 与那嶺に対して言った。
「オレのせいだと言うのかよ?」
与那嶺はぶっきらぼうに言うとボールを澁谷に返球した。
「さぁな…でも、サインを出してるのはお前だろ?」
「何が言いてえんだ?」
「いや、別に何も」
藤村はヘルメットを被り直し やや短めにバットを構えた。
与那嶺がサインを出す。
すると澁谷は一度首を振った。
与那嶺がもう一度サインを出す。
これも首を振る。
ならばこれならどうだと3度目のサインを出す。
それを見た澁谷は今度は自らサインを出した。
「ざけやがって…」
与那嶺が痺れを切らし タイムを掛けてマウンドに駆け寄った。
サインが合わないのだろうが まだ試合が始まって1球しか投げてないのに意思の疎通が出来てないのか。
「おい、オレのサインに従えって言っただろ!」
与那嶺のリードは見かけとは裏腹に堅実だ。
かつての正捕手外崎よりも慎重派で 石橋を叩いても渡らない程の用心深さだ。
「オメーのチキンなリードじゃ、オレの持ち味が活かされないだろうがっ!」
澁谷は与那嶺とは逆に ピッチャーにありがちなお山の大将タイプだ。
故に 与那嶺の様な手綱を握る女房役が必要不可欠だ。
「何言ってやがんだ、お前のリードに任せたら初回から炎上するだろうが!」
「何だと、コラァ!」
試合そっちのけでケンカが始まった。
「何だ、バッテリーがケンカおっ始めたぞ」
しかも 仲裁に入る野手は1人もいない。
それどころか 「またやってらぁ」という風に呆れた顔で見ているだけで 誰も止めに入らない。
すると ベンチから指名打者の上田が出てきて2人の頭を思いっきり叩いた。
パシーン!という音が響き 2人は頭を抱えて蹲った。
「痛てぇ!」
「痛っ…」
「そんなにケンカしたけりゃ、監督に言って交代してもらうか、あ?」
抑揚の無い声が逆に怖さを感じる。
「い、いや」
「大丈夫っす」
「だったら、早く投げろ…」
そう言うと 踵を返してベンチに戻った。
今年36才で野手最年長の上田はチームの頭的存在だ。
いつも無表情で【鉄仮面】と呼ばれるベテランは若手から不気味な雰囲気を醸し出し 恐れられている。
「ちょっとした事ですぐに揉めやがって…バカなヤツらだ」
ベンチの中央にドカッと腰を下ろすと 腕を組んで目を閉じた。
バーチーヤンキースタジアムのアナウンスはウグイス嬢までもが元ヤンでガラが悪い。
日本はおろか メジャーでもあまりいない左投げ右打ちの藤村が右打席に入った。
左の澁谷という事もあってスタメンに起用された。
それだけではなく もしもの乱闘要員として血気盛んな彼をトップバッターに置いた。
しかし
マウンド上の澁谷はそんな事はまるで眼中に無いとばかりに立ちはだかる。
「…いきなりぶつけてくるんじゃねぇだろうな」
身の危険を感じ フェイスガード付きのヘルメットを被った。
「プレーボール!」
主審の手が挙がり試合はスタートした。
「のっけからぶつけるなんてバカなマネはしないだろ。先頭バッターぶつけて危険球で退場じゃ、あまりにもマヌケだろ」
いくらヤンキースと言えども そんな危険な事はしてこないだろう 勅使川原はそう思った。
その澁谷の第1球はインコースへ146km/hのストレートが僅かに外れた。
「ボールワン!」
バッターボックスの外側ギリギリに立ってる藤村はこれを悠然と見送る。
「もしベースギリギリの位置で立ってたら、足当てられていたかもな」
藤村は後ろを向き 与那嶺に対して言った。
「オレのせいだと言うのかよ?」
与那嶺はぶっきらぼうに言うとボールを澁谷に返球した。
「さぁな…でも、サインを出してるのはお前だろ?」
「何が言いてえんだ?」
「いや、別に何も」
藤村はヘルメットを被り直し やや短めにバットを構えた。
与那嶺がサインを出す。
すると澁谷は一度首を振った。
与那嶺がもう一度サインを出す。
これも首を振る。
ならばこれならどうだと3度目のサインを出す。
それを見た澁谷は今度は自らサインを出した。
「ざけやがって…」
与那嶺が痺れを切らし タイムを掛けてマウンドに駆け寄った。
サインが合わないのだろうが まだ試合が始まって1球しか投げてないのに意思の疎通が出来てないのか。
「おい、オレのサインに従えって言っただろ!」
与那嶺のリードは見かけとは裏腹に堅実だ。
かつての正捕手外崎よりも慎重派で 石橋を叩いても渡らない程の用心深さだ。
「オメーのチキンなリードじゃ、オレの持ち味が活かされないだろうがっ!」
澁谷は与那嶺とは逆に ピッチャーにありがちなお山の大将タイプだ。
故に 与那嶺の様な手綱を握る女房役が必要不可欠だ。
「何言ってやがんだ、お前のリードに任せたら初回から炎上するだろうが!」
「何だと、コラァ!」
試合そっちのけでケンカが始まった。
「何だ、バッテリーがケンカおっ始めたぞ」
しかも 仲裁に入る野手は1人もいない。
それどころか 「またやってらぁ」という風に呆れた顔で見ているだけで 誰も止めに入らない。
すると ベンチから指名打者の上田が出てきて2人の頭を思いっきり叩いた。
パシーン!という音が響き 2人は頭を抱えて蹲った。
「痛てぇ!」
「痛っ…」
「そんなにケンカしたけりゃ、監督に言って交代してもらうか、あ?」
抑揚の無い声が逆に怖さを感じる。
「い、いや」
「大丈夫っす」
「だったら、早く投げろ…」
そう言うと 踵を返してベンチに戻った。
今年36才で野手最年長の上田はチームの頭的存在だ。
いつも無表情で【鉄仮面】と呼ばれるベテランは若手から不気味な雰囲気を醸し出し 恐れられている。
「ちょっとした事ですぐに揉めやがって…バカなヤツらだ」
ベンチの中央にドカッと腰を下ろすと 腕を組んで目を閉じた。
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